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第194話 避難拠点づくり3~材料集め・土石材~

 団長より特別任務から避難拠点建設の任務に就くように命じられ、僕以外のメンバーとして他に諜報支援部隊から取り敢えず2、3人選出すると言われた。


 そして先ほどの民家の構想だと約三百から四百軒は建てられるだろうとシュピーゲル隊長から伝えられ、それに合わせて診療所や食堂なども建てる方向で決まった。


 後日シュピーゲル隊長に呼ばれて部屋に行った時に他のメンバーを紹介され、1人は諜報支援部隊の副隊長のヒューズさんで僕達の隊長となるとも紹介された。


 そしてもう一人は······何とマーシュだった。どうやら少し前の小隊編成変更に伴ってヒューズさんと同じ小隊となり、一番気が合った事からヒューズさんからの要望でと教えてもらった。


 何はともあれこの3人で進める事となった。もちろん何かあったり他へ必要な要望があれば団長らが相談に乗ってくれたり動いてくれるとの事だ。


「というわけでこの3人で動く事となったんで宜しくなレックス君、マーシュ」「「はい!」」「さて、取り敢えず我々のすべき事は、建物を建てるための各種材料の調達だな」「材料?」「そうだ。家にしろ診療所やら食堂兼倉庫にしろ、何かを建てるためには土台用の土砂や石材、柱や壁用の木材、後は窓などに使うためのガラス、他にもワラやらレンガなど色々な材料を用意しないといけないだろ?」


「確かにそうですね」「実際調達するにあたっては隊長や団長らが協力してくれる事になっているが、何を利用するのかや、それをどこから調達するのかを考えるのが今のところの我々の一番の任務だ」


 ヒューズ隊長の話を聞いて確かにそうだなと思った。「ではまず何から調達しますか?」「そうだな。草木系の材料はヒト族の領土内から調達するのが手っ取り早くたくさん入手出来るだろうから後に回すとして、後のうち早く欲しいものとしたら······土石類だな」「土石類」「土石類となりますと······やはりドワーフ族に頼むのが一番手っ取り早いのではありませんか?」「その通りだな、マーシュ」


 というわけでまずは土砂やら石材などを調達するにあたりドワーフ族へ頼み込む事に決め、早速その事を団長に報告して協力を仰いだ。


「なるほど、確かに彼らに頼むのが一番だな。分かった。グレン王子にドワーフ王への書状を書いてもらうように依頼し、そのままドワーフの王国へ向かうとしよう」「「分かりました!」」


 というわけで僕達3人は団長と共にまずはお城に向かい団長がグレン王子から書状を戴きに赴き、その後ドワーフ族の王国へウッディらに乗って向かった。


 しばらく馬を走らせた後に道が細くなり、周りが岩壁ばかりの光景になってきた時、目の前の道が開けたところで先頭を走っていた団長が馬を止めたので僕達もつられて馬を止め、「着いたよ」と団長が仰ったので僕達は前方を見たら大きな穴の谷底部分に都市が形成されているのを見て驚き、「あそこがドワーフ族の王国だよ」と団長に教えてもらった。


 早速馬をその場に残して王国入口まで向かい、入口の門番に「我々はサンドリア王国騎士団の者です。グレン王子よりこちらのドワーフ王への書状を預かって参りました」と伝え、門番の1人が王の元へ伝えに向かい、暫くして戻って来たところで入国が許可され団長の後についてお城へ向かった。


 お城に着いてそのまま守衛の1人に王の間へ案内され、中に入ってドワーフ王の近くまで進んだ。


「おぉ、久しぶりだなパーシバル殿」「お久しぶりです。アンドレア王」とドワーフ族の国王であるアンドレア王とパーシバル団長は挨拶を交わした。


「会うのはそっちの養成学校の卒業式以来か」「ええ、そうですね」「んで、今回はそんな大人数で何しに来たんだ?」


「まずはこちらのグレン王子からの書状をお読み下さい」と兵士の1人に手紙を渡してアンドレア王に渡されて読みだした。


「っ! まさか、魔物達によってこのような事態に」「ええ。それで避難拠点建設のために必要となる土石類を分けて頂きたくお願いに参った次第です」「事情は分かった。こちらもそれぐらいなら協力は惜しまんよ」と仰って頂けて僕達は全員安堵した。


「エルリックを呼んでこい!」「はっ!」兵士の1人がエルリックという人を呼びに行っている間、「ところでパーシバル、後ろの2人は今年入団した奴らか?」「ええ、そうですが?」


「なら、2人のうちのどっちかがひょっとしてレックスって奴か?」(えっ?)突然アンドレア王から僕の名前が呼ばれて驚いた。


「ええ。彼がレックスですが、何故アンドレア王が彼の事を?」「フンッ! 卒業式が始まる前にお前とエルフのフィンラルが話していたのが聞こえただけだ!」


「······あっ! あの時の!」「それでお前達が話題にするぐらいだからな。どんな奴か機会があれば俺もお目にかかりたいと思っていただけだ」「そういう事でしたか」とパーシバル団長は受け答えしていたが、一体フィンラル様と何を話してたんだろうと僕が疑問に思っているとエルリックという人が現れた。


「オジキ。呼んだか?」「おう来たか、エルリック」「お久しぶりです。エルリック王子」(え、王子!?)


「ん? ああパーシバル殿! 本当にお久しぶりです。今日はどうしたんだ?」「エルリック、この者達を採石場まで案内してやってくれ。理由などは行きながらパーシバル殿から聞くがいい」「分かっただ。それじゃあ付いて来てくれ」「それでは失礼します」僕達はエルリック王子の後に付いて行った。


 そして採掘場に向かいながら団長はエルリック王子に事の経緯を説明した。


「それで石材や土砂を」「ええ、そうなんです」「確かにあそこの石や土は建物を建てるのには何かと役に立つだろうが······」「ホントですか?」「ああ」「「(やった!)」」


 僕達や団長はエルリック王子の言葉に喜んでいたが、唯一最後尾を歩いていたヒューズ隊長だけは難しい顔をしていた。


 しばらく歩いて「ここが採石場だ」と案内された場所は、様々な種類の石が埋まっていると思われる崖が見渡す限り上空までそびえ立っていた。


 僕達がその光景に見とれている間にエルリック王子はある種類の石材をまとめて置いてあるところに歩み寄り、「おーい! この石なんてのはどーだー?」と聞いてきたので近くに向かった。


 目の前に置かれている石は確かにウッド村の家や各地の建物の土台に使われている石材に似ていた。


「どうだ、ヒューズ?」「ええ······これなら、問題ないでしょう」ヒューズ隊長が石材を色々調べた上で問題ない事を告げた。


「では」「はい。この石材以外もこの辺りの物であれば恐らく建物建設の際に活用できそうですので、ここの土石材だけで大丈夫でしょう」「「やった!」」「良かった」と僕達と団長が喜び安堵した直後、「ただ問題は······」とヒューズ隊長が何かを言いかけた。


「も、問題は?」「これらの土石材をどうやってあの建設予定地まで運ぶかです」「「あっ!」」「そうか。言われてみれば確かに」「ええ。恐らくアンドレア王の事ですから、そこまでは協力はしないなどと仰ってくるはずでしょう」(有り得る)とその場にいた全員がそう思った。


「我々で運ぶにしましても、相当の人手や日数が必要となるでしょうし、流石に無理な話でしょう」「そうだな。確かにそこまで考えは及んでなかった」


「そうですね。いくらなんでもこんなに沢山の土砂や石材を一度に大量に運ぶ方法なんてありませんよね」マーシュの発言を聞いて(一度に大量に······か)と考えだした。するとヒラッ! ヒラッ!(ん?)一瞬頭の中で何かが過ったような気がした。


(今、確かに何か······)とよくよく思案していたら、1枚の葉っぱが浮かんできた。(これ、は······)そこでようやく先日の世界樹の下での出来事を思い出し、直後「あーーーっ!!」と大きな声を上げた。


 僕の叫び声を聞いてマーシュや団長らはもちろん、エルリック王子や採石場にいた他のドワーフ族の人達も驚いたのだった。


「い、いきなり何だレックス! 大きな声出して!」「ど、どうしたんだいレックス君?」マーシュと団長が声をかけてきたので「な、何とか、なるかもしれません」「な、何とかって?」「ここの土石材を建設予定地に運ぶ方法です」


「「ええっ!?」」「ど、どうやって?」「こ、これを使ってです」と先日世界樹にもらってから肌身離さず持ち歩いている世界樹の葉を皆に見せた。


「それは?」「······ま、まさかそれは」「はい。世界樹の葉です」「えっ!」「やっぱり」「ど、どうしてお前がそれを?」


「少し前に世界樹へ葉を分けて下さいとお願いしたら1枚だけ(本当はジェシーと1枚ずつ)もらえたんだ」「そうだったのか」「しかし、世界樹の葉で何を?」


「······そうか、ここへの移動の羽にするのか!」「「あっ!!」」団長の思いつきに他の2人も気付いた。


「はい! この採石場近くへ到着出来るように移動の羽を作り、ドワーフ族の人達にはそこまで採掘した土石材を運んでもらい、後は僕達の方で移動の羽を用いて運べば、手間はかかるかもしれませんが僕達だけで運べる事になります!」「確かに。それなら土石材を準備してもらえばいいだけとなるからな」「やったじゃないか、レックス!」「うん!」


 取り敢えず建設予定地まで土石材を運ぶ方法の目処が立った事で再び喜びあった。


 まさかあの時もらえた世界樹の葉がこんなにも早くに役立った事に僕自信が一番驚いていた。(本当にありがとう、世界樹)そう空を見上げながら世界樹に感謝したのだった。


 そんな僕達の様子を驚きすぎて呆然と見ていたエルリック王子に団長が「エルリック王子! この採石場近くで移動の羽に変える事の出来そうな物か場所はございますか?」「は、はい! それなら、すぐ近くに作業中の安全を祈願するために祀っている守り岩があるんで、それでなら、多分······」「ではそちらまで案内をお願いします!」「わ、分かっただ」とエルリック王子に守り岩まで案内してもらった。


 少し歩いたところに守り岩が祀られていたので、「じゃあレックス君」「はい」と僕は持っていた世界樹の葉を守り岩に押し当てた。すると世界樹の葉は以前マリンタウンで変化させた時と同じ様に茶色い羽の形に変化していった。


 そして羽の形になったところで僕と団長が確認のために一旦王国の外に向かい、羽で飛んでくる実験をする事にした。その結果は······無事飛んで来る事が出来たのだった。おまけに、団長が片方の手を大きな岩に当てていたところ、その岩も一緒に飛ばせれる事も確認出来た。


 こうして建設に利用できそうな土石材を見つけられ、運搬方法も決まったところで改めてアンドレア王に許可をもらいに向かった。


 団長からの説明を聞き、改めて土石材利用の許可を求められたアンドレア王はあまりの事態の展開にただただ驚くばかりだったのだ。


 そして「クッ、ククククク、アーハッハッハッハ······」「ア、アンドレア王?」「良いだろう。好きなだけ使ってくれ。それと······」「それと?」


「実際に建設を始めたらこちらからも人を派遣してやろう」「「えっ!?」」突然のアンドレア王からの提案に全員が驚いた。


「よ、宜しいのですか!?」「ああ。会ってすぐに俺もこんな事態を見せられたからな。そいつに興味を持ったまでだ」と僕を見ながら答えられた。「ありがとうございます!」


 こうして僕達はドワーフ族のアンドレア王から土石材料の利用許可と、建設時の人的派遣という思いがけない収穫を持って王都に帰還する事にした。


 その帰りの道中、「あの、団長。ひとつ良いでしょうか?」「ん? 何だい? レックス君」「卒業式の時、フィンラル様と何を話されたのですか?」とアンドレア王の言った事が気になってて団長に聞いてみた。


「ああ、あれか。大した事じゃないんだけど······」



 場面は今年の養成学校卒業式開始直前まで遡る。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「パーシバル殿!」

「ああ、フィンラル王。お久しぶりです」

「去年の卒業式以来ですな」

「ええ。またこの時期が参りましたね」

「本当に。今年卒業する者達にも我々は昨年大変お世話になりましたし」

「そういえば、今年の卒業生も全員ダークエルフとの戦いには参戦してましたね」

「ああ。本当にあの時はお世話になったが、その事以外でも今年卒業する者の中で今後に興味のある者がいるものだからね」

「ほぉ、そのような子が。一体誰なんですか?」

「恐らくそなたも名前は聞いた事があるだろうし、もう既に関わった事があるかもしれないが、"レックス・アーノルド君"だよ」

「レックス君ですか!」

「やはりご存知でしたか」

「ええ。私も2度ほど依頼を受けてもらいましたから」

「そうでしたか。我々も今の世界樹の苗木を見つけてもらったりと色々世話になったものだから、本当に今後の活躍に興味を持っているんだよ」

「その期待に応えられるよう入団した際にはしっかりと指導させてもらいますよ」

「ああ。楽しみにしているよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「って言う会話をしていたんだ。恐らくその話をお聞きになられたんだと思うよ」「そういう事だったんですか」「ああ」その話を聞いて納得したのだった。


 

 後日、世界樹の葉をドワーフ族の王国への移動の羽に変えた事をジェシーに伝えるため彼女の部屋を訪れた。


「それじゃあ」「うん。あの時もらった世界樹の葉がもう役に立ったんだ」「凄い! それじゃあ、私がもらったのも······」とジェシーは自分がもらって机の引き出しに閉まっている世界樹の葉を見つめた。


「きっといつか必要になる時が来るはずだよ」「そうね。ありがとうレックス。教えてくれて」「良いんだよ。それじゃあ」「うん!」僕はジェシーの部屋を出た。


 レックスが部屋を出て行った後、ジェシーは再び机の引き出しに視線を送ったのだった······。

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