胸の高鳴り
【重版のお知らせ】
『その無能、実は世界最強の魔法使い』の1巻が売れ行き好調につき、重版しました!
みなさんの応援のおかげです!
ありがとうございます!
コミカライズもヤンマガWEBにて始まっているので、そちらも是非!
目が覚めると、ベッドの上だった。
「あ、起きた」
ルナがベッドの横の椅子に座っていた。
「ルナ……なんで俺はベッドの上で寝てるの?」
「前に会ったフェンリルが領地まで運んできてくれて、そこからはラウルがここまで運んでくれた」
「フェルナートとラウルが運んでくれたのか……」
「フェルナート……?」
「俺がつけたフェンリルの名前だよ。領民のみんなは驚いていなかった?」
「すごく驚いていた」
「だよな……」
フェンリルが領地にやってきては驚くに決まっている。
俺は以前、オスカルさんにフェンリルと会ったことを話したことを思い出した。
本当だと信じていなかったことから、領民達にとってフェンリルという存在は信じようにも信じられない存在なのだ。
「大丈夫?」
領民達のことを考えていると、ルナが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
目が合って、なんだか恥ずかしくなった。
ルナの顔をこれだけ間近で見たのは初めてだった。
まつ毛が長くて、瞳が大きい。
「ああ、大丈夫。ちょっと魔力が枯渇気味になっただけだよ。それで意識を失っちゃったんだ」
「……全然大丈夫じゃない」
「もう全快したから平気だよ」
「ううん、アルマは最近働きすぎている。安静にしていて」
「大丈夫だって、心配しすぎだよ」
ベッドから起き上がろうとすると、ルナは俺の前に腕を伸ばして、制止した。
「ダメ」
ルナは一歩も譲らない様子だった。
そんなに働いているだろうか。
前世では一ヶ月魔法を酷使して、戦ったりしていたからあんまり働きすぎているようには思えない。
たぶんこの感覚がおかしいだけだろう。
それにしても魔力が枯渇して倒れるとは恥ずかしい限りだな。
前世の俺が知ったら悲しみそうだ。
「……大丈夫だってことをどうしたら信じてくれるんだ?」
「大丈夫かどうかの問題じゃない。アルマに休んでもらいたいからこうしているだけ」
「気を遣ってくれるのは嬉しいんだけど、ここでジッとしているのも退屈だよ」
「まだ運ばれてきてから2時間しか経っていない。もう魔力が回復しているなんてありえない」
「へぇ〜、やっぱりルナは魔法について詳しいんだね」
魔力が枯渇状態から回復するまで普通は約1日かかる。
魔力の自然回復の早さは1時間に全体の5%ほどだ。
僅かにしか魔力は回復していかないため、どうしても時間がかかってしまうのだ。
「魔力が枯渇したなら今やっと少し楽になってきた程度のはず。まだ寝ているべき」
「大丈夫。俺の魔力の回復速度は10倍だから」
「えっ?」
「回復を速めるために俺は仮想的に自分の魔力量を10倍にしているんだ」
「どういうこと……?」
「魔力が回復する仕組みは変えられないから、総量を増やしているように見せかけているんだ。だからもう魔力は全快だよ」
「そんなことって出来るの?」
「出来るよ。【アイテムボックス】の原理と似ているね。難しい割に魔力が回復する速度ぐらいしか恩恵が得られないけどな」
「相変わらずめちゃくちゃなことしてる」
「だから俺とルナだけの秘密にしておいてくれると助かる」
まあどっちみち、みんな理解すること自体難しいだろうな。
「うん。分かった。私たちだけの秘密」
「ああ」
そう言って微笑むルナに俺は内心、少し照れていた。
ルナは、俺が本当に何の異常もないことを分かってくれたので一緒に屋敷の外へ出ることになった。
高台から領地を見渡して、ある異変に気づいた。
ま、魔物が野菜の収穫を手伝っている!?
先ほど二つ名を付与した魔物達のようだが、何故こんなことに……?
俺が意識を失っていた2時間で一体何があったんだ。
「あ、あれ? 魔物が野菜の収穫を手伝ってないか?」
「そういえば、フェンリルと一緒に沢山の魔物が付いてきていた。みんな大人しくて賢かったから、お父さんがせっかくなら手伝ってもらおうって」
「エリックさんもなかなか大胆なことをするなぁ……」
「それだけアルマが信用されてきたってことじゃない?」
「だと嬉しいけどな」
「きっとそうだよ」
ルナは優しく微笑んだ。
その笑顔を見て、俺は一瞬胸が高鳴ったように感じた。
【重要なお知らせ】
『その無能、実は世界最強の魔法使い』の《コミカライズ》がスタートしました!
掲載先は【ヤンマガWEB】です!
漫画は三川彡先生が担当してくれています!
なろう系ならではのテンポの良さを存分に楽しめる内容になっています。
本作を好んで読んでくれている方なら気に入ること間違いなしです!
金曜更新の隔週連載みたいなので、是非ヤンマガWEB内でお気に入り登録して更新をチェックしてみてください!
是非【ヤンマガWEB】で本作品のコミカライズを楽しんでいただければなと思います!
引き続き応援よろしくお願いします~!




