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エドワード卿

 そして、4日後。

 今日、フランドル領にエドワード卿が視察にやってくる。

 俺は今、フランドル領から一番近い都市──レトナークに来ていた。

 領地からレトナークに移動するには徒歩で2日かかる。

 俺はその移動時間を1時間に短縮することが出来るので、俺がエドワード卿の案内係に抜擢された。

 エドワード卿はレトナークで一泊しているため、宿屋に向かう。

 宿屋の前で馬車が待ち構えていた。

「フランドル領まで案内人を努めさせていただくアルマです。こちらはエドワード卿の馬車でよろしかったでしょうか?

 俺は御者にそう尋ねてみた。

 すると、馬車が開き、二人の男性が出てきた。

「うむ。私がエドワード卿だ。フランドル領の案内人は君かね?」

 少し小太りで鼻の下に長い髭をはやしていた。

「はい、そうです」

「ふむ、そうか。では乗りたまえ。フランドル領まで案内するがよい」

「よろしくお願いいたします」

 俺はそのまま馬車に乗り、フランドル領まで案内した。

 馬車の中にはエドワード卿以外にもう一人男性が乗っていた。

 彼が護衛役を務める者だろう。

 鑑定してみると、セドリックという名前でステータスは大体2000ぐらいだった。

 なかなかの実力者のようだ。

 とりあえず、この人の側からあんまり離れないようにしないとな。

 もしウチの魔物が襲われたときは守ってあげないといけないから。

 馬車は森に入っていき、何事もなく進んでいく。

「魔物が何も襲ってこないな」

 エドワード卿が呟いた。

「この辺りの魔物は温厚なのが多いですから!」

 ここで俺は魔物の安全性をアピールした。

「臆病な魔物が多いのかもしれません」

 護衛のセドリックは言った。

 低い声だった。

「そうだとしても周囲への警戒は怠るなよ」

「はい。もちろんです」

 うーん、効果は薄そうだな……。

 やはり徐々に魔物への抵抗感をなくしていくしかなさそうだ。

 作戦通りいくとしよう。


 ◇


 結局、フランドル領につくまで魔物は現れなかった。

「ふむ。珍しいこともあるもんだ」

「ええ、少し不気味ですね」

 エドワード卿とセドリックは不思議そうにしていた。

 ここまでは計画通りだ。

 不思議に思ってもらうことで後の説明で説得力が増す。

 領内を馬車で移動し、お昼頃、屋敷に馬車が到着する。

「エドワード卿、遠方から遥々フランドル領にお越しいただきありがとうございます」

「うむ。視察であるからな。お主らのおもてなしを期待しておるぞ」

「はい。お任せください」

「まずは食事にしよう。腹が減った」

「承知しました。既に出来上がっていますので、まずは食事にしましょうか」

「用意周到ではないか。早速、召し上がらせてくれたまえ」

 そして、エドワード卿が昼食を食べている最中に作戦は開始する。

 作戦の内容はこうだ。

 まず、エリックさんがエドワード卿に領内で魔物を活用していることを説明する。

 そこで不信感を抱くのは避けられない。

 だから、魔物に安全であること、命令を忠実に聞くこと、それをアピールするためにパフォーマンスをしてもらう。

 この領地で認めてもらったときと一緒だ。

 魔物の有用性を理解してくれれば、領内の仕事を手伝っていても道理にかなっている。

 そしてエリックさんが説明をし、一通り内容を聞いたエドワード卿は両腕を組んだ。

「ふん……魔物か。安全性は間違いないのか? もしもの時があってからは遅いのではないのか?」

「安全性については、人間でも魔物でも100%の安全を保証することは出来ません。互いに信頼しなければ、みんなが手を取り合って仕事をするなんて不可能ですから」

「魔物と人間を一緒にするな。人間には知性や理性がある。魔物にはそれがない。単純な話だ」

「えぇ、では魔物に知性がないのかご覧になってもらいましょう」

 エリックさんがそう言うと、5匹のスライムを連れたサーニャがやってきた。

「スライムさん、食べた食器を片付けて!」

 サーニャがスライムに指示を出すと、ぷよぷよと身体を動かし始めた。

 5匹のスライムは互いに乗り合い、机の上の食器を運んで行った。

「どうでしょう? 他の魔物もこのスライムと同じレベルで指示を聞いてくれます。人間の言葉を完全に理解しているのです」

「確かに凄いが、訓練をすればある程度のことは出来るようになる。だが、それは専門家だけの話に決まっておろう。これだけでは到底、安全だと判断することは出来んなぁ」

 ごもっともな意見だった。

「それでは後ほど、実際に魔物と一緒に作業をしている様子をご覧になってもらいましょうか」

「先ほど領内を見たときは魔物などいなかったと思うが?」

「エドワード卿が驚かれると思ったので、一度説明するまでは魔物抜きで作業させてもらっていたんです」

「なるほどな。魔物と作業をしているというのは個人的に興味深いことである。しかし、何か問題を起こしたらその魔物共は全員このセドリックに討伐されると思いたまえ」

 エドワード卿はセドリックの肩にぽん、と手を置いた。

「任せてください。そのときは全員仕留めてみせましょう」

 使役した魔物達が人間を襲うことはないから大丈夫だ。

 問題があるとすれば、使役していない魔物が危害を加えることだ。

 だが、使役した魔物には首輪がつけてあるので間違えることはなさそうだと思っている。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 素朴な疑問なのですが卿って自分が名乗るときにもつけて大丈夫です? なんとな~く他者から呼ばれるときにしか使われないような… いや、分からないですけれど
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