黒人形・・・・そして人
「そこのお兄さん」
「何でしょう?」
「この人形・・・買わないかい?」
「僕はもう持ってるので・・・ほら?」
「この人形は誰が作ったんだい?」
「この人形ですか?」
「とても良い出来だから気になって」
「それは・・・・ありがとう」
「どういう意味だい?」
「いえ、何でも・・・」
「おい! お兄さん。忘れ物だよ!!」
「それは・・・プレゼントですよ」
「な、なに?」
「善き夢を・・・・」
西暦1698
その時代に流行ったのは御世辞にも
可愛いとは言えない人形、かつて人は・・・
其を悪魔と呼び、恐れたと言う・・・。
「これは?」
「お前が頼んでた工具だよ」
「こんなの頼んだ覚えはないよ」
「え? でも確かにここには・・・」
「変だな・・・僕は本当に知らないよ」
「ま、取り敢えず・・・金払え」
「・・・・僕が?」
「お前が頼んだんだ!」
「知らないって・・・・言ってるのに・・・」
「さあ・・・金をっ・・・痛てぇ!」
「大丈夫かい?」
「ああ、もう痛くない」
「それなら良かった・・・!」
「まったく・・・何なんだ?」
「あ、そうそうお金は僕が払うよ」
「お前、いきなりどうした?」
「まあまあ、はい受け取って?」
「いや、なんか怖いからいいよ・・・」
「そんなこと言わずに・・・・ほら?」
「いやいいよ、それタダで」
「駄目だよ」
「いや、良いから・・・じゃあ俺はこれで」
「あ・・・ちょっと!」
「今度、会った時に渡せば良いか・・・」
「もう! 私の事をちゃんと構ってくれない罰です」
「ローゼ・・・君の仕業だったのか」
黒人形シリーズ
そう呼ばれる人形がこの世界にはある。
人形はランク付けされ・・・赤、青、紫、白、黒、
・・・・と、いった順番で質が上がっていく
特に黒はコレクターの中でも人気で高値が付いている
が、しかし
黒人形シリーズは生産数が少なく・・・
闇市にも滅多に顔を出さない程である・・・。
「ローゼ・・・こういう事はダメって」
「お説教はもう聞き飽きました!」
「でもね、ローゼ・・・やっぱりダメだよ」
「ふんっ! アーちゃんなんて知らない!!」
アーボルト=ハインケル
黒人形を73人、作った希代の天才である
彼は人形は人だといつも言っており・・・
また、彼の人形に惹かれたコレクターも
同じように語っている・・・・・。
「困ったな・・・」
「まあ、晩ごはんまでに帰って来てくれれば」
「う~ん・・・・大丈夫かな?」
一方 その頃・・・
「アーちゃんなんて! アーちゃんなんて!!」
「お嬢さん、迷子かな?」
な、なに? 怖いよ・・・・アーちゃん
「迷子かな? 大丈夫かい?」
「あ、あのあの」
「大丈夫、ゆっくり喋っていいよ」
「あの、お爺さん・・・ だ、誰?」
「私は、ユーガス」
「ユーガス・・・・?」
「そうだよ、皆にはユー爺と呼ばれてる」
「ユー爺?」
「そうだよ、お嬢さんは?」
「・・・・私?」
「そう。君の名前は?」
「・・・・ローゼ」
「よく聞こえなかった。もう一度」
「ローゼ=アインフォルト」
「・・・・本当にお嬢さんの名前かい?」
「私の・・・名前」
「そうかそうか、なら君を殺さなくてはね」
「・・・・え?」
「ローゼ!!」
「・・・アーちゃん?」
「ああ、君のアーちゃんだ!! 早くこっちに」
「アーちゃん!! 怖かったよ!」
「ああ、そうだね。でも僕はここに居る」
「うん! ここに居る・・・」
「だから・・・大丈夫だよね?」
「うん! もう大丈夫!!」
「ハハッ! こんなにも早く黒人形が見付かるとは」
「貴方は誰です!?」
「私は・・・死神だよ」
死神
黒人形コレクターが雇う黒人形ハンターの事である
彼等は黒人形を手に入れる事だけが目的で・・・
その目的の過程でどんな事が起こっても構わない
故に彼等は死神として恐れられてもいる
「其を私に・・・渡せ」
「渡さない! この子は私の子だ」
「其は悪魔だぞ?」
「僕には白い翼の生えた可愛い天使だ」
「そうか・・・ならば死ね!」
「死ぬのは君だ、ローゼ?」
「はい、アーちゃん」
理を犯す、愚かな者よ
私、ローゼ=アインフォルト
人形師 アーボルト=ハインケル
「この二人は貴様に死の烙印を押す」
「・・・・アーちゃん」
「・・・ローゼ」
「ぐっ・・・なにをした!?」
「死の烙印・・・人形の呪いだ」
「ぐああぁぁぁぁぁ」
「アーちゃん・・・・大丈夫?」
「大丈夫だよ、ローゼ・・・」
「ローゼ・・・・ 寂しいかい?」
「うん・・・・寂しい」
「僕もだよ。 早く皆を見付けないとね」
「うん!!」
黒人形、僕の新しい作品です。
これはかなり力を入れて書きました
そして今後もそうしていきます
どうも、トムネコでした