妖しい森
赤い道をどんどん走っていたら、花畑も赤い道も消えて土の道がある。森の入り口まで来ていました。
「ここまでくりゃ大丈夫か」
「危なかったですねぇ親分」
やれやれといった様子の親分と子分ですがミトコ達はさっぱり何のことかわかりません。そしてカフスはどうやら走ったのが楽しかったようで落ち着きません
「あれれ?なんで止まるの!ぼくまだ走れるよ!休憩!?休憩なの!?」
遊びたくて仕方がないカフスですが親分達はそれ所じゃありません
「キツツキ競争じゃねぇんだ走り続けたりしねぇよ!」
「キツツキ競争ってなぁに?」
はじめて聞く競技名でおもわず聞いてしまいましたが、もっと気になるのはさっきなぜ走ったかなんです。でも、気になってミトコは聞かずにはいられませんでした。
「なんだ、知らねぇのか一人一人にキツツキがついて鍋をかぶって円になっているところを走るんだよ、歩いたらキツツキに鍋をつつかれるから走り続けなきゃ行けねぇんだ」
「それで誰が一番になるの?」
「みんな疲れたら終わりなんだみんな一番さ」
なんだか面白くなさそうなゲームです。ミトコは内容を聴いて興味をなくしてしまいました。
「勝ち負けがない競争なんてつまんない」
「そんなことありやせんよ!とってもたのしいんですよぉ!」
子分が楽しそうに言いますが、ミトコにはどうしても楽しそうに思えません。保育園でみんなでお姫様をした時くらい面白くなさそうな競争です
「そんなことよりさっきにゃんで走ったにゃす、走ったせいで疲れたにゃす」
チャックが不機嫌に聞くと親分はそうだったと説明してくれます。
「花畑で泣いたら泣きっ面が好きな蜂がもっといじめて泣かそうとして刺しにくるのさ、泣きっ面に蜂がくるって言って嫌なことが立て続けにおきるから早く逃げなきゃいけねぇんだよ」
なんて意地悪な蜂さんがいるのでしょう、ミトコは顔の涙をパジャマの袖でふきとりました。
「なんだ、ミトコのせいだったにゃすか」
そう言うとチャックはため息ひとつ、ミトコはとっても嫌な気持ちになりました。
「ごめんなさい、でも本当に大事な物のはずなの」
「みとこちゃんは間違ってないっすよ!大事なこと忘れちゃったら悲しいですもんね!」
すかさず子分がフォローしますがミトコは落ち込んだままです。
ちょっと嫌な空気です。この空気を変えようと、親分はごほんと咳払いしました。
「とりあえず、妖しい森に入ろうや、服屋に聞けばなんかわかるかも知れねぇ」
と言うと親分は、すたすた歩きだすのでした。
妖しい森は、とってもへんてこりんな森でした。周りをよく見ると木に魚やお肉、お野菜やいろんな果物がなっている木があったり、何もなってない木からは寝息や話声が聞こえてきます。
「木がしゃべってる」
「何言ってるんすか!食べ物の木以外はしゃべりますよぅ」
ミトコがつい口に出して言うと子分がまるで当たり前の事のように言いかえします。
「じゃぁ木こりさんは木が切りにくそうだね」
「木こり!?」「木こりだと!?」「いやああああ」
ミトコがそう言った瞬間、周囲の木達が口々に木こりと騒いだかと思ったら、
やみくものに逃げ惑い走り去って行きます。そして食べ物がなっている木以外の木はみんな居なくなってしまいました。
「おいおいお嬢ちゃん、木の前で木こりなんていっちゃダメだろう怖がって逃げちまったじゃねぇか」
「ごめんなさい、木が逃げるなんて思わなかったの」
「しゃべるんだから逃げるに決まってんだろ!」
「ごめんなさい」
ミトコはしょんぼりと落ち込んでしまいました。知らなかったとはいえ悪いことをしてしまった時はちゃんと謝らないといけないけませんからね
「やれやれ、次は気を付けてやってくれよここの木は臆病なんだ」
親分はそれだけ言うとさっさと先に進みます。ミトコは次は気を付けてしゃべらなきゃと思いました。
「ねぇねぇ!!動いていない木はなんで逃げなかったの!?」
ミトコがおしゃべりはやめようと思った矢先にカフスが大きな声で質問します。
「何言っているんですか、食べ物の木は動かないんすよ」
「食べ物の木ってなぁに?」
好奇心に負けてミトコも質問してしまいました。これくらいは良いかなと思ったのです
「ここじゃみんな動いたりいしゃべったりするんで、母様が食べやすい食べ物がなる木を作ってくれたんです」
「母様って誰?」
「母様はこの国、アワイ国を作ってくれた人ですよぉ」
「へぇ!母様ってすごいね!すごいね!この木の実美味しい!こんなの作れちゃうなんてすごい!すごい!」
いつのまにかカフスは、果物やハムをお腹のポケットいっぱいにとって、美味しそうにむしゃむしゃ食べていました。
「あ、カフス君ずるい私もお腹すいたな」
ミトコもなにか食べようと周りに目をやると、
てごろなところにさくらんぼがあります。それを1つ取って食べます。
あまずっぱい味が舌の上にひろがってとっても美味しくて、ミトコは幸せな気分になりました。
「食べるのはその辺にして、とりあえず三人は服を何とかしなきゃな、」
「ふく?」
「パジャマと裸じゃうろうろするのも恥ずかしいからな、」
親分に言われてミトコは自分がパジャマだったことを思い出します。ミトコはちょっと恥ずかしそうですが、裸と言われたチャックとカフスはべつに気にしていないようです。
「さぁ着いたぞ」
ミトコ達が親分の指をさす方を見ると服屋と書かれた看板があります。まるで布を張り合わせたみたいな家がありました。