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第136話 悩み

 次の中間発表会の後、マックス先生の下を訪れ月1の報告を行った。


「どうやらやりたい事を見つけることが出来たようだな。これだけの捜索系クエストを完了させているのだから」「はい! 夏季休暇中に何とか見つける事が出来ました」「まぁこれなら特に言う事も無いだろう。この調子で今後も頑張りたまえ」「はい!」マックス先生から特に何も言われなくて良かった。


「ところでレックス。1つ聞いて良いかね?」「はい、何でしょう?」「最近魔法科のジェシー君に会っているかね?」突然マックス先生からジェシーとの事を尋ねられた。


(ジェシーと? そういえば······)「いえ、今学期に入ってからは一度もまだ会ってはいませんが」「そうか。いや実は彼女の実技担当の先生から、どうも彼女が最近何か悩みを抱えているようだと相談を受けてな」


「ジェシーが?」「ああ。クエストは普通にこなしているし、発表会も特に変な様子は無かったと教科担当の先生も仰ってた様なんだが、自分への報告の際のこちらからの問いかけへの返答がぎこちなかったり、何か心に不安や焦りを抱えているようだと仰ってな。それで夏季休暇中ずっと一緒にいた君に心当たりが無いか聞いておいて欲しいと言われてな」


 ······先生達にもバレてたのね。でも、「本当にこれと言って特に気になる事はありませんでした」「そうか。まぁ彼女に会う事があればそれとなく聞いてみてくれ」「分かりました」と言ってマックス先生の下を離れた。


 そしてベアーズのスペースに向かいながら(ジェシーどうしちゃったんだろう? 何か悩んでいるんだったら相談に乗るのに)と考えていた。



 ベアーズのスペースに着いても考え込んだ顔をしたままだったので、ベアーズは不思議がった。


 そして僕が一向に声を掛けなかったので「ガア! ガア! ······ガア! ガア!」と僕に何度も吠えてきた。


 そこでようやく僕も「あぁごめん、ベアーズ。ちょっとジェシーの事で考え事をしてて」と言ったら、ベアーズがなぜか思い切り興味を持ったような態度で僕を見つめ出した。


「ん? いやぁ実は、ジェシーが何か悩みを抱えているみたいなんだよ。それでマックス先生が僕に心当たりが無いか聞いてきたんだけど、特に無いんだよな。それで何を悩んでいるんだろうって考えてた······ん? ベアーズ?」そこまで言って改めてベアーズを見たら、ベアーズは表情を変えず、ずっと僕を見つめ続けていた。


「どうした?」と聞いたが何も反応せず、暫く沈黙の時間が続いた。その後僕から「ひょっとして、ジェシーの所に行きたいのか?」と聞いたら、すぐ首を縦に何回も振った。


「そんなにも行きたいのか。······分かったよ。ジェシーの所に行って彼女の役に立ってきな」と言い終わった途端にピョン!「うわぁっ!」目の前の柵に登ってから飛んで僕の顔の近くを通り過ぎてそのまま走り去って行ったのだった。


 驚いて尻餅をついたままベアーズの走り去った方を見て「そ、そこまで行きたかったのかお前は! 全く。ハァ」ため息をついて呆れつつ、立ち上がったところで(ジェシーの事頼んだよ、ベアーズ)と心の中でベアーズに頼んだのだ。


 そこでふと「あれ? ところであいつ、今ジェシーがどこにいるのか知ってんのか?」という疑問が湧いた······。



 その頃、当のジェシーはあるクエストの完了報告を終えてギルドから出て来たところだった。


 しかし、「······はぁ」完了したにも関わらずその表情は暗く、ため息までつく始末だった。


(やっぱり今回のも······)そう思いながら今日はもう寄宿舎で休もうと帰路に着きかけた。


 その時前方からタッタッタッタッとこちらに向かってくるベアーズを見て「ベアーズ!」と思わず叫んだのだった。


 そのベアーズも優しくジェシーの胸に飛び込み、ジェシーがそれを受け止めた。


「どうしたの? ベアーズ。レックスは?」とベアーズに語り掛けた後、レックスがいないか辺りを見渡したが、レックスの姿は無かった。


「ひょっとして、ひとりで来たの?」と聞かれ、ベアーズは首を縦に振った。


「そうなの。でもどうし······」と言い掛けてハッとある事が浮かび、「ひょっとして、レックスに私が悩みを抱えているって事が知られたの?」と聞いたらまた首を縦に振った。


「そっか。それでレックスに言われて来てくれたんだ」と尋ねたら何の反応も示さなかった。


「違うの? なら、自分の意思で来てくれたの?」と尋ねると今度は首を傾げたのだった。


 それらの反応を見て、「じゃあレックスに言われたんだけど、自分でも行きたいと思ったから来てくれたの?」と尋ねたら数回首を縦に振った。


「ベアーズ」その反応を見て穏やかな表情になり、ベアーズを抱き締め「ありがとう」と言いながら頭を撫でた。


 そして今日はもう寄宿舎へ帰るつもりでいたのを忘れ、「じゃあ、今からクエストに行こっか」と尋ね、ベアーズも首を縦に振ったので再びギルドに入った。


 そしてクエストボードに貼られたクエストから、ベアーズが触って選んだクエストを取って受付に提出しに行ったのだった······。

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