7話 査定結果がとんでもなかった
男性職員は素材を一つずつ、真剣な表情で査定していく。
一つ終わるたびに紙に何かを記入していき、30分ほどで全ての素材の査定が終了した。
「ふぅ~、久しぶりにこんな上質な素材を査定したぜ」
「お疲れ様です。それでいくらぐらいになりましたか?」
「ああ、全部で250万ゴールドだな」
「に、にひゃっ!?」
「た、たっけぇ!!」
俺とラウルはあまりの査定額に驚愕した。
まさかそんなにするとは思いもしなかった。
「いやー、【アイテムボックス】に保管されていただけあって、品質はバッチリだったぜ」
男性職員は、満足げにそう言うと、査定のときに記入していた紙をこちらに手渡した。
紙には素材ごとの査定結果が記入されていた。
[竜眼] 10万ゴールド
[火竜の鱗] 30万ゴールド
[火竜の爪] 33万ゴールド
[火竜の牙] 35万ゴールド
[火竜の尻尾] 50万ゴールド
[子鬼将軍の腰巻き] 17万ゴールド
[子鬼将軍の皮] 15万ゴールド
[黒曜熊の爪] 20万ゴールド
[黒曜熊の牙] 20万ゴールド
[黒曜熊の皮] 20万ゴールド
「こんな値段で買い取ってもらえるのか……」
俺は口をポカーンと開けながら言った。
その様子を見たラウルも俺に寄ってきて、紙を見た。
「おぉ……こりゃすげえな……。こんな査定結果見たことねえよ……」
「そりゃそうだ。この街の冒険者に、これだけの大物を仕留めろっていうのは酷な話だよ。だからこういう機会でなきゃ、こんな心の躍る査定は中々出来ねェんだ」
男性職員はそう言って、言葉を続ける。
「金は、その紙を受付に持っていて、あっちで貰ってくれ。ここじゃ金の用意は無いからな」
「わ、分かりました」
戸惑いながら応えた。
こんな大金いきなり手に入るとか……あんまり現実味がない話だな。
それに【アイテムボックス】の中身はまだまだ大量にある。
そいつらを売っていけば、当分金には困らないってことか……。
「それにしてもこんな素材どこで手に入れたんだ? 倒したって訳ないよな?」
男性職員は興味深そうに聞いてきた。
前世に倒しました、なんて言っても信じるはずがないだろうな……。
「実家を追い出されたとき、これを売って金にしろって貰ったんです」
「なるほど……複雑な家庭事情がありそうだ。深くは聞かないでおこう」
「助かります」
詳しいことを聞かれるとボロが出そうだから、男性職員の気遣いは本当に助かった。
そして俺とラウルは受付嬢に案内された道を引き返した。
「……お前、色々と苦労してんだな」
ラウルは切なそうな表情で言った。
「そうでもないよ。今となっては実家から追い出された方が良かったって思うしさ」
「ハハ、つええんだな」
「んー、そうかな?」
「ああ、前向きになれるのも強さの一つだからな」
「そういうもんか?」
「そういうもんだ。ほら、受付に着いたぜ」
受付では先ほど冒険者の列があったのに、今は誰も並んでいない。
「お、冒険者達は依頼を済ませに出かけているみたいだな。また並ばなくて済むぜ」
ラウルが言った。
なるほど、先ほどは冒険者達が依頼を受けるための列だったようだ。
受付嬢も一段落着いたって雰囲気だ。
「すみませーん、素材の査定が終わりましたー」
案内してくれた受付嬢に声をかけた。
「あ、それでは、査定結果の書かれた紙をお渡ししてもらえますか?」
「どうぞ」
俺は受付嬢に先ほど貰った紙を渡した。
「エーーーッ!? にひゃっ!?」
受付嬢は大きな声を出した後に、自らの右手で口を塞いだ。
そして、申し訳なさそうに何度も頭を下げた。
「……取り乱してしまい、申し訳ございません」
「いえいえ、大丈夫ですよ。さっき俺たちもそんな反応でしたから」
「……すみません、ありがとうございます。それではこちらの金額を今ご用意するので、あちらの椅子に座ってしばらくお待ちください」
「分かりましたー」
というわけで椅子に座る俺とラウル。
しかし、ラウルはなんだか静かだ。
「どうしたんだ? ラウル」
「……いや、ちょっとな」
明らかにラウルの様子がおかしかった。
すると、俺たちのもとに向かってくる足音がした。
気配がする方を向くと、3人組の冒険者がこちらに歩いてきていた。
歳は俺たちより上で、なんだか態度が偉そうだ。
「よぉ、ラウル。今日は依頼を受けに行ってないみたいだな」
「そんなんで今日の分の冒険者料金は払えるんだろうな?」
「あ、ああ。もちろんだとも」
ラウルの声は少し震えていた。
それにしても冒険者料金ってなんだろうか。
あまり良い響きはしないな。
「で、そちらの方は新しい冒険者かな?」
「いえ、俺は……」
「違いますよ、こいつは冒険者じゃなくて、ギルドを利用しにきた依頼者なんです! 実は俺、このあとこの人からの依頼を受ける予定でして!」
ラウルが慌てて、俺の言葉を遮った。
「ほほう、依頼をねぇ……」
ラウルに疑惑の目線を向ける3人の冒険者達。
「アルマさーん! ご用意出来たので、受付までお越しください!」
「はーい!」
どうやらお金の用意が済んだようだ。
しかし、今行くのもラウルに悪いんじゃないかな? と思っていると、
「行ってこいよ。俺はちょっと用事が出来たから、また後でな」
「お、おう」
ラウルはそう言うと、立ち上がって3人の冒険者達とどこかに行ってしまった。
『── 俺もそれで色々苦労してんだよなぁ。だからお前が冒険者になるって言い出してたら必死に止めるところだったぜ』
その光景を見て、俺は最初にラウルと話したときの言葉を思い出した。
「アルマさーん!」
「あ、今行きまーす!」
受付嬢からお金を受け取ってから、少し動くとしよう。
……この嫌な予感が杞憂であればいいのだが。
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