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キラキラお洋服

「俺たちは母様のところにいかなきゃいけねぇから、後の事はここのやつらに聞いてくれや、じゃぁな」





「きゅうそから言われて来たって言えば大丈夫ですよ!」





親分と子分はそう言うとさっさとどこかへ行ってしまいました。





「ちょっとまって!」





ミトコの声なんて聞こえません。だって、もう親分も子分も風のようにどこかへ消えてしまいました。





「あぁ、いっちゃったにゃす」





「早かったね!本当はあんなに早いんだね!!すごいね!すごいね!」





「お金ないのにお洋服なんて買えるのかなぁ」





だって服屋さんですからね。ミトコの不安はあたり前です





「きゅうそに言われたって言えばいいんじゃないかな!かな!」





「そう言っていたにゃすね」





二人にそう言われてもママがいないのにお店になんて入ったことありません。けど、ミトコは勇気をだして水玉のドアノブを少し引きます。すると、中から楽しそうな歌が聞こえてきます。





服を作れば福が来る♪


生地を織って 絵を描いて 型紙切って 布切って♪


かわいい服で川を見る! かっこいい服で過去もいい! きれいな服で切れない絆!♪


縫って 切って いっぱい作ろう 素敵な服♪





その歌を聞いてミトコはなんだかワクワクして思いきってドアを開けると、いろいろな服や布を飾っていてキラキラワクワクの世界が広がっていました。


そんなキラキラワクワクのなかには、大きなクモの体の女の人と鎌の手をしたイタチと小人とハリネズミがいます。そしてクモの体の女の人は自分の糸で布を織っていて、鎌の手をしたイタチは紙を切ったり布を切ったりしていて、小人は服や布に絵を描いたり色水につけたりしていて、ハリネズミさんは布をぬってかわいい服を作っていました。


ミトコはドアの近くにあるトルソーに着せられたピンクの帯とピンクの生地に大きな桜の絵がかわいい、丈の短い浴衣ワンピースに目が惹かれました。





「あら、可愛いお人形さんいらっしゃい、何か服をお探しかい?」





クモの体の女の人から話しかけられて服に夢中になっていたミトコはビックリして手を引っ込めました。





「きゅうそから言われてきました!!した!!」





カフスが元気に返事をします。それを聞いてハリネズミが全身のはりを立たせます





「きゅうそだと!きゅうそは嫌いだ!でてけ!いてぇ!」





「何言ってんだよ、客に失礼なこと言うんじゃないよこの石頭ハリネズミ」





ハリネズミが怒鳴っているとそんなハリネズミをクモの体の女の人がなぐって止めます。そのひょうしにぬっていたはりで手を刺してしまってハリネズミはとっても痛そうです





「猫と犬のヌイグルミともしかして母様が言っていた人間の子かい?」





「私たちを知っているんですか?」





「母様から鳩で聞いているよ、母様はなんでも知っているからね、きゅうそから招待された新人じゃないことは知っているわよ、私はジョロウグモの滝よろしくね」





「なに!?人間だと!?きゅうそ達、失敗したのか!がははは!ばかめ!はははは、いてぇ!」





何が面白いのか大笑いしていたハリネズミはよそ見しながらぬっていたので、また手にはりをさしてしまいました。





「人の失敗を笑うからですよニードさん、私はカマイタチの風です」





やれやれと言った風に首をふりながらイタチは今切った布をハリネズミのニードの近くに置きます。イタチと小人だけは手を止めずせっせと仕事をしていましたが、クモの体の女の人が手を止めて布が無くなったのかイタチと小人も手を止めました。





「ぼぼぼくはコロポックルのまままマウリです、よよよよろしくお願いします、」





小人は、干してある布の裏に隠れながら話しています。何が怖いのか、プルプルふるえていてかわいそうになります。


ふと、ミトコと目が合うとひっと言って布裏に隠れたのでどうやらミトコ達が怖いようです





「マウリは臆病だねえぇ、人見知りなんだよ許してやって、」





滝は部屋のすみでごそごそしながら話しています。何かを探しているようです





「親分さんが失敗するなんてめずらしいですね」





とカマイタチの風は長椅子に座り紅茶をすすりながらのんびりと言いました。





「親分じゃなくて子分がやっちまったらしいよ、あの子ならやりそうだねぇ」





 そう言いながら滝はピンクのブーツを出して床に置きます。そして、次は衣装タンスの方をごそごそと漁っています





「どっちでも一緒だ!あのきゅうそ達が母様に怒られるんならいい気味だね!はん!」





「母様はそんなことで怒るような人じゃないよまったく、あっ、あったあった」





滝はそう言いながら衣装タンスから桜のカンザシと白い靴下を出しました。そしてその簪と靴下と床に置いてあったブーツを持つと、さっきミトコが見ていた浴衣ワンピースをトルソーからはずし始めました。


そしてその服達を持ってカーテンのされた部屋に入れて顔をだします





「さぁミトコちゃんこっちにおいで」





滝に呼ばれ、ミトコはカーテンの部屋の中に入りました。そこには大きな鏡があって全身が見られるようになっています





「どうして私の名前を知っているの?」





「母様はなんでも知っているからね、教えてもらったんだよ、さぁこれを着て」





ミトコはパジャマを脱いでわたされた服を着ました。服も靴もわたされた物が全部まるでミトコに用意されていたようにぴったりのサイズです。ピンクの浴衣ワンピースが可愛くて黒い髪に桜のカンザシを挿すとシャランと鳴ってミトコは幸せ気分です。





「うんうん似合うねぇ、なにか変なとこは、ないかい?」


 


「大丈夫だよ、とっても可愛い服!」





「ならよかった、これはあんたにあげようね」





「ほんと!?ありがとう!」





ミトコは大喜びしました。だってその服を気に入ったのですから。

ミトコがルンルン気分で部屋から出るとチャックやカフスも服を着ていました。チャックはネクタイの描かれた白黒のシャツ、カフスはフードの付いたチェックの服を着ています





「二人とも素敵ね!似合ってるよ!」





ミトコがそう言うとチャックはふんっと言ってそっぽを向いてしました。





「ミトコちゃんも可愛いよ!お人形みたい!あ!人間か!ははは!」





カフスはピョンピョン跳ねながら笑っています。とっても楽しそうです。





「後は記憶だねぇ」





滝がそう言うとミトコは寂しそうな顔をしました。





「忘れた象が食べちゃった私の記憶は戻りますか?」





ミトコの質問に滝は困った顔をしました。


それを見て風が助け船を出します。





「そういうことは爺の木に聞いたほうがいいですよ」





「爺の木?」





ミトコとチャック、カフスはキョトンとします





「この世界ができた時からいる、物知りなじじいの木だよ!」





ニードの大きな声でマウリはビックリ跳び跳ねます。怯えて布の山に潜り込んでしまいました。滝や風はまた作業を始めています。





「確かに爺の木ならなにか知ってるかもしれないねぇ」





滝が布を織りながら話します





「で、でも爺の木は、妖しい森のお、奥ですよ?に、にに、人間には、あ、あぶ、危ないんじゃないですか?」





ぶるぶると震えながらマウリが布の山の中から声を出します。その様子が面白かったのかカフスが布の山を掘ります。マウリは尚更怯えて布の山が地震が起きたみたいに揺れています





「何で危ないの?」





疑問に思ったミトコが聞きます。





「この国にはね、人間に捨てられたりひどい目にあわされた物や動物、人間を食べ物と思っている妖怪や化け物がいっぱい居るんだよ、だから人間だなんてばれたらどんな目にあうかわかったもんじゃない、でもミトコちゃんは大丈夫さ、浴衣に細工をしたからね!」





なんて危ないところでしょう!ミトコは怖くなりましたが滝の言葉を聞いて不思議に思いました。





「細工って?普通の浴衣じゃないの?」





ミトコは服を見てみますが別に変わったところはありません。くるっと回ってもカンザシがシャランと鳴るだけです。





「その浴衣は座敷わらしのお下がりでね、座敷わらしの力が宿っている浴衣なんだよ、だから少し人間臭くても、現世から来たばかりの座敷わらしだと思われるだろうね」





「座敷わらし?座敷わらしって何!?なに!?」





さっきまでマウリが埋まっている布の山を掘っていたカフスが掘るのに飽きたのか、会話に入ってきます。チャックはいつのまにか寝ていて、風もニードも作業をしているので暇になったみたいです





「座敷わらしは住んでる家に福を呼ぶ子供の妖怪ですよ」





風の言葉にカフスは大興奮です





「福を呼べるの!!すごいね!いい妖怪だね!会ってみたいね!どんな子かな?ミトコみたいな子かな!?」





「会うのは難しいだろうねぇ、滅多なことがなきゃ家から出てこないからねぇ」





そう言われると尚更会いたくなります。ミトコとカフスは座敷わらしが気になって仕方ないみたいです。





「座敷わらしに会うよりおめぇら爺の木のとこに行かねぇといけねぇだろうがよ!」





ニードに言われてミトコは、はっと気づきました。気になることが多すぎてつい話に夢中になってしまいます。でも、一番大事なのは忘れた象に食べられた記憶です。早く取り返して家に帰らなきゃ行けません。





「座敷わらしは向こうの世界でも見られるからね、今は爺の木に急ぎなさいな、そこの扉からでてまっすぐ行けばつくからね」





滝に言われて衣装ケースの隣を見ると水玉の扉があります。その扉を開けてみると黄色い道が続いていました。





「いいかい、絶対人間ってばれちゃいけないよ、何を言われても自分は座敷わらしだって言うんだよ」





「うん!わかった!可愛いお服をありがとう!ばいばい!」





「僕も行く!ほらチャック行くよ!行こうよ!はやくはやく!」





「邪魔したにゃす」





そう言ってミトコ達は服屋を出ました。






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