34話 大豊作
「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?」
翌日、俺はラウルの叫び声で目を覚ました。
外に出てみると、畑に植えられた野菜達が一斉に収穫可能レベルにまで成長していた。
ルナ達が住む家は高台の上に建てられていて、畑を一望できるようになっているため、非常に畑の変化が分かりやすい。
昨日はまだ発芽していたぐらいだったことを考えると、驚きの成長速度である。
「凄すぎるだろ! まさか本当にこうなるとは思わねぇよ普通!」
「いやぁ、昨晩は俺もビックリしたよ。まさか予想で当てられるとは思わなかった」
「俺も当たってるなんて夢にも思わなかったわ……」
「なに騒いでるの……」
パジャマ姿のルナが眠い目を擦りながら外に出てきた。
「早朝で悪いんだけどさ、これ見たら騒ぎたくもなるって! ほら、見てみろよ!」
ルナは、ゆっくりと瞼を開けていった。
「……すごい」
ルナは声を発するまで、口をポカーンと開けたままになっていたので驚き具合が見て取れる。
「だろ? アルマが取り出した肥料ヤバすぎだろマジで!」
「うん……。これなら食糧の確保にもかなり役立つ」
「だよなだよな! 本当に解決しちまったよ!」
「二人とも、まだ気が早いよ。作物の種もとっておきのものがあるんだからさ」
作物の種を変えることによって、収穫量も変わるし、品質も変わる。
俺の持っているものは、今までの比にならないだろう。
「アルマって本当に何者だよ!」
……転生者です、なんて言えるはずもないので俺は笑って誤魔化した。
◇
領民達も起き出す時間になると、領地は騒がしくなっていた。
「こりゃどーなってんだい!?」
「なんで畑がこんなことに!?」
「いやぁー、これは今から収穫していかないとねぇ」
「でも、一体どうしてこんなことが……?」
農家の人々はうれしい悲鳴をあげていた。
それを聞いた子供達は皆、口々に言う。
「きっとアルマお兄ちゃんだよ!」
「だよね! こんなのアルマさんにしか出来ないよ!」
……その様子を俺は近くの茂みの中で聞いていた。
「おいアルマ、なんで隠れているんだよ」
ガサガサ。
同じ茂みの中で隠れているラウルが言った。
一応隠れているので、小声で話している。
「村の方へ降りて行ったら、ちょうど皆が外に出てきたからそれでつい……。まあでもラウルだって俺と同じように茂みに隠れたじゃないか」
「そ、そうだけどよぉ。隠れる必要あったか?」
「でも今更外に出られないだろ」
「アルマお得意の魔法でなんとかならないかな?」
「その手があったな」
「なんとかなるのかよ!」
「ラ、ラウル、声が大きいってば!」
「わ、わりい!」
「キュオンッ!」
いつの間にかロックが茂みの上でパタパタと飛んでいた。
こいつ、屋敷からこっそり付いてきてたな!?
「あれ? ロックだ!」
「茂みの上に止まってる! なんで落っこちねーの?」
それは茂みの上で止まっているのではない。
俺の頭の上に乗っているのだ。
「うわ! 茂みの中にアルマお兄ちゃんがいる!?」
「ラウルもいるぞ!?」
「てめえクソガキ! なんで俺だけ呼び捨てなんだよぉッ!」
ラウルは茂みの中から飛び出した。
「「わー! 怒ったー!」
「こら待てぇっ!」
逃げ出す子供をラウルは追う。
怒っている様子だが、子供達に付き合ってあげているだけで本気ではないだろう。
俺も茂みの中から出るか。
「お前のせいでバレちゃったぞ、ロック」
「キュ?」
何も分かっていない様子だ。
「ん、そういえばご飯をまだあげていなかったな」
そうだ、収穫した野菜をロックに食べさせてあげよう。
もう野菜の収穫を始めているみたいだし。
良ければちょっと貰えないかな。
「すみませーん、そのニンジン一本もらっても良いですかー?」
俺はしばらく歩いた先にあった畑でニンジンを収穫中のおじさんに声をかけた。
「おお、アルマさん! もちろんですとも! それとこの野菜、アルマさんが成長させてくれたって噂だけど本当かい?」
「だ、誰がそんな噂を?」
「ルナちゃんとサーニャちゃんがそう言って領内を回っていたよ」
「あの二人、そんなことをしていたのか……」
「領主のエリックさんも嬉しそうにしていたよ」
「エリックさんが?」
「そうとも。今は野菜の収穫を手伝ってくれているよ。あれだけ領民に寄り添ってくれる領主はまずいないだろうさ」
そうだったのか。
領主としての仕事をこなしながら領民の手伝いをするのは、かなり大変だろう。
……凄いな、エリックさん。
「ははは、まぁ俺が成長させたというよりも俺の持っていた肥料が優れていただけですけどね。勝手ながら領内の畑全てに肥料を撒かせてもらっていたんです」
「……肥料だけでこんなことが起きたのかい?」
「そうなりますね」
「……すごく便利な肥料があるんだね。──はい、これ。ニンジンだよ」
「おお、ありがとうございます!」
「キュ!」
手に持ったニンジンにロックはかぶりつこうとした。
「洗ってから食べさせてあげるよ」
そう言って、俺はロックの猛攻をかわした。
「元気いっぱいだね〜。子供は元気が一番さ」
農家のおじさんは楽しげに笑った。
それから俺は水魔法を使って、ニンジンについた土を洗い流した。
ロックに食べさせてあげながら、エリックさんを探す。
魔法を使えば一瞬だけど、のんびりと歩いて探し回りたい気分だった。
のどかで日差しが心地いい。
「アルマさん、こんにちは!」
また別の子供から話しかけられた。
コリンという名で、茶髪で目が丸くて大きい男の子だ。
「やぁコリン。エリックさん見なかった?」
「あっちの畑にいたよ」
「ありがとう」
「ロック、ニンジン食べてるね」
「朝ごはんだよ」
「へー、ドラゴンって何でも食べるんだね」
「そうだね。餌のあげすぎには注意しないとなぁ」
「頑張ってね! あとで遊ばせてね」
「エリックさんの屋敷に来てくれればいつでも遊ばせてあげるよ」
「わーい! 分かったー!」
そう言って、コリンは走ってどこかに行ってしまった。
これから誰かと遊ぶのだろう。
「さてと、俺もエリックさんのところに向かうか」
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