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いざ王都へ

 国王様との謁見のため、フランドル領でもう1つ馬車が用意された。

 これから2台の馬車で王都まで向かうこととなる。

 俺たちの馬車を運転する御者はラウルが務めてくれるようだ。

「一応俺は冒険者以外にもそういった仕事はこなしてきたからな。問題なく御者の役割をこなせると思うぜ」

 ……とのこと。

 ラウルは自信があるようだし、任せて大丈夫だろう。

 馬車を運転するところを見せてもらったが、なかなか様になっていた。

 まぁ何かあったときは俺がなんとかすればいいだろう。

 それにこの3人で旅をするのは楽しかったから、少し楽しみだ。

 サーニャは「つまんない!」と不満そうだったが、仕方ない。

 目的は国王様との謁見であり、旅行というわけにはいかないのだ。

 出発する際には手の空いている領民が見送りに来てくれた。

「みんな無事に帰ってきてね! あとお土産も買ってきれくると嬉しいな〜、なんて」

「おいおい、旅行じゃないんだぜ? そんなもの買ってる暇とかあるのかよー」

 サーニャの言葉にラウルはそう返事をした。

「ラウルは暇そう」

 ルナの一言がラウルの胸にグサッと刺さった。

「ま、まぁ俺はただの御者だしな……」

「まぁラウルならお土産を買ってあげる時間は作れるかもな」

「アルマさん、それ本当ですか!?」

「たぶんね。確実ではないだろうけど」

「やったー! じゃあラウルさん、お土産よろしくお願いしますね」

「……へいへい。なんか買ってきておいてやるよ」

「ありがとうございますっ!」

 サーニャはとびきりの笑顔を浮かべた。

「アルマ君、頑張ってきてくれ。ただ、無理はしないようにね」

 エリックさんは少し心配そうな様子で言った。

「大丈夫です。安心してください」

「ああ、信頼しているよ。それから出来ればでいいんだけど、ルナのこともよろしく頼むよ」

「ええ、任せてください」

 俺がそう言うと、エリックさんは微笑んだ。

「お主ら、そろそろ王都に向かって出発するぞ」

 エドワード卿が言った。

 待たせるわけにはいかないので、もう行かなくてはならない。

「それじゃあ行ってきます!」

 そう言って、俺たち3人は馬車に乗り込んだ。

 領民達から見送られる中、俺たちは王都に向けて出発した。


 ◇


 ファーミリア王国、王都ヴィルヘミア。

 王都ヴィルヘミアは、エリステラ帝国、その他小国家群が存在するレイセント大陸の北西端に位置する。

 ヴィルヘミア最大の特徴は何と言ってもヴィルヘミア城の存在だろう。

 王都の中でも一番大きな建物であり、城下町には多くの民が華やかな生活を送っていた。

 ヴィルヘミアでは魔法の研究が盛んに行われており、魔法の発展と共にヴィルヘミアも発展していった。

 そして、ファーミリア王国が建国されたこともあり、この国と魔法は切っても切り離せない関係にある。

 馬車に揺られること4日、俺たちはついに王都ヴィルヘミアに到着した。

 立ち並ぶ建物の造りはヴィルヘミア建築と呼ばれる建築様式でまとめられており、重厚な統一感のある街並みが演出されていた。

 中でも朱色の鋭角の屋根が特徴的だろうか。

 フランドル領と比べると、文化の差は一目瞭然だった。

 ヴィルヘルミナ城内の厩舎に馬車を停めると、俺とルナはいよいよ国王様と謁見することになる。

「頑張れよ、俺は城下町にでも行ってお土産でも買ってるとするわ」

 ラウルは親指を立てて、笑顔でそう言った。

「羨ましい奴だな……。俺も王都を観光してみたかったな」

「謁見が終わった後、軽く見て回って帰ればいいんじゃねーか?」

「それもそうだな」

「ま、そういうわけで頑張ってきてくれよ。案外二人とも緊張していない様子で安心したぜ」

「ラウル、それは違う。私はかなり緊張してるから」

「全然緊張してなさそうなんだよ! お前は!」

 確かにルナは俺から見ても緊張していなさそうだった。

「見て、ほら」

 そう言ってルナは腕をまくった。

「鳥肌が立ってる」

「「おお、確かに……!」」

 俺とラウルは妙に納得してしまった。

 そうか、ルナも緊張しているんだな……。

 実を言うところ俺も緊張していた。

 国王様と謁見するというのは初めての経験だ。

 なにか粗相でも起こせば、とんでもないことになるのではないかという考えが頭をよぎる。

「何をやっておる。行くぞ、お主達。既に国王様と謁見する旨は決まっておるのだ」

 エドワード卿は急かすように言った。

「よし、それじゃあ行ってくるよ」

「おう。お土産は俺に任せとけ!」

「ラウル、センスのないもの買ってたら許さない……」

「こ、怖え……責任重大だな……」

「はは、期待してるよ。それじゃあ行こうか、ルナ」

「うん」

 厩舎から出て、ヴィルヘミナ城中央通路に出る。

 この長い階段を上っていき、大きな中央城門に到達。

 門番が門を開け、城内へ入っていく。

 大広間の中央には赤い絨毯が敷かれていた。

 赤い絨毯の上を歩き、エドワード卿の後をついていく。

 大広間の中央にある大きな階段を上り、城の2階へ。

 そしてしばらく廊下を歩き、エドワード卿が豪華な扉の前で立ち止まった。

「この扉の先に殿下がお待ちになっておる。くれぐれも無礼のないようにな」

「分かりました」

そう返事をすると、エドワード卿は俺達の返事に満足したように頷いた。

「ふぅ……」

 深呼吸をしてから俺は王の間の扉を開けた。


【重要なお知らせ】


『その無能、実は世界最強の魔法使い』の《コミカライズ》がスタートしました!


掲載先は【ヤンマガWEB】です!


漫画は三川彡先生が担当してくれています!


なろう系ならではのテンポの良さを存分に楽しめる内容になっています。

本作を好んで読んでくれている方なら気に入ること間違いなしです!


金曜更新の隔週連載みたいなので、是非ヤンマガWEB内でお気に入り登録して更新をチェックしてみてください!


是非【ヤンマガWEB】で本作品のコミカライズを楽しんでいただければなと思います!


引き続き応援よろしくお願いします~!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ラウルが王の間の扉、自分で開けたみたいですが… 普通の城ならば、 扉の両サイドに衛兵が居て押し開きませんか?
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