蒼い妖精の止まり樹
「皆様! 私、支配人のトロイです」
世界一とも謳われる人形劇の開幕
果たして。それほどの価値が有るのか?
「アーちゃん」
「うん?」
「あれ、あれリリーだよ!」
「リリー?」
蒼い妖精、そう言われる程に美しく
キューの秘宝とまでいわれる
以下、アーボルト屈指の名作である
「忘れちゃったの?」
「リリー。覚えてる
ただ。綺麗な子を造りたくて・・・」
「綺麗・・・・」
「そうだよ、確か───」
リリー=クロノメリア
それが。彼女の名前だ・・・ そうだ
取り戻そう、僕の全てを捨てても
それほど大事な人だったんだ、あの子は
「・・・いてっ」
「アーちゃんは綺麗な子が好きなのね!」
「ローゼ、あぁ・・・鞄の中に──」
「お客様!」
「僕?」
「そう── お客様です
こちらへどうぞ、貴方は選ばれたのです」
「選ばれたとは? どういう・・・」
「おや、初めてですかな?」
「えぇ、観に来たのは初めてです。
噂は良く聞いてますよ、凄く綺麗だと」
「そうですか、いやはや何とも・・・
それでは勿体ない、では変更を・・・」
「いいえ、彼で御願いします」
辺りが妙にざわつきだした
よく聴こえない・・・ たっ──
部分的に聴こえては途切れる声
でも、
次でハッキリと聞こえる様になる
「皆様、皆様!落ち着いて下さい」
「この青海のアバランテュス始まって
以来の奇跡が起きました! 皆様拍手を」
「あの蒼い妖精が言葉を口にしたのです!」
「あの・・・・」
「なんだ! こんな時に!」
支配人は何もかもを忘れた様で
僕に向けて興奮してる冷めるから
黙ってろ、そう言ってる眼だったんだ
「珍しいことなんですか?」
「その・・・ 人形が喋るのは──」
「何! これが誰の作品か知っているのか」
「アーボルト=ハインケル。
蒼い妖精はこの僕が造りました──」