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第8話 初めての狩り

 翌朝、昨日の興奮が冷めやらぬこともあって早く起きてしまった。特に眠たい気分でもなかったのでそのまま身支度をして台所に向かった。


 そして「おはよう、母さん」「あらレックスおはよう。早いわね」「ウン、今日のこと考えてたら興奮して早く目が覚めちゃった」「そう、でも気を付けるのよ」「分かったよ」


 そう言って椅子に座った直後に父さんが起きて来て「おぉレックス早いなぁ」「おはよう父さん。今日のことで興奮しちゃって」「ハハハ、そうかそうか。じゃあ早く出掛けるとするか」「ウン!」そう言って朝ご飯をすぐに食べて身支度をし出掛けた。


 森の入り口にはすでにアッシュ兄ちゃんとレオおじさんが待っていた。


「よぉゴッシュ。今日はレックス君と一緒か?」「あぁ、おまけに今日が狩りのデビューなんだよ」「そうか! じゃあ去年のアッシュと同じか」と2人の会話を聞いて、


「へぇレックス、今日が狩り初めてか」「うん! そうなんだ」と僕達も話したりしたところで父さんが「じゃあ行くか」の合図で森に入って行った。


 森での狩りは弓や投げ槍などの飛び道具が得意な者と武力や剣などの接近戦が得意な者を最低1人ずつ入れた集団で行う事としていて、今日はレオおじさんが飛び道具担当で父さんが接近戦担当である。


 しばらく歩いたところでウサギを1匹発見したが、父さんが「······あいつはスルーだな」と言うとレオおじさんが「だな」と答えた。


 えっ、何で? そのまま奥に進んで行こうとしてたので父さんに「何で狩らなかったの?」と聞いたら、


「あのウサギはメスでしかも子供がいる可能性があるからだ」と答えてくれた。


「ど、どうして分かったの?」と聞いたらレオおじさんが「あのウサギ動きが少し遅く感じただろ?あれは子供のために体内に栄養を蓄えている可能性があるんだ。だから見逃したんだよ」


「そ、そうなの?」「あぁ、俺達は何彼構わず狩りをしているんじゃなく、一匹狼でどちらかといえばもうじき寿命を迎えそうなオスを狩って俺達の生活の糧にしてるんだよ」と父さんが教えてくれた。(そこまで考えてるんだ)2人の説明を聞いて僕も納得した。


 そのすぐ後今度は鹿を発見し、今度は2人とも「あいつは、有りだな」「あぁ」と言った後、「お前達はここでじっと静かにしていろ」と言われたので僕達は無言で頷いた。


 そして2人はそれぞれ静かに鹿に近付き、まずレオおじさんが弓で鹿の足の1本に矢を打ち込み、鹿が倒れかかったところで父さんが素早く鹿に近付き首に剣をひと突きして絶命させた。

 

 その余りの速さと連携プレーの凄さにただ呆然としていた僕にアッシュ兄ちゃんが「なっ、凄いだろ。俺も1年前見せられた時は同じ気持ちになったんだから」と言ってきた。本当に凄いと感心させられた。


 そして狩りの後始末をした後父さんが「よし、2人とも行くぞ」と言ったので僕達は父さん達に近付いてそのまま森の奥に進んだ。


「ねぇ父さん、まだ狩りを続けるの?」「いや、この先に川があるからそこでちょっと休憩して帰る予定だ」と答えてくれた。


「そうなんだ」「あぁ。流石にこんな大物持って他の狩りは出来んからな。あと、いつもその川近くまで行ってもう1つの目的を行なった後帰路につくようにして、その往復間で獲物を見つけられなければその日は収穫なしで帰るんだよ」


「もう1つの目的?」「あぁ。それは······魔物の監視だ」


「っ! ま、魔物の?」父さんの答えに僕はびっくりして聞き返した。


「そうだ。ごく稀にこの森にも魔物が出没する事があるんだ。その魔物がいないかどうかを見守るのも俺達の村の仕事なんだ」それを聞いて僕だけじゃなくアッシュ兄ちゃんも一瞬身を強張らせた。


 そうして目的の川までやって来て僕達は休憩をした。「じゃあ今回は俺が見回りをしてくるから、子供達とこれを頼むぞ」とレオおじさんが立ち上がりながら言って森の奥に消えて行った。


「じゃあレオが帰ってくるまで俺の目が届く範囲でなら自由に遊んでて良いぞ」「「やったー!!」」僕とアッシュ兄ちゃんは同時に叫んだ。そして2人で鬼ごっこしたり寝転がったりして楽しんだ。


 その時僕は草むらの中にある薬草を見掛けた。(これって)目の前の薬草はつい昨日寝るときに見ていた薬草の書物に載っていたイージャリーハーブと呼ばれている、主にかすり傷程度の怪我に対してそれを擦り潰して傷口に直接塗ればすぐに傷が治る効力があるハーブだ。そのイージャリーハーブが結構たくさんその場所には生えていた。


 こんなにも生えてるなんて、ジョーおじさんに教えてあげようかなぁ。そうすれば怪我人がたくさん出ても大丈夫じゃ······アーーッ!! そこまで思ったところで僕はようやく忘れていた出来事を思い出した。


 それは前世でも初めて父さん達に森へ連れて行ってもらい、同じ川の近くで休憩していた時に僕が近くの草むらの中に潜んでいた足を怪我した子グマを発見したのだ。


 その子グマを父さんのいたところへ運んだところで運悪くその親グマが僕達の目の前に現れ、子供を取り返そうと僕達を襲ってきて父さんが背中に大怪我を負ってしまったんだ。


 直後にレオおじさんが見回りから戻ってきてクマを追い払ってくれたからそれ以上大事にはならなかったけど、その後は大変だったり僕が原因で父さんに大怪我を負わせた事をずっと後悔していたんだ。その事をたった今思い出したのだ。


(という事は)僕は静かに辺りの草むらの中を調べた。そして、(いた!)ある草むらの中で足に怪我をしてうずくまっている子グマを発見したのだった。

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