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第118話 孤児院へ

 ある日の休日、「そっち行ったぞ、コリー!」「分かった! レックス兄!」「ピエールは反対から回り込め!」「分かりました!」「ベアーズ!」サササササッ!(はもう動いてるか)「よし!」


 学校に届いたある頼み事をピエールと、今年入学した孤児院出身のコリーと共に行っている最中だった。その頼み事とは、ある"ペット"の捕獲だった······。


「このまま徐々に追い詰めて行くぞ!」「うん!」「はい!」「ガウ!」僕の指示に全員が応えた。


 言葉通り追い詰めて全員の顔が見渡せるまで来たところで、「せぇーのっ!」一斉に飛びかかり······見事依頼対象の猿である"ファンキーモンキー"を捕獲出来た。


「捕まえた!」「よっしゃあ!」「やりましたね!」「ったく、毎度毎度手こずらせやがって」そう、この逃げたファンキーモンキーの捕獲依頼は過去にも何度か掲示されて、僕ら(これまでは兄ちゃんらと)が実施していたのであった。



「奥さん、捕まえてきましたよ」と依頼を出した奥方にファンキーモンキーを差し出した。


「まぁいつもいつもありがとう!」と言ってファンキーモンキーを受け取りつつ報酬を渡してくれた。


「もう、逃がさないで下さいよぉ」「ちゃんと気を付けているんだけどねぇ。けど、もしまた逃げちゃったりしたらその時は()()よろしくねぇ」と言って家の中に戻った。


「······もう二度と御免被りたいです」「ハハハッ」「ですね」とそれぞれ言葉を溢して家の前を離れた。


「けど良いじゃんかレックス兄。こんなにも報酬くれるんだからまた受けたって」「お前な、同じ依頼を4回も受けててもそう言えるか?」「······え゛っ?」「そんなにあの依頼受けてたんですか?」「そうだよ」「「······」」それを聞いて2人とも黙ってしまった。


「ま、まぁ取り敢えずさぁ。さっさとこれら神父様に届けに行こうよ」とこれまで受けて得られた報酬も出して見せた。


「そうだな」「じゃあ僕はここで」「ああ。今日はありがうとな、ピエール」「いえ。それじゃあ」ピエールとそこで別れた。



 そしてコリーと孤児院へ向かっていたら「レックス!」偶然ジェシーと遭遇した。


「ああジェシー。ギルドに行ってたの?」「ええそうよ。レックスはこれから?」と聞いてきた。確かにギルドと孤児院は同じ方向の近くにあるからそう思うか。


「いや孤児院に行くところなんだよ」「孤児院へ? どうして?」「頼み事で貯めた報酬を寄付しに行くためにさ」と僕が言ってコリーが報酬をジェシーに見せた。


「寄付って、そんな事もしてたの?」「あぁ。去年からね」「そうだったんだ。······ねぇ、私も行っても良いかしら?」「うん。もちろんだよ」とジェシーも一緒に孤児院へ行く事になった。



 そして孤児院が見え、広場に皆が見えたところで、「おーーーい、皆ぁ!」コリーが呼び掛けた。


 その声に皆が気付いて「あ、コリーだ!」「お兄ちゃんも一緒だー!!」などと叫び、コリーは報酬を僕に渡して駆けて行った。


 その声を聞いてジニー神父様も教会から出てこられた。僕とジェシーは神父様の下に向かった。


「こんにちは神父様」「いらっしゃいレックス君。相変わらずコリーの声は元気ですね」「ハハハッ、そうですね。はい、こちら」と報酬を渡した。


「いつもありがとう。ところで、そちらのお嬢さんは?」と神父様が尋ねてきたので、「同学年のジェシーです」と僕が紹介した。


 すると神父様は「そうですか。初めましてジェシーさん。この教会の神父でジニーと申します」「初めまして、ジェシーです」とそれぞれ挨拶を交わした。


 とその時ツンッ! ツンッ! 「ねぇねぇ、お兄ちゃん」子供らの一部が近くに来て僕に話し掛けてきた。


「ん?」と反応したらジェシーを指し「新しい彼女?」と聞いてきたので、ドテッ! と倒れた。


「(やっぱりそうなんだ)」「(もうアリスお姉ちゃんとは赤の他人になったんだ)」などとコソコソと話し出した。


「お前らなー!!」と僕が怒っても誰も怖がらず、そんな僕を無視して「ねぇねぇお姉ちゃん、遊ぼうよ」とジェシーに声を掛けた。


「え、でも······」「少しぐらいなら良いでしょ? ジェシー」「うん、じゃあ行こっか」「わーい!」と言ってジェシーと子供らは広場に行った。


 残った僕に神父様が「意外とごく普通のお方なのですね、ジェシー()()様は」と仰られた。


「ご存知だったんですね、神父様は」「えぇ、少し前に国王様らとご一緒にいらっしゃった姿を見たことがありましたので」


「そうですか。でも、僕らと同じ養成学校の生徒の1人である事には違いありませんから」「······そうですね。子供達にとってもレックス君の知り合いのお姉さんの1人という認識でしょうから」と言ってジェシーや子供らを見ていた。



 すると僕に対し「あら、レックス君?」と声を掛けてきた女性がいた。僕が声のした方を見たら、「ああ、お姉ちゃん」メリッサさんがいた。


「久しぶりね。また寄付をしに?」「うん、そうだよ。お姉ちゃんは授業をしに?」「えぇ、そうよ」


 僕達の会話が聞こえた誰かが「あ、メリッサお姉ちゃんだー!」と言って今度はお姉ちゃんの下に駆けて来た。


「ねぇねぇ今日は何教えてくれるのー?」「勉強の後遊べるー?」などと質問していたので、「ハイハイ、取り敢えず教室に行きましょうね?」「「はーい!」」と子供達を教室へ向かわせた。


「じゃあね」「うん」と言ってお姉ちゃんと別れた。


 するとジェシーが「レックス、彼女は?」と尋ねてきたので、「僕達の1つ上の先輩だったメリッサ・ローテンさんだよ」とお姉ちゃんの事を説明した。


「メリッサ・ローテン? ローテン······あっ!」「うん。ローテン家のお嬢様だよ」「そうだった。何度かパーティ会場とかでお会いした事があったわ。でも、そんなお方が何で孤児院の子供達に授業を?」「それは······」



 寄宿舎へ帰りながらジェシーにお姉ちゃんとの出会いや関係、孤児院との関わり合いになった経緯と、お姉ちゃんが授業を行い出した理由などを説明した。


「そっかぁ。そんな事情があったんだ」「うん。だから今も頼み事を引き受けて寄付をしているし、お姉ちゃんも皆に授業を続けてるんだ。それに、その事が理由でコリーも養成学校へ通いたいって言い出したって神父様が仰ってたし」


「凄いなぁレックスもメリッサさんも。それに話に出てきたアッシュさんやアリスちゃんも。そんな事をしていたなんて、お城にいたのに気付いてないんだから」とジェシーは落ち込んでしまった。


「そんな事ばかりじゃない世の中って。それより、知ったところでどうするべきかを考えていけば良いだけじゃない?」とジェシーに言って「そうね!」ジェシーも明るく返答したのだった。


 それからはジェシーも度々僕と一緒に孤児院を訪れ、特に子供達とよく遊ぶようになったのだった······。

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