異世界転生ものに自然科学を持ち込むな!
「異世界転生もの」を読んでいると、ときおり登場人物たちが自然科学の知識を披露するシーンに遭遇する。「地球」からの転生者である主人公や、そのたキャラクターたちがその知識を用いて、魔法が存在し、地球の自然科学が発達していない異世界でアドバンテージを得るわけだ。例えば、酸素と炭素が化学結合することで燃焼反応が起こるという知識をもとに、火系統の魔法を強化するといった具合である。往々にして、登場人物たちは疑いもなくこうした自然科学の知識を応用するわけだが、果たしてそれは正しいのだろうか。自分はこうしたシーンに出くわすたびに、読む手が止まってしまう。自信満々にしている登場人物たちが、どうしてもマヌケに映ってしまい続きを読む気力が霧散してしまうのだ。それが頭の良いという設定のキャラクターであったなら、なおさらである。
不満を端的に言うと、上記のような作品は、確かめもせずに「地球」自然科学の諸法則が魔法の存在する異世界で、全く同じように成り立つと考えているとしか思えない描写が目立つのである。我々が住んでいるような「地球」から、魔力やら魔素やらが満ちている異世界に飛ばされて、どうして「地球」の自然科学がそのまま使えると思うのか。甚だ疑問でしかたない。そもそも「我々の住まう地球」の自然科学は、実験をして、その結果から法則なりを導き、積み重ねていったものだ。あきらかに、魔力やらが存在していることを想定して培われたものではない。「地球」から「魔法の存在する異世界」に行ってしまっては、そのまま使えるわけがないのだ!たとえ、見かけ上「地球」の自然科学が全て適応できるようでも、自信を持って使えるというには厳密に諸法則を洗いざらい実験しなおしたり、第三者(神とか)に正確性を担保してもらったりなどの必要がある。もちろん、ただのフィクションにそんなことをする必要性はないが、少なくとも厳密性に欠けていることを意識し、ただの仮定にすぎないと疑う姿勢を描写するほうが(科学的には)健全だ。
それすらも面倒なら、「地球」の自然科学など持ち込まなければいい。そもそも、異世界ものは完全にファンタジーでフィクションだ。下手な設定の説明は余計ですらある。魔法の存在する世界の物理法則を説明しようとしたところでだれも確かめようがないのだから、合理性も厳密性もあったものではない。その設定に触れるにしてもあいまいで、ふわっとしたもので十分だ。そこに、厳密性を重視する「地球」の自然科学を持ち込むから(少なくとも自分にとっては)不自然なものになるのである。
ちなみに、「魔法のある地球」や、「転生ものでない異世界」ではこの問題はあまり気にする必要がないだろう。「魔法のある地球」の物理が、いかに我々の「地球」の物理と似ていたところで、魔法が存在する環境下で実験したものが土台になっているといえるし、「地球」の存在がそもそも無いような「転生ものでない異世界」でなら同じ論法で納得できる。なにせ全てファンタジーなのだから。だが何度でも言おう、「異世界転生もの」、お前はダメだ。なぜなら、「異世界転生もの」に出てくる「地球」という単語を見て「我々の住まう地球」を思い浮かべない読者など(たとえフィクションとわかっていても)ふつうはいないからだ。
どうしても、「地球」の知識で無双したいなら、数学を使え!経済学を使え!心理学を使え!いや、もう全てどうでもいい。使うなら、とにかく正しい知識を使ってくれ!