第147話 報告と相談
孤児院でのクリスマスパーティーの夜、僕はジェシーと恋人同士になった。
だからと言って毎日会ったりデートをするような付き合いはなく、あれから2回 (2日)ほど一緒に孤児院を訪れて子供達と遊んだり、どさくさに紛れてお姉ちゃんの授業を聞いたりして過ごした程度であった。
その時お姉ちゃんに恋人同士になった事を報告したら、笑顔でひと言「おめでとう」と言っただけで済ましてくれた。
他の日はお互い1人もしくは他の人達と過ごしてきた休暇の最終日。僕は部屋で以前村へ帰省した際に父さんから言われた事を思い返してからある考えを持ち始め、その事の相談と3つの物を手に入れられた報告をするためハウル様の所へ伺おうと移動の羽を持って寄宿舎の外に出た。
ちょうどその時、「レックスー!」ジェシーが駆け寄って来た。
「ジェシー。どうしたの?」「休暇の最終日だからレックスに会っておきたいと思って。レックスこそどこかに行くつもりだったの?」
「うん。良かったら一緒に行かない?」「行っても良いの?」「ちょうどジェシーの事も紹介しようと思っていたから」「紹介って、誰に?」「僕の子供時代からの師匠とも言える人にだよ」と言って2人でハウル様の所へ向かった。
ハウル様の家に着いて「ハウル様、お久しぶりです」と声を掛け「おお、レックス。本当に久しぶりじゃのぉ」と言って家から出てこられた。
ハウル様とは運命の洞窟を訪れ、真ん中の男がマーシュからジャックに変わった事を伝えた時以来だから、本当に久しぶりの再会だった。
「今日はどうしたんじゃ?」「色々報告と相談をしたくて」「まぁ取り敢えず中に入るが良い」と言われて皆で家の中に入った。
「さて、まずはそちらのお嬢さんの紹介をしたらどうじゃ?」とハウル様に言われたので僕からジェシーの事を僕の彼女だと紹介し、改めてジェシー自身がサンドリア王の第2王女と自己紹介したら、ハウル様も見知っていた感じで挨拶を交わした。
「それで、本題は何しに来たのじゃ?」と促されたので、水晶玉に映された3つの物を手に入れられた事を伝え、その入手経緯を説明した。その際、自分の傷の事も関わっていた事を知ってジェシーも驚いていた。
「そうか。もう全て手に入ったのか」「はい。ただどれもまだ何に使うのかが分かっていない状態何です。それで、ハウル様にある事を相談したくて来た次第です」「相談したい事?」
「はい。それは、少なくとも海人族の国王様とフィンラル様のお二人だけには僕の正体やその原因となった経緯などをお話しした上で、協力を仰ぐべきだと思いまして」「お主がタイムリターナーとなった経緯をか? しかしそれは······」
「はい。初代様からもあまり人に話すべきではないと言われていまして、これまでも兄ちゃんに父さん、アリスにお姉ちゃん、そしてジェシーにしか話してきませんでした。ただ、2年の夏季休暇に村へ帰省した時、父さんに言われた事があるんです」「何をじゃ?」
「『本当に喋っても大丈夫かと真剣に考え、大丈夫だと判断出来たら迷わず喋った方がお前のためにもなる事になるんじゃないか』と。実際、僕も特にお姉ちゃんに喋った事は間違ったとは思っていませんし、父さんも母さんとレオおじさんに喋ったみたいなんですが、2人とも他の人には喋っていないので間違ったとは言えないと思うんです」「うーむ、確かにのぉ」
「その上で3つの物の1つずつが海人族とエルフ族に関わっている物のように思えますので、少なくともお二人にはお話しをし、その上で何に使うのかを早く判明させるためにも協力を仰いだほうが良いと思ったのです」
「なるほど。そこまで考えて提案したというのじゃな?」「はい」そこまでの僕の考えを聞いた上でハウル様も、「ならば、儂からは何も言う必要はもう無かろう」「では?」「うむ。早速2人の所に行くとしよう」「はい!」
そうして僕達はまず海人族の国王様に会いに向かった······。