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16話 モフモフを堪能、そして耳寄りな情報

 フェンリルの子供は反則的な可愛さを誇っていた。


 顔つきがまん丸く、フェンリルのような凛々しさはない。


 ぱっちりとした瞳に、ぴんっと立った耳。


 毛色は親のフェンリルと同じ銀色で、大きさはフェンリルが口で咥えて運べる程度に小さい。


『化物すごーい! 見た目全然怖くない!』


 子供のフェンリルは【念話】で話しかけてきた。


 ラウルとルナの様子を見ると、どうやら聞こえていないようだ。


 ただフェンリルの子供を夢中になって見ている。


『ああ、全然怖くないだろ? ……ってことで、それじゃあモフらせてくれ』


『おねしゃす』


 おねしゃす……? きっと、お願いしますってことだろうな。

 2文字足りないけど。


『ほう……。我が息子ながら、かなりの人懐っこさだな』


 そう言って、フェンリルは地面に息子を降ろした。

 フェンリルの子供は地面に立つと、前足を伸ばしてお尻をあげた。

 しばらく身体を伸ばすと、お腹を地面に付けて、伏せの状態になった。


「お、おお……!」


「かわいい……」


 その姿を見て、ラウルとルナはとても癒されていた。


 俺はその伏せているモフモフの背中を撫でる。

 良い手触りだ。

 すると、すぐにひっくり返って腹を見せてきた。

 腹を撫でると、気持ちよさそうにしている。


「い、いいのか? そんな気軽に触っても」


 ラウルが言った。


「ああ、ちゃんと許可は取ってあるよ」


「……案外、フェンリルって優しいんだな」


『フェンリル全てに当てはまることは無いがな。我は人と友好的なだけで好戦的な奴もいるぞ』


 それをラウルに伝える。

 ラウルは「ありがとうございます!」とフェンリルに頭を下げていた。

 なんか中継役みたいになってるな、俺。




 その後、ルナとラウルもモフらせてもらい、俺達はモフモフを大いに堪能した。




「かわいかった」


「いやー、癒されたなぁ」


「ほんとにな」



 俺達はもうフェンリルの子供にメロメロだった。

 フェンリルの子供は地面に座り、【念話】で話しかけてきた。



『われもつれてって!』


 一人称が親のフェンリルと一緒で「我」だったが、それがまたどこか可愛らしい。


『つれてく……って、流石にダメだろ?』


『うむ。それは流石に我も困る』


『えー! 嫌だ!』


 フェンリルの子供は顔を地面に伏せた。


『じゃあたまに遊びに来るよ。これから俺達はこの付近の領地に住むことになるからさ』


『……ほんと?』


『ああ、もちろんだとも』


『んー……じゃあ分かった』


『えらいな』


 俺はフェンリルの子供の頭を撫でてあげると、嬉しそうに俺の手をペロペロと舐めた。


『えへへ』


『……ふむ、お主がこれから住む領地。もしかすると、この森の魔物共が畑を荒らしに行ってるかもしれんな』


 フェンリルの親が言った。


 気がかりなので、ルナにこの森付近で他に領地が無いか確認を取る。


「ルナ、この辺りに他の領地って存在するか?」


「ん、多分今日の早朝に出発したトナタート以外は存在しないはず。ここら辺はまだ開拓が進んでいないから」


 トナタートの街の規模も小さいことから、ここら辺が最近まで未開拓の地であったことも容易に想像がついた。


「そうか、ありがとう」


 ……となれば、フェンリルが教えてくれた情報は間違いなくルナの領地ということになる。

 そうか、畑が荒らされているのか。


『どうする? 我の方から荒らすのをやめるように言っておくか?』


『いや、大丈夫だ。逆に利用させてもらうとするよ』


『お主……なにかよからぬことを考えとらんか?』


『全然そんなことないから安心してくれ。お互い得しかしない良いやり方なはずですから』


『ふむ……。お主がそう言うなら信じよう。お主は人間の中でも澄んだ心をしておるからな』


『……魔物にそんなことまで分かるのか?』


『うむ。1000年以上生きて、多くの人間を見てきた我だからこそ見抜けるものだと思うがな』


『……人間が好きなんだな』


『そういう一面もあるのは否めない。だからこそ、こうして人里からそう遠く離れていない場所に身を置いておるのかもしれん』



 フェンリルは色々な経験をしているようだった。

 確かに1000年も生きれば、色々な出来事が起こりそうだ。



 ……しかし、ルナの領地の畑が魔物に荒らされているのは逆に好都合だな。


 その魔物達を利用すれば、良い労働力になるのは間違いない。


 作戦は既に俺の中で出来上がっていた。




 そして、フェンリルの親子は去って行き、夜を明かした。


 早朝から俺達は再び出発し、2日目の夜に俺達はルナの領地へ到着したのだった。

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