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第192話 避難拠点づくり1~計画立案~

 ドクトリー先生の下に世界樹の分樹が送られてからというもの、診療所での治療なども順調よくスムーズに施されだした。


 またフィンラル様が僕に約束して頂いたように後日エルフ族の使者が訪れ、グレン王子にこちらの状況を耳にして支援を申し出たいと伝えたところ、グレン王子も受け入れてエルフ族から診療所などへの人的派遣や各種物資の補給などの支援が行われた。


 そして、少し前に診療所を退院したケリーはジェシーとお城で暮らす事になり、流石に王都から離れた村に住んでいた事もあって初めてお城を見た時も"すごくおおきなおうち"と捉え、毎日ジェシーやベアーズ(またジェシーらと過ごす事にした)らと楽しく過ごしているとジェシーから聞かせてもらった。


 僕ともたまにベアーズを連れ出したり、送り届けた際に顔を合わせているので「あ、おにいちゃん!」と声を掛けてくれるような関係となったのだった。


 このように様々な事が上手くいっているように見えているが、それらによる悪影響も出始めていたのだった。


 王都の診療所に行けばどんな怪我なども治してもらえるだとか、王都にエルフ族から援助物資が届けられたなどといった情報が各地に広まり、その事で王都に避難したがる人達があちこちの町や村などから出始め、各長が説得して引き留めようとしても強引に出て行ったり、夜中にこっそり町や村を抜け出す家族がいるようだ。今回僕が見回りで訪れた村ででも······。



「そうですか。2家族が昨夜のうちに······」「はい。勝手に村を抜け出して恐らくは王都に向かってしまったかと」「魔物に襲われていなければ良いのですが······」


 そう、このような場合は当然誰も警護などは付いていないため、もし魔物に遭遇しても自分達で対処しなければならず、とても危険なのであった。


 現にその村からの帰り道、(っ! あれは!?)村を抜け出したうちの1家族と思われる集団が魔物に襲われた成れの果ての姿を発見したのだった。(やはりこうなってしまったか。となると、もう1家族も!)そう思って王都への足を早めたのだった。


 

「う、うわーっ!」「た、助けてー!」案の定もう1家族はオークの集団に追い掛けられていた。「パパー!」それぞれが思い思い叫びながら必死に逃げていたが、とうとうオークに追い付かれ、1体のオークが持っている斧を振り上げて家族を襲おうとしていた。


 その時後方からダガーが飛んで来て、斧を振り上げていたオークの急所に刺さってオークは倒れたのだった。


 他のオークがダガーの飛んで来た方を見たら、ウッディに乗って近付いて来る僕を認識し、狙いを僕に変えて向かって来た。そのオーク達を僕はウッディから飛び降りてあっさりと撃退した。


 その後「大丈夫でしたか?」その家族に近寄った。「あ、ありがとうございました!」とお礼を言われたが、父親にしがみついているお嬢さんをチラ見した後、「お気持ちは分かりますが、勝手に村をお出になられますとこういう危険が伴う事もご理解して下さい」「は、はい。申し訳ございませんでした」とご両親に多少お灸を据えた後、一緒に王都へ向かった。


 

 その後まずは団長に今回の一件を報告した。「そうか。1家族は魔物の犠牲となってしまったか」「はい。もう1家族は無事王都まで警護できましたが」「よくやってくれた。しかし、これでまた王都に人が増えてしまったと言う事か······」「······はい」


 団長の言ったように、今この王都内には各地から避難して来た人達によって避難場所として割り当てた場所などが溢れ返ろうとしている新たな問題も浮上しだしたのだった。


 現にマリア様へ報告しに行くために街を歩いていても、一昔前に比べて人の数が多くなったように感じられた。


(これ以上増えたら王都内の人達の生活も苦しくなってくるに違いないが······)と思いつつも具体的に何か案があるわけでもなく、複雑な気持ちで足を進めていた。


 

「······以上です」「そうでしたか。その1家族は本当にお気の毒としか言いようがありませんわね」「はい」「ご報告ありがとうね」「いえ。では、失礼します」と部屋を出て行こうとした時、ふと壁に掛けられていた領土内の地図に目が止まり、(あれ? そういえば······)とある事に気付きその地図の前で止まった。


(それに、ここって······)と思ったところで「マリア様、1つ伺っても宜しいでしょうか?」「何? レックス君」と気になった事をマリア様に確認した。

 

「この王都の南東部の平原地帯なんですが、誰かの所有地になっているか、誰かの所有物が建ってたりしますか?」「いいえ。特に誰かの所有地でも何かが建っているわけでもないと思うけど、どうして?」「いえ······ちょっと」曖昧な返答をし、その後部屋を出たのだった。


(誰かの土地でもなく何かが建っているわけでもないとすれば······ちょっと団長に相談してみるか)と考えながら本部に向かっていた。


 

 本部に戻ってすぐ団長室に向かい、「団長、今宜しいでしょうか?」「ああ、構わないよ」「失礼しま······あ」と部屋の中には団長だけでなく諜報支援部隊のシュピーゲル隊長もいたが、「よぉ」「別に構わないと言っただろう」「あ、はい」と言われたので団長達の近くに寄り「実は相談したい事がありまして」「相談?」「はい」


 そう言って団長室にもマリア様の部屋に掛けられていたのと同じ地図が掛けられていたのを覚えていたのでそちらに向かい、「この王都の南東部に広がっている平原地帯なんですが、マリア様に伺いましたら誰かの所有地になっている訳でもなく、また誰かの所有物が建っている訳ではないとの事でして」「ああ、確かにそうだったな。それが?」「はい。ですのでこの辺りに王都へ避難して来た人達が一時的に生活が出来るような"避難拠点"のようなものを建設してはと思いまして」


「「避難拠点!?」」流石に意外な言葉を聞いて2人とも驚いていた。


 

「はい。この辺りに新しい集落やら村などの定住地を作って移り住むという事には抵抗感がでる人もいるかもしれませんが、今の魔物の襲来が落ち着くまでの間、王都以外で一時的に避難生活を過ごす場所とすれば多くの人に受け入れてもらえ、そちらへの移行もスムーズに出来るのではないかと思いまして」「た、確かに言われればそうかもしれないが······」


「それに王都より南の地域にはまだ一度も訪れたことがありませんので、魔物の襲撃に遭ってはいないはずですし」「そういえば、確かに襲撃を受けているのは王都より北の地域に存在する町や村ばかりだ」


「ですので、建設中も完成してからも魔物に怯える心配はあまり無いでしょうし、もし魔物達が襲って来る事があっても王都の方で先に気付くはずですし」「ああ」


「一時的な生活の場というわけですから、建築する物にしても各家族が過ごせる民家と、食事などを提供出来る食堂のような場所に食料を蓄えておける倉庫のような部分を兼ね備えた建物、後は何かあったときに治療などが出来る診療所のようなものを作れば十分だと思います、し······」


 僕が言いたい事を言い終わる頃には団長もシュピーゲル隊長も驚きすぎて何も言葉がでない状態となっていた。


「あの、如何でしょうか? 僕の考えは?」と尋ねたら、「レ、レックス君」「はい」「······素晴らしいよ!」(うわっ!)団長からの返答に驚いた。


 

「確かに一時的な避難場所とすれば色々手続きなども要らないだろうし、多くの人にすぐ受け入れてもらえる可能性もあるだろう」「ああ。それにさっきレックス君が提案した建物で十分だろうから地形次第ではより多くの民家を建てられる可能性もあるし、それだけ人々を受け入れられるだろうからな」2人とも大いに賛同してくれたのだった。


「シュピーゲル! すぐ部隊を率いて現地の調査を行ってくれ! 私はその間に各所への説明に回る!」「分かった!」


「レックス君、本当に素晴らしい提案をありがとう!」「本当にとんでもない奴だな、君は!」などと言いながら2人は部屋を出て行った。


(······なんか、凄い事になりそうな気がしてきた)と少々不安を覚えたのだった。


 その後すぐにシュピーゲル隊長は1、2小隊を引き連れて現地の調査を行い、バーシバル団長もグレン王子や国王様をはじめ、お城の各部署やその他各所の責任者や担当者へ僕の提案した内容を説明行脚したのだった······。

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