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第185話 特別任務

 パーシバル団長から特別任務を言い渡された翌日、団長の仰った通り各隊長 (僕達は副隊長の兄ちゃん)から小隊編成の変更が発表された。


 僕達武闘部隊も北方地域出身者に各々の村や町への警備の任務が言い渡され、残った隊員で小隊が組み直されたのだった。僕達元第1小隊からもデビットが故郷ではないが、昔から交流があってそこの出身者がいないという理由からある町への派遣が言い渡された。


 残ったジャックとライアンはまた同じ第1小隊となり、2人にカールとレイルが加えられて新しい第1小隊が編成された(但し、部屋は今までと変わらなかった)。


 また知り合いの中で唯一アリスだけがウッド村のある森の少し北に存在する村への派遣が言い渡され、その日にもう一人の人と村へ出発したのだった。


 その翌日、パーシバル団長に命じられて僕は北方地域の各町村を一通り見回る事となり、早速ベアーズとウッディに乗って出発した。


「まさかまたお前と行動を共にするとはな、ベアーズ」と話し掛けたが、以前のようにベアーズはチラッと僕を見てまたすぐ前を向き出した(ったく)。


 そうして王都に近い北東部の町村から回る事にしてたので、順番に赴いて派遣されている隊員がいれば彼らと現状の確認を行い、その後や隊員がいなければ直接その町村の長に現在の各地の状況説明と聞き込みを行い、次の場所へ向かった。


 流石に1日2日で回る事は出来ず、それぞれ適当な所で野宿をする事にし、本当に団長の言った通りウッディという息のあった馬がいて正解だったなぁと思った。


 また2日目の終わりがけに訪れた町に着いた時も、団長の考えが正しかったという事を実感させられたのだった······。


 その町の少し手前になぜかゴブリンの死体をいくつか見掛けたので、(ど、どうしたんだろう?)と思いつつ町へ急いだ。


 町の近くでウッディから降りて町へ急ぎ、ちょうど派遣された武闘部隊員を見掛けたので「おーい!」と声を掛け、向こうも「あ、レックス!」と僕に気付いた。


 そして「ここに来る時ゴブリンの死体を何体か見掛けたんだけど、あれって?」と尋ねたら、「実は、夕べこの辺りを見回っていたらゴブリン達を見掛けて、この村を襲うつもりみたいだったから討伐したんだ」「そうなんだ!」流石に驚かされた。


「それじゃあ······」「ああ。もし俺達が来てなかったら、この村も奴らに襲われて滅ぼされてたかも知れなかったんだ」正に団長の判断が正しかったと言える結果となったのだった。


 とはいえ取り敢えず町長とも話をしてそれから町を離れた。


 またある時ウッディを走らせていたらベアーズが突然ある方向を見て唸り出したため、ウッディを止めてその方向へ向かってみたら······。(っ! あれは······)目の前にはオークとサイクロプスの群れが動物を食べている場面を目撃した。


(このまま放っておいたらどこかの町や村が襲われてしまう)そう思って持参してきた聖なる短剣を持ち集中スキルの覚醒を発動させて弱点をすぐ見つけ出し、一番手前にいたオークの弱点にダガーを投げ、見事に命中して悲鳴を上げながらそのオークは倒れた。


 その後姿を見せたら残ったオークやサイクロプスは驚きながらも僕に向かって来た。そいつらの攻撃を避けながら弱点を攻撃して無事全員を倒せたのだった。


(フゥ。何とか全員倒せて良かった)と安心しつつ、魔物と遭遇した場所を取り敢えずメモしておいた。


 このように各地の町村の見回りや魔物の討伐などをこなし、出発して3日目に王都の本部に無事戻って来た。


 戻ったところでウッディを馬小屋に戻して今回は先にパーシバル団長の下へ報告に向かった。


「そうか。やはり襲撃を受けた所があったか」「はい。たまたま騎士団員が今回はいて撃退出来ましたが······」


「うん。それに、あちこち既に魔物の集団が蔓延っているみたいだしね」僕が魔物と遭遇した場所をメモしておいた紙を見ながらそう言った。


「取り敢えず各地の状況は分かったよ。ところで、彼女へは?」「これから報告しに行くところです」「よろしく頼むよ」「はい!」と団長室を出てお城のマリア様の下へ向かった。


 お城のマリア様の部屋の前に着いてコンッ、コンッ!「レックス・アーノルドです」「どうぞ」「失礼致します」と部屋に入り「パーシバル団長より仰せつかって各地の状況のご説明に伺いました」「ありがとう」と挨拶を交わしてパーシバル団長に報告した内容を同じように伝えた。


「そう。でも今のところはまだ直接襲われた所は無いのね?」「はい。他の騎士団員の活躍のお陰で何とか未然に防ぐ事が出来たところもございましたので」「ありがとう。これからも報告よろしくね」「分かりました」と答えて部屋を出て本部に戻った。


 しかしその夜、再びある村が魔物の襲撃を受けたのだった。しかもその村には騎士団から派遣された隊員らがいたにも関わらず······。


「くそっ! やはりこれだけ数が多いとこれ以上は······」とそこへ別の隊員が「住民の避難は粗方済んだよ!」「良し! 仕方ない、全員撤退だ!」「「了解!」」と村を放棄して撤退を余儀なくされたのだった。


 その後は一時的な避難場所まで住民を誘導し警護に当たったのであった。


 少しして彼らの下にいた諜報支援部隊員の報せで魔物の襲撃を知り、急いで現地へ隊員が派遣されたのだった。


 そして翌朝僕に団長からその襲撃を受けた村の状況確認が命じられた。


 程なくして村 (の跡)に着いたのだが、全員避難して村には一部の隊員しかいないはずなのに、なぜか隊員だけでなく一部の村人の姿も見受けられた。


 僕は彼らの傍に駆け寄り、「どうしたの?」と尋ねた。「あっ、レックス。実は、このお爺さんが奥さんの形見を見つけるまでは避難しないと言い張っちゃって」


「えっ!?」正にこの状況もパーシバル団長が事前に予測していた事態だった。


(それなら)と僕は形見を探しているお爺さんに近付き、「お爺さん」「嫌じゃ! わしゃアレを見つけるまでは絶対にここを離れん!」


「分かってます。ですから」と鞄の中からあの導きの玉を取り出し「この玉を持って探している物を頭の中で思い浮かべてみて下さい」と玉を差し出した。


 お爺さんも導きの玉を持って言われた通り頭の中で探している物を思い浮かべ出した。すると導きの玉に何かが浮かび上がってきて、髪飾りの様な物だと分かった。


 全員が驚きの声を上げ、その声を聞いてお爺さんも目を開け探している物が映されて驚いていた。


「お爺さん。玉から青白い光が出ていると思うのですが、どちらを指していますか?」と尋ねたら「あ、あっちを」とある方向を指し、「あっちですね」と指された方向に向かい、(この辺りか)と目星を付け「この辺りですか?」ともう一度尋ねると「そ、そうじゃあ!」


「分かりました! 皆、こっちに来て探すのを手伝って!」とその場にいた隊員達に頼んで一緒に探してもらった。


 探しだして暫くした後、「あ、あった!」と1人の隊員が発見したみたいで、全員で確認したところ導きの玉に映された髪飾りであった。


 すぐにお爺さんに見せたところ、「こ、これじゃあ! あ、ありがとうございます。本当にありがとう」と涙を流しながらお礼を言われた。


「もうこれで皆と一緒に避難出来ますね?」「はい。はい」こうしてお爺さんも皆と避難する事となり、「取り敢えずここの状況は本部に戻ったら団長に報告しておくから。後はよろしく!」


「分かった!」僕は村を出発して王都に戻り、マリア様と団長にそれぞれ今回の報告を行ったのだった。


 その後も魔物の襲撃を受けた場所へ赴き、行方知れずとなった人や物を導きの玉を用いて探してあげたり、まだ襲撃にあってない所には情報収集や交換、また注意喚起などをしたり、その最中に魔物を見掛けたら退治したりを繰り返した。


 ちなみに、魔物によって滅ぼされた場所を警備していた隊員達は、そこの住民達を取り敢えず王都まで誘導しつつ護衛し、その後はまだ襲撃を受けていない別の場所へ派遣される事となっていた。僕もたまに王都への帰り道にその集団に遭遇して一緒に護衛をする事もあった。


 しかし警備を強化しても、それに比例するかのように各所を襲撃してくる魔物達の方も数を増やし、力も増していてまさにいたちごっこ状態が続いたのだった。


 流石に僕もある日本部に戻って来てウッディを馬小屋に戻して出た時には、(いつまでこんな状態が続くんだろう)と知っているはずなのにふとそう思ってしまったのだった······。

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