31話 岩から出てきたのは……?
全長5mにも及ぶ大きな岩。
なんでこんなデカい岩があるんだ……?
それになんだか少し魔力を帯びているようにも見える。
魔石と呼べるほどの量はないので、ちょっと不思議だ。
そう疑問に思ったが、何はともあれこの岩のせいで作業が中断しているので壊すほかないか。
「壊せるって言ったって……とんでもないデカさだぜ?」
「い、いや待て! もしかして畑を荒らしていた魔物を従えたっていうアルマだろ? 回復魔法もかなりの腕前らしいじゃないか!」
作業を中断していた領民達の間がざわざわとしだした。
それから岩の前に集まっていた領民達が道をあけた。
「「「よろしくお願いします!!!」」」
領民達は息を合わせてそう言った。
「大人気だな」
「ははは……」
まぁとりあえずやってみよう。
岩の前まで歩いていく。
近くで見ると、なかなかの大きさだな。
「危ないので皆さんは離れていてください」
俺の指示に領民達は素直に離れていってくれた。
ちょっとは信頼されているってことだろうか。
よし、それじゃあ早速壊していこう。
意気込んで魔法を詠唱しようとそのとき、大きな岩を帯びていた魔力が少し変動した。
……なんで?
物質から発せられる魔力は常に一定のはずだ。
こんな風に魔力が変動するなんて、まるで生き物みたいだ……。
──もしかして!
思い当たる節があったので、俺は【鑑定】を無詠唱で使用した。
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[ロックドラゴンの卵]
状態:もうすぐで生まれそう
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や、やっぱり!
これは岩じゃなくて卵だったんだ。
……って、なんつーデカさをしているんだ。
俺は更に中の状態を調べるために【物質透過】を無詠唱で使用した。
中の状態は、卵を守るように岩が形成されている。
卵のサイズは全長50cmぐらいだ。
なかなかの大きさだが、この岩のほとんどは卵を守るために形成されたものだということだ。
それにこの卵の主は生きている。
だったら卵にダメージが加わらないように、それ以外の部分を破壊させてもらおう。
一応、周りに岩の欠片が飛び散らないように結界を貼っておくか。
【物理結界】を無詠唱で使用し、準備万端だ。
早速、岩を壊していこう。
「【ショックウェーブ】」
俺は宙に飛び上がり、岩の上部から風魔法の【ショックウェーブ】を詠唱した。
魔法の発動場所は上の方が綺麗に岩を破壊することが出来る。
【ショックウェーブ】は風を引き起こし、衝撃波を起こす魔法だ。
風に魔力を乗せることにより、破壊力は格段に増すが、卵を割らないようにコントロールする必要がある。
まあこれぐらいのコントロールなら、朝メシ前だけども……。
ビリビリビリッ──────!!
ドーンッ!!!!
大きな岩が勢いよく砕けた。
側から見れば、ただ岩が砕けたように映るだろう。
属性魔法だとは、なかなか分からないかもな。
中心部で守られていた卵が落下していく。
【風の絨毯】を無詠唱で使い、ほんの少しの間だけ宙に浮かせた。
そして俺が落下していくと同時に卵をキャッチした。
卵に衝撃が加わらないように風魔法を利用してふわっ、と着地する。
「「「「うおおおおおおおおおお!!! 岩が壊れた!!!」」」」
領民達から歓声があがった。
「すっげええ! やっぱりアルマはすげえよ! ……ん? その手に持っているものはなんだ? 卵みたいだな」
「ラウルの言う通りだよ。これは卵さ」
「た、卵!? なんで岩の中から卵が出てくるんだよ!?」
ラウルが驚くと、領民達にもその驚きは伝播していった。
「卵だと……」
「食べられるのだろうか……」
「誰かが毒味をする必要があるな……」
「アルマさんは回復魔法も使えるから万が一毒があっても安心だね」
なんか卵を食べるみたいな流れになってるんだけど……!
食べるなんて勿体ない。
ロックドラゴンの成竜は魔物の中でもかなりの実力を持っている。
育てれば間違いなく、化ける存在だ。
ピキ……ピキピキ……!
パカッ!
卵から足が飛び出してきた。
ロックドラゴンという名前だが、足の色は白くて柔らかそうだった。
「生まれるのか……?」
「なんだと?」
「岩から出てきた卵が生まれるぞ!」
領民達は俺を囲むように近づいてきた。
卵はヒビだらけになっていく。
そして、ついにロックドラゴンの赤ちゃんは卵を破った。
「……キョウン?」
白色の小さな竜が生まれた!
目がくりくりしていて、とても可愛らしい。
「りゅ、竜だ! 岩から竜が生まれたぞ!」
「すげえ!」
「不思議なこともあるもんだなー!」
領民達は開拓作業をそっちのけで、ロックドラゴンの赤ちゃんの誕生に驚きまくっていた。
新しい仲間が増えたのかな……?
まあ近くに親のロックドラゴンの気配は無いし、この領地で育ててあげるしかなさそうだ。




