第170話 休日~編成会議~
レックスやメリッサと別れた後アッシュは騎士団本部に戻り、武闘部隊の編成会議を行う部屋に向かった。
部屋に入ると既にブライ教官が座っていた。「ああ教官。もう来てたんですか?」「おおアッシュ。特にやる事もなかったからなぁ」「そうですか」と言ってアッシュも席に座った。
「しかし昨日のお前さんとレックスの対決は相当あちこちで話題になっとるぞ」「そうなんですか?」「団長はじめ全隊長と教官が私に状況を聞いてきたぐらいだったからなぁ」「ぜ、全員がですか?」「あぁ。特に各隊長はレックスを面接試験の時一度見ていてお前の事もよく知っているだけに、そのお前を倒したと聞いてとても驚いておったわい」「ハハハッ。まぁそうなるでしょうね」「全く」と言ったところでパーシバル団長が入って来た。
「何盛り上がってるんだ?」「あぁ団長」「昨日のコイツらの対決の事でお前さん達が驚いておった事でだよ」
「あぁその事か。本当に最初にブライさんから聞いた時は驚いたが、何となく私はやっぱりかと思ったがね」「どうしてですか?」
「去年北東部の高山地帯にあった坑道内でのフレイムリザードの件覚えているか? 奴を倒したのはレックス君だろ?」「えっ? ええ。そうですが、どうして分かったんですか?」
「君達の姿を見てアッシュの方はボロボロだったのに対し、レックス君の方はそれほどではなかったから、恐らく少なくとも途中からはレックス君が主体となって戦ったんだと思ったし、この訓練中も色々驚く事をやっていたからね、彼は」「そういう事でしたか」
「まぁ取り敢えず揃ったところで始めますか、"編成会議"を」とブライ教官が言って編成会議が始まった。
「まずレックスは文句なく第1小隊ですな。全ての面で非の打ち所が無いでしょうから」「ですね」「ああ、そうだな」とレックスに関してはあっさり決まった。
「あともう一人、彼も第1小隊で決まりでしょう」とブライ教官はデビットの資料を提示した。
「今回の中で唯一鞭をメインで、しかも前々から扱っているみたいですし、試験終了後の組手大会も決勝まで残ったのですから。十分戦力になるでしょう」「確かに。レックス君が接近タイプなら、デビット君はメインが鞭でサブが槍だけに遠距離タイプだから、どんな状況下でも二人で対応出来るだろう」「確かにそうですね」こちらもすんなり決まった。
「後は······彼はどうでしょう? こちらもメインでボウガンを選んだのは珍しい事でしたが上手く扱えれていますし、サブの小剣も使いこなせてボウガンとの使い分けも上手く出来ていましたし」ブライ教官はジャックの資料を提示した。
アッシュは一瞬押し黙ったが、騎士団全体の事を考え「そうですね」とブライ教官に同意した。パーシバル団長も異論は無かったので決まった。
「第1小隊は残りあと1枠かぁ。どうします?」とパーシバル団長がブライ教官に尋ねた。
「うーん、このメンバーで足りない部分といえば······パワータイプですな」「パワータイプ······」とアッシュが呟いた。
「ああ。レックスはメインが爪でサブが短剣。デビットはメインが鞭でサブが槍。そしてジャックはメインがボウガンでサブが小剣ですから。本格的なパワータイプの武器を扱う者がいないからなぁ」「確かにそうですね」とアッシュも同意した。
そして残りの中からパワータイプの武器を扱う者を探していて、アッシュが「彼はどうでしょう?」とライアンの資料を提示した。
「斧がメインですしサブが槍ですから、他の3人の武器を考慮してもバランスが取れるのではないでしょうか?」「そうだな。しかもライアンに教えた槍のスキルは防御にも使えるから、よりバランスも良くなるだろうな」「では、決まりだな」こうして第1小隊のメンバーは決まった。
そして「では次に第2小隊は······」残りの小隊メンバーも次々決定していった。
「小隊メンバーはこれで決まりだな」「ああ」「そうですね」全ての団員の小隊分けは終わった。
「後はそれぞれの小隊長を誰にするかだな」「「はい」」とパーシバル団長が言った事にアッシュとブライ教官は賛同した。
「で、それぞれ誰が適任だと思うかね? アッシュ」とパーシバル団長はアッシュに意見を求めた。
「やはり今の小隊順で、その中でもまた実力順に配属させていくべきでしょう」「そうだな。それじゃあ第1小隊には······」とこちらも次々決定していった。
「良し! これで決まりだな」「ええ」「だな」「後の各先輩団員への連絡は君に任せるよ、アッシュ」「分かりました」と言ったところで会議は終わり、パーシバル団長とブライ教官は部屋を出て行った。
残ったアッシュは第1小隊のメンバーリストを見て(まっ、しょうがねぇか。悪く思うなよ、レックス)と思ったのだった······。
夕方、メリッサとのお出掛けから帰って来たレックスは、アッシュから第1小隊に配属となった事を伝えられた。
「そっか」「まぁお前の場合は当然の結果だろうがな」「そうだね。けど、今日で兄ちゃんとも離れるって事だね」
「離れるって言っても食堂や風呂で一緒になる事だってあるんだし、任務で一緒になる事も大いにあるだろうからよ」「ハハッ、そうだね。それにしても」「ん?」
「もう騎士団に入団して1ヶ月経つんだよね?」「あぁ、そうだな」「その分、魔王軍との決戦の日も近付いたんだよね?」
「レックス」「これからの任務も、それに向けての実践訓練のつもりで当たらないとね」「······ああ。そうだな」兄ちゃんも僕の意見に同意してくれた。
そう、運命の魔王軍との決戦の日まで、あと約5ヶ月。