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第186話 除け者

この話から数話がこの小説の核心となるお話となります。

 一部の隊員らが各地の村や町を警備するために派遣され、また僕もパーシバル団長から任命された特別任務をこなすようになって大分日が経った頃、僕と僕の親しい人達との関係や運命に関わる大きな出来事が起こった······。


 僕がパーシバル団長に命じられて北東部の町村へ見回りに数日出掛けていた頃、突然本部にウッド村のある森の少し北に存在する村へ派遣されていたはずのアリスが戻ってきた。


 そして急いで通路を走っていた時、「アリス!」「あっ! お兄ちゃん!」アッシュがアリスに声を掛けた。


「どうしたんだ! 確かウッド村近くの村に派遣されてたはずじゃあ?」「実は、私達が派遣された村近くの岩山にオークやトロルが大量に集結し出しているの」


「何だって!?」「まだ何かをする様子はないんだけど、何かが起こる前に本部へ報せておこうと言うことで、私が本部へ来たの」


「分かった! お前はその事をすぐ団長に知らせるんだ!」「うん!」


「あとその時、武闘部隊の増援は俺の方で既に準備していると伝えておいてくれ!」「分かった!」 


 そう言ってアリスは団長室に向かいだし、アッシュはフレッドとボブ、新第1小隊と他数名に声を掛けすぐ村に向かった。


 村では先に派遣されていた隊員らが岩山の方をずっと警戒して見張り続けていた。


「どんどん増えてきてるぞ」「どんだけ集まってきやがるんだ」「もし今襲撃されたりでもしたら」「······」


 そんな話をしていた時、「おーい!」と遠くから声が聞こえて振り返ってみたら、「あ、「アッシュ副隊長!」」達が駆け付けて来たのだった。


「奴らの様子は?」「今はまだ特に動く気配は見られません」「そうか。なんとか間に合ったようだな」「はい」


 そうしてアッシュらがオークやトロルのいる岩山の方を見ていると、「おーい! アッシュー!」聞き覚えのある声で名前を呼ばれたので振り返ってみたら、「えっ!? お、おじさん! それに父さん!?」なんとゴーシュとレオが数人のウッド村の住民を伴って近付いて来た。


「おじさん、どうして?」「いや、この村の人が俺達の村にも報せに来てな。騎士団から団員が派遣されているって聞いてはいたが、すぐにでも奴らが動き出した場合は戦力が乏しいだろうと思って念のために来てみたんだ」


「そうだったんですか。でも助かります」「おう!」アッシュとゴーシュが話していた時、ハリー隊長が選抜した魔法部隊員も到着したのでアッシュは全員を集め作戦を伝えた。


 取り敢えず、後から来た武闘部隊員とゴーシュら一部のウッド村の人で正面から攻撃し、魔法部隊員とレオら残りのウッド村の人で側面や遠方からの各種攻撃を与える事とし、その間に派遣されていた武闘部隊員は住民の避難誘導と警護を担当する事となった。


 アッシュの作戦を聞いて全員が納得、了承したちょうどその時、「た、大変です!」残って見張りを続けていた隊員が走り込んで来て、「や、奴らが動き出しました!」


「っ!!」「来たか!」その報せを聞いて全員に緊張感が走った。隊員の報せ通り、オークやトロルらが岩山から村の方へ向かい出していたのだった。


「さっきの作戦通り、奴らを迎え撃つぞ!」「「おお!」」アッシュの掛け声に全員が応じ、各自持ち場に散った。


 程なくして両者がぶつかり合い、激しい攻防が繰り広げられたのであったが、その最中······。



 その村での激突の2日後、僕は見回りから帰って来てマリア様に報告後、パーシバル団長に報告しようと通路を歩いていた。すると前方にアリスの姿を見掛けた気がして、その姿を追ったらやはりアリスであったので、「アリス!」と声を掛けた。


「っ! レ、レックス」「どうして本部に? もしかして、派遣されてた村が」「······うん。数日前にオークとトロルの集団に襲われたの」「なっ!」とうとう僕らの身近な場所も襲われ出されたのかと思った。


「幸い、襲われる前にお兄ちゃん達が駆け付けてくれたんだけど······」「だけど何? 何かあったの?」と聞いたがアリスは何も答えなかった。


「もういいよ!」「あっ、レックス!」僕は兄ちゃんに事情を聞くため兄ちゃんの所へ向かった。


 そして、トンッ、トンッ! 兄ちゃんが日頃使っている執務室のドアを叩いた。


「どうぞ」「兄ちゃん!」「レックス」「アリスから聞いたけど、アリス達が派遣された村が襲われたんだって?」


「······」「そこで何かあったの?」「······」「なんで何も言ってくれないの!」「······レックス」「何?」「お前、今回の見回りの件、団長に報告してきたか?」


「ま、まだだけど?」「だったらそっちをまず片付けろ」「でも」「でもじゃない!」「······分かったよ」と団長へ報告に行くため部屋を出た。


 その後「お兄ちゃん」「アリスか」レックスの事が気になって後を付けてきたアリスがアッシュの部屋を覗いた。


「良いの? レックスに()()()言わなくて」「まだ良いんだ。おそらく団長から明日あの村の状況確認に行くよう言われるだろうからな。その後で十分だ。もし今言ったら、周りが見えなくなるだろうからな」「······そうだね」とアリスは納得してその場を後にした。


 アッシュの部屋を出た後レックスは、パーシバル団長の下へ今回の見回りに行った先の報告を行った。


「分かった。報告ありがとう」「いえ」「さて、数日かけて見回った後すぐで申し訳ないが、明日また西の方の先日オークとトロルの集団に襲われた村の状況確認をしてきてくれ」


「分かりま······え?」そこってアリスが派遣されていた······(あ)そこで団長の顔を見たら、全て承知しているといった顔をしていた。「よろしく頼むよ」「は、はいっ!」と返事をして部屋を出た。


(だから兄ちゃん早く団長へ報告に行けと言ったのか)先ほどのアッシュの言った事に納得しながらレックスは部屋へ戻ったのだった。


 この後、予想だにしていない事態となるとは知らずに······。



 翌日、レックスは早速オークやトロルに襲われた村に到着した。大量のオークやトロルが襲ってきたと聞いていたが、パッと見た感じそれほど村の中は破壊されていないように感じた。やはり兄ちゃんやジャック達が後から応援に駆け付けた事が功を奏したのかもしれないなと納得したのだった。


 その時事前に派遣されていた隊員を見掛けたので声を掛け「あ、レ、レックス」「村の中の建物なんかはそれほど被害を受けた様子は見られないけど、住民の方は?」


「あ、うん。そっちも戦闘前に村の外へ避難させたから、亡くなった人もいないし、怪我をした人も、ほとんどいないよ」と答えてくれたが、その返答が歯切れの悪いように感じた。


 そこへ「レ、レックス君かい?」「あ、村長さん!」この村の村長が僕に声を掛けてきた。子供の頃から父さんらと何度も来た事があるので村長さんとも顔見知りの関係となっていたのだ。


「レックス君。ゴーシュさんの怪我は大丈夫なのかい?」「え、父さんの怪我?」「知らないのかい? ゴーシュさん、あの時アッシュ君を庇って大怪我を負ったんだよ」


「え? ······父さんが、兄ちゃんを庇って、大怪我······」兄ちゃん本人はもちろん、他の誰からもそんなこと聞いていなかったので、少しの間頭の中が真っ白になった。


「すぐに村の人がウッド村に運んだようなんだけど、······本当に知らなかったんだ」「······後で、確認してみます」と答えた後村長さんと色々情報交換などをした。


 その後「それじゃあ、僕はこれで」と村長さんと別れ、「後、よろしく」「あ、ああ」派遣された隊員らに声を掛けて村を出た。そしてウッディに乗って······全速力で本部に戻った。


 本部に戻ってウッディを馬小屋に戻した後、すぐに兄ちゃんの執務室に向かった。そして······。


 バンッ!「兄ちゃん!」「っ! レックス」勢いよくドアを開け中に入った。


「どういう事! 父さんが大怪我を負ったって」「······」「しかも、兄ちゃんを庇って怪我をしたって」


「ああ。あの時、横からの攻撃に気付かず、おじさんが庇ってくれたんだ」「それで父さんが大怪我を?」


「······そうだ」「なら、何で昨日の時に言ってくれなかったんだよ!」


「言ってたらどうしてたんだ?」「もちろん!」「おじさんの様子を見に行くつもりだったのか? その前に受けた任務の報告を団長にしないで」


(っ!)「そうなるだろうと思って言わなかったんだ」「っ! で、でも!」


「レックス!」「何?」「お前の今すべき事は何だ?」「そ、それは」「各地の情報収集や情報交換、それに不明となった人や物を探し出して人々が安心して避難出来るようにする事だろ?」「う······うん」


「それをお前がやらなかったらどうなる? すぐ近くに魔物達が迫っているにも関わらず、そんな事を知らずに何の準備もしていない村や町が襲われでもしたら、どう責任を取るんだ。それに、まだ避難していない人がたとえ一人でもいたら、その人のために隊員を他へ派遣出来ずそれで他の 場所が魔物に襲われて滅ぼされたら、どうするんだ!」とそこで兄ちゃんは僕を睨んできた。


「······」「そうした事態を防ぐ事が、今のお前の役目だろ」「······うん」「それに、隊員の中にはお前より辛い思いでいる奴だっているはずだろ?」


「え?」「目の前で故郷を滅ぼされたり、目の前で大事な人が怪我をしたり、亡くなってしまった奴だっているはずだ。しかし彼らはその人達に寄り添っていたい思いを心に押し止め、別の場所へ派遣されて向かっている奴だっているんだからな」確かに、そうだけど······。


「分かったなら、今お前のすべき事をするんだ。良いな!」「······分かったよ」と言って執務室を出ようとした。


 その直前、「だけど」「ん?」そこで兄ちゃんの方を見て「父さんの事、他の人からじゃなくて、兄ちゃ······"アッシュ副隊長"から真っ先に聞きたかったよ」「え?」そう言い捨てて執務室を出た。


 流石に最後のレックスの発言を聞いてアッシュも驚いたのだった(レックス······)。


 ーー今お前のすべき事をするんだ。良いな!ーー(······分かったよ兄ちゃん、······そうさせてもらうよ!)


 こうしてこの時から僕は、"アッシュ副隊長"への反発心や心のどこかに投げやりな気持ちが芽生えだし、その事がその後の行動に少なからず影響を与える事となったのだった······。


 その後僕は"普段通り"パーシバル団長とマリア様に今回の状況確認の報告を行い、その日のその後も普段通りに過ごした。



 そして、この一連の出来事がレックスとアッシュの運命を大きく変え、前の人生と同じ過ちを繰り返す事になろうとしていたと後々気付くのだが、この時の2人はまだ知る由もなかった······。

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