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次の日は週末で、かなり忙しかった。
アルバイトも社員も時間をずらして、交代で昼食を取る。
私が自作の煮物中心のお弁当を持って給湯室に入ると、中央のテーブルで純ちゃんがコンビニのサンドイッチを食べていた。
書店の作業は本の上げ下ろし等、意外と重労働な面もある。
だから純ちゃんもラフなデニムパンツルック。
でも、不思議とかわいい感じになる。
キラキラ女子には、そういう力がある。
ファッションに疎い私には、あくまで想像でしかないけれど、秋のトレンドを取り入れているのかな?
純ちゃんが食べていると、コンビニのサンドイッチと野菜ジュースも、お洒落に見えてくるからすごい。
「あ! 坂本さん、お弁当!」
純ちゃんの瞳が輝く。
お、お見せするほどの物ではありませぬ…。
純ちゃんが満面の笑顔で待っているので、私は仕方なくお弁当の蓋を開けた。
「わ! すごい!」
純ちゃんの歓声。
「美味しそう」
キラキラした眼差しに見つめられながら、私は筑前煮を口に運んだ。
何だか恥ずかしい。
「坂本さんって、何でも上手ですよね」
煮物を指してから、次に大きく開けた純ちゃんの口の中に、私は里芋の煮物をひとつ放り込んだ。
「美味しい!!」
純ちゃんの笑顔。
「坂本さんと居ると、とっても落ち着きます。お婆ちゃん家に居るみたい!」
私が自分で言うのはいいけど、純ちゃんが言っちゃダメ!!
せめて、お母さんにして!!
「ども」
ドアが開いて、北条さんが入ってきた。
手には、ほかほか弁当屋さんのお弁当。
私と純ちゃんが挨拶を返す。
北条さんに、私は少し緊張する。
「あ!」
純ちゃんがスマホを出して、画面を見た。
「直哉からだ!」
直哉くんは純ちゃんが高校時代から付き合っている彼氏だ。
まるで、つむじ風みたいに消えた純ちゃんと入れ代わりに、北条さんが私の前に座る。
北条さんが、私のお弁当を見た。
恥ずかしい。
無言で、煮物に支配されしお弁当を見つめる北条さんを私は顔を逸らしながら、横目で窺った。
正視するのは耐え難い。
もし見たならば、彼女のまばゆいオーラで、私はこの世から消滅してしまうでしょう。
北条さんの相変わらずの美しさに、私は感心した。
好きだなー、こういう顔。
めちゃくちゃ、羨ましい。
そりゃあ、何人もに告白されるよね。
私がもしも、この顔だったら確実に性格変わってただろうな。
私のお弁当を見つめる北条さんの両方の眉が、ぐぐっと上がった。
お嬢様、煮物はお嫌いでしょうか?
北条さんは何も言わず、ほかほか弁当を袋から出して食べ始めた。
チーズハンバーグ弁当だね。
それから私は残りの休憩時間を無言のまま過ごし、お弁当を食べ終わった北条さんを残して、給湯室を出た。