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1話 フェローズ家を追放される

 全ての人々は15歳になると、女神様からギフトを授かる。


 15歳になった俺は神殿を訪れていた。

 広大で立派な白亜の神殿だ。

 俺以外にも多くの人々が集まっている。

 皆、神官からギフトのお告げを聞きに来ているのだ。


 ギフトとは、多種多様な特殊能力のことである。

 その中でも評価が高いものは戦闘系のギフトだ。


 例えば、父が授かった《賢者》のギフト。

 《賢者》は魔法の才能が大きく開花し、一瞬にして様々な魔法が使えるようになるギフトだ。

 間違いなく魔法使いの中で最強格に強いギフトである。


 そして父は数々の功績を残し、一代で男爵から伯爵にまで爵位を上げた。


 もちろん父さんのもともとの実力が高いことも言うまでもないが、伯爵にまで爵位を上げられたのはギフトのおかげによるところも大きいだろう。


 


「アルマ、お前のギフトには期待しているぞ。出来ることなら私と同じ《賢者》を授かりたいものだな」


 バシッ、と俺の背中を叩いて父は笑った。


「そうですね。僕も父上のような立派なギフトを授かりたいです」


「なに、ギフトが全てじゃない。どんなギフトでもこれからの努力次第でアルマも私のようになれるさ」


「はい!」


 父は厳しい人だ。

 昔から強くなるための教育が施されて来た。

 それは俺に愛情を注いでるがゆえのものだと思う。

 そんな父を俺は誰よりも尊敬していた。


「それにお前は《賢者》と《魔道士》の息子なんだ。魔法使い関連のギフトを頂けるだろう。お前の兄達もそうだったからな」


「だと良いですけど……」


 ギフトは遺伝する。

 両親のギフトに関連性のある種類のギフトを授かりやすい。

 そのため良いギフトを所持している子のギフトも良い可能性が高い。


 我が家は父が《賢者》で母が《魔道士》のギフトを授かっており、魔法使い系統のギフトを遺伝する可能性が高い。


 実際、長男のクレハ兄さんは《紅蓮の魔法使い》という火魔法に特化したギフトを授かり、次男のキース兄さんは《紫電の魔法使い》という雷魔法に特化したギフトを授かっていた。

 どちらも魔法使いの上位ギフトだ。

 兄二人が優秀なギフトが授かっており、ついに俺は《賢者》を手に入れるのではないかと期待されていた。


「これよりアルマ・フェローズのギフトを告げる」


 ついに俺のギフトが告げられるようだ。

 神殿にいる人々の視線が神官に集まる。

 俺もついにこの時がやってきた、と思わず固唾を呑んだ。


「アルマ・フェローズのギフトは……ぎ、ギフトは……」


 ……神官の様子がおかしい。

 その様子を見て、神殿内が少しずつざわついてきた。


「神官、ギフトは一体何なのだ」


 父が神官に問う。

 神官は長い沈黙を破って、こう言った。


「──ありません。……アルマ・フェローズにギフトはありません」


「なにっ!?」


 父は怒声を張り上げた。

 神殿内が大きくざわついた。


「ギフトが……! ギフトが無いだと!? それは一体……どういうことだ!」


 父は体を震わせながら鋭い目つきで神官に詰め寄った。


「わ、分かりません……! 今までの前例が無いもので……」


「当たり前だ! ギフトとは全ての人々が授かるものだ! ならば何故、アルマはギフトを授かっていないのだ!」


「ち、父上……」


 父は俺のために怒ってくださっている。


 なんて優しいんだ。


 父は、ギフトが全てじゃないと言ってくださった。


 ならば俺はギフトが無くても、誰よりも努力をして、兄達を超える強い魔法使いになろう。


 それが俺に出来るせめても恩返しだ。


「アルマ……!」


 額に青筋を立てながら今度は俺に詰め寄ってきた。


「はい……残念ながらギフトは授かることが出来ませんでしたが、今まで以上に努力し──」


「そんなことはどうでもいい! お前はギフトを授かれなかった無能だ! それを深く、深く……! 自覚しなさい!」


「えっ、ち、父上……? 先ほどは……どんなギフトでも、と……」


「何を言っている! ギフトが有るのと無いのでは話は別だ! 恥を知れ、恥を!」


「そ、そんな……!」



 身体に力が入らない。


 全身から汗が吹き出る。


 父の発言を機に民衆から「そうだ! そうだ!」という声が上がってきた。


「ギフトが無いなんて前代未聞だ!」


「それが賢者の息子なんてありえない!」


「この無能め!」


「「「無能! 無能! 無能!」」」


 民衆から幾度となく投げかけられる「無能」という言葉。



 なんだ……。

 一体なんだって言うんだ……。

 俺は今まで……何のために……。



「フェローズ家にギフトすら授かれない無能はいらん」


 父の表情は、まるで血縁者だとは思えない、とても冷たいものだった。



 ……そうか、そうだったのか。


 父が俺に厳しい教育を施していたのは愛情ゆえのものなどでは無かった。


 全てはフェローズ家のためだったのだ。



「──アルマ、お前をフェローズ家から追放する」



 衆目にさらされる中で俺は父からフェローズ家の追放を宣言されたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 目を尖らせてとはどんな様子なんでしょう?
[気になる点] 伯爵か侯爵のどちらなのか、少し気になりました。
[一言] なます切りにしますか?ゴミ親父を
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