あの日還らぬ森
真実が誰か大切な人を傷付けるとしたら
僕はきっと、真実を言えない
いつかは知るであろう。その答えは
「──嘘じゃな」
「え・・・」
「惚けても無駄じゃよ、知っておるか?」
「解りません、何の事かは」
「昔の話じゃ、神父の頃のな・・・・
いわゆる独白部屋、告解室で儂はの
良く、嘘を聞いたのじゃよ・・・すると」
「だんだん・・ 段々と嘘が解る様になる
それは嘘だ、これは真実だと・・・
しかし、仕方のないことでもある 」
「皆、秘密ほど隠したいものじゃ 」
「・・・・ そうですね」
「じゃろう、しかしの・・安心するといい
教会は死んでも喋らん、儂はそうじゃ
他の者は知らんが、もう歳じゃしの 」
「こんな老いぼれ死んでも誰の損にも
ならん、話してくれると嬉しいの・・お?」
「なら、貴方は僕の罪を背負うと?」
「ああぁ、イエスと共にの」
「フぅ・・・・ 僕は── やっぱり」
「無理かの、真実は辛いものじゃ
人はそれに耐えられん時がある。皆な」
「教皇様、聴いてくれますか?」
「聴くとも、イエスは汝を許し
また。光の道へと導く事を許される」
「──僕の名前は アーボルト・・・」
「なんと! ・・・・あの」
「本当の名前は───」
「アーボルト=オブ・ハインケルニア」
「今は失われし王族です」
「知っておる。道理で知ってる筈だ
君が幼き頃、儂が居た教会は森深く」
「その先には幻想的な世界がある
あの時、儂は初めて神を信じてしまった」
「しかし、その教会は朽ち始め
神はもう死にかけて居たのだろうの」
「会ったことがあると言いましたね」
「君がまだ、幼き頃じゃ・・・・」
「他には、聞きたい・・」
「愛に餓えているのじゃな、しかしの
儂には愛は与えられん、儂は神ではない」
「教えろ!!!」
「お主が禁忌に触れていなければ
話しておった、また悲劇を繰り返すか!」
「ならピエロは彼なのか!
どうやって生き返った、今は何処に居る」
「儂は救おうとしただけじゃ・・・ごぼっ」
「そうですか・・・・ 僕は神が嫌いだ
魂なんて創るから人はそれに縋るんだ」
「──お主はまた禁忌を犯すのか?」
「心がそう決めたら僕は誰だって救う
あの日、それだけは神に誓った・・・ 」
「声は返って来ませんけどね」
「・・・・復讐を狂気に変えてはならん」
「復讐じゃない、僕にとってはね」
「・・・?」
「やらなくちゃいけない事です」
ローゼ、君はもう奪わせない
「───真実は」