第32話 発端
養成学校に入学して早数ヶ月。
前世では最低ランクのEクラスだったのが今世ではBクラスになったけど、前世から受け継がれた体力のお陰で実技の授業は順調に付いていけている。
教科の授業の方も主に各武器の事についてや歴史についての内容がほとんどではあるが、武器については少なくとも短剣に関しては詳しく、他の武器もある程度のことはハウル様の下で修行していた時に享受してもらっていたし、歴史も図書室で赤い石の事を調べている時に息抜きで歴史書の本を読んでいたのでスラスラと理解出来た。
クラスでもロースとたまたま一緒になったのでよく授業の事や私生活の事で会話をしたり、実技の授業で準備運動に利用している特訓コースにて容易に回れるようになってしまったので中級の上達コースに僕以外で唯一進めたクラス委員長のカールともこれが縁でよく会話をするようになり楽しく過ごせている。
そして運命の洞窟で見せてもらった未来の映像の対策のために行っていることのうち、ブーメランについては以前バーミリアン先生に教えてもらったアドバイスを頼りに練習して大分上達してきたが、赤い石の方は全く進展はしなかった。
そんなある時、学校内を歩いていたらエルフ族だと思われる生徒がそれぞれあちこち集団となって何か話をしている光景を頻繁に見掛ける事が多くなった。
(どうしたんだろう?)と思っていたら、少し遠くでロースも2年生か3年生の上級生と思われる生徒と会話をしているのを目撃した(ロース?)。
その日の授業が終わった後にその事についてロースに聞いてみたら、「最近エルフ族の集落や里や村のいくつかが何かに襲撃を受けているみたいで、エルフ族の間で注意や警戒を強くしているみたいなんだ。その事を同じ里出身の先輩が教えてくれたんだ」「そうだったんだ」と納得した。
ロースと別れた後心の中で(ついに来たか)と思った。ダークエルフとの騒動が。
その日の夕ご飯の時たまたま兄ちゃんやアリス、お姉ちゃんと一緒になってその話題が上がった。
「確かに俺のクラスのエルフの人達もそわそわしていたなぁ」「私のクラスの人達もそうだったわ」「私のところも」兄ちゃんにお姉ちゃん、そしてアリスもそれぞれ自分達のクラスのエルフ出身の人がそわそわしていたと報告しあった。
(やっぱり)と思いながら皆の話を聞いていた。「だけど本当にどうしたんだろうな」「ええ、心配よね」「うん」と話している時も正直僕はどこか上の空で聞いていたり会話に入っていた。
夕ご飯を食べて解散、しようとしたら兄ちゃんが僕の部屋まで付いて来た。
そして「それでレックス、これから何が起こるんだ?」と聞いてきた。······バレてた。
「な、何で分かったの?」「お前の食堂での態度があのトロル襲撃を話した時と似てたんだよ」「あっ、それで」そりゃ兄ちゃんにはバレるわ。
と思いながら「実は······」とダークエルフがエルフの里などを襲撃し、その討伐に学校からも何人か派遣される事となると前世での記憶を頼りに話した。
「ダークエルフが?」「うん。それでその騒動の後にエルフの人の何人かが急に学校からいなくなったんだ」「そういう事か」と納得してくれた。
「しかし、それが分かっても先生達に話すわけにもいかないし、ましてや先輩のエルフの人達にも話す事は出来ないもんなぁ」と言いながら僕の部屋のベッドに横たわりながら「どうしたものか?」と言った。
そこで僕が、「兄ちゃん」「ん?」「実は次の休みの日に、その事をヨートス様に教えに行こうと思ってるんだ」
「ヨートス様に? でもどうやって?」と聞いてきたので、以前ヨートス様からもらった白い羽の事を見せながら話した。
「確かにそれならすぐ伝えに行けるな。よし、次の休みに一緒に行こう!」「うん分かった」と言って兄ちゃんは部屋を出た。
(······やっぱり兄ちゃんも関わる事になりそうか)と思いながらその日は寝た。
そして次の休みの日、僕は朝ご飯を食べた後兄ちゃんと合流し、誰も来なさそうな広い場所で白い羽を使った。
羽を天にかざしたら体がフワッと浮いたと思ったら、ハウル様が使った瞬間移動の時と同じような感覚が伝わり、目の前があのエルフの里になった。
僕達が来た事に近くにいたエルフの人達は一瞬驚いていたが、1人が僕だとわかると笑顔で迎えてくれた。
そしてヨートス様に大事な用事があると伝えると屋敷に案内してくれた。そして屋敷の前まで案内してもらい、入り口の人にも用件を伝えて中に通してもらった。
ヨートス様は今会議中との事ではあるがその部屋まで案内してもらい、部屋の前まで行って僕らが大事な用件を伝えにきたと伝えると中に入れてもらえた。
中にはヨートス様の他、この里のお偉い様やおそらく他の所のお偉い様が何人かいらっしゃった。
その中でヨートス様が真っ先に「おぉ、レックス君。それにもう1人はアッシュ君か?」と言われて「「お久しぶりです」」と返答した。
「それで、大事な用件とは?」と聞かれ「ハイ、今エルフ族の間で起こっている問題の事です!」と僕が伝えると部屋にいた全員が緊張しだした。
そのまま僕が前世の記憶を頼りにこれから起こるであろう事態を説明した。
僕の説明を聞き、「まさか、ダークエルフどもが」などと言って部屋の中がざわざわし出した。
その中でヨートス様が「有り得ない話では無いだろう。確か今襲撃を受けているのは奴らがテリトリーにしているエリアに接しているか近い所だったはずだ」と言って確かにやら間違いないかもと言った感想が漏れ出した。
「何よりタイムリターナーであるレックス君が言っているんだ。ほぼ間違いないだろう」と仰った事に全員が同意した。
「ありがとうレックス君。君の情報はエルフ族全員に伝え、ダークエルフらに注意しつつ奴らを討伐する準備に使わせてもらうよ」「ハイ!」と言って僕らは屋敷を出て再び白い羽を使って学校に帰ってきた。
「これで取り敢えずはひと安心かもな?」「うん、多分ね」「まぁ後はヨートス様やエルフの生徒にまかせりゃいいだろう」「······うん」と言って僕らは別れた。
しかし僕の心の中では、あのダークエルフらとの戦闘に兄ちゃんが参加している光景が忘れられないでいた。




