心臓はその人のハート
ぬるいですが、グロいカニバリズム的表現が多い最終章です。ご注意を
狼は猟師が使っていたナイフをぎゅっとその手に握ります。
今まで兎やその他の動物を赤ずきんの為に捌くことはあっても、人間は初めてです。
「足からどうぞ?」
ニコニコと微笑む赤ずきんの太ももに、狼はそっと、けれど力を込めてナイフを滑らせます。
狼の大きな耳に、赤ずきんの叫び声が響きます。
「少し少し、耳が痛いよ赤ずきん。」
「ぎぃっ…ご、ごめん、ね。お、がみさんっ…!」
赤ずきんはもう悲鳴をあげまいと自分の唇をがぶりと噛みます。噛む、と言うより唇に歯を食い立てます。
その唇に流れる血を、狼はうっとりとした表情で長い舌でそっと舐めます。
「頑張って頑張って。赤ずきんはいい子だからね」
ナイフは骨に辺り、その骨を避けてざくざくと切り進め、ようやく左足が切り落とせました。
「よしよし。赤ずきんはいい子だ。」
「べ、て。タへ゛デぇ゛……!」
爛々とした瞳で見つめられた狼は、少し恥ずかしそうにけれど豪快に赤ずきんの足にかぶりつきます。
「うんうん、美味しいよ赤ずきん!!」
赤ずきんは本当に美味しいのでした。
切り立ての温かい足に滴る血を口に含めば甘さが広がり、柔らかな肉はふわふわとした感触ですが、足の筋肉ということだからか、しっかりとした弾力の食感があります。
「あぁあぁ。本当に美味しい…大切に食べたいけれど……。赤ずきんの意識があるうちに全部一口ずつ食べてあげないとね」
一番美味しい人間のお腹は最後に残すとして、狼は次に腕にナイフを滑らせました。
細い赤ずきんの腕は足よりも切り落とすのは簡単で、力を込めて上からナイフを押せば、骨ごとゴトンと勢い良く落とせました。
腕は足とは違い、味がしっかりしていました。
そして足よりも遥かに柔らかく、殆ど歯を使わず舌だけでほろほろと崩れます。
じっと赤ずきんの瞳に気付き、狼は笑顔で美味しそうに赤ずきんの指を一本ずつ音を立てて食べました。
「…お、いしぃ……?」
「うんうん。赤ずきんは本当に美味しい!!」
骨ごとまるごと食べられちゃうよ、とうっとりとした表情で言う狼に満足そうに微笑む赤ずきん。
「……み、さ」
「赤ずきん?」
しかし血を流しすぎた小さな赤ずきんの意識はもう殆どなくなっていました。
どろんと空を見つめ始めた瞳に、狼は慌てます。
「赤ずきん赤ずきん。まだ大丈夫?」
「……………、」
赤ずきん、と問いかけてももう赤ずきんは答えてくれません。
弱くなる心臓の音に狼は、そっと息を吐きナイフを捨てます。
そして、せめて意識があるうちにと赤ずきんのお腹にその牙を立てます。
白い柔らかなお腹の皮膚を食いちぎれば、中から香り高い血の香り、そしてまだ温かい内臓がふわふわと鼻をくすぐります。
狼はその赤ずきんの中身に触れた瞬間に理性を失い、本能のまま貪りました。
甘い甘いジュースのような血
柔らかい女の子だけの特別な肉
硬すぎず柔らかすぎない子供の筋肉
髄が詰まったずっとしゃぶっていたくなる骨
微かに香る赤ずきんの匂いがする髪
綺麗な青くて小さな一口大の眼球
温かくてふわふわでしっかりと味がする内蔵
そして、人間に一つしかない一番大事で大切で美味しい心臓…
「今、今…。ようやく一つだよ、赤ずきん」
心臓の周りの血を舐め取り、狼は一口で赤ずきんの心臓を…
これで終わりです。
息抜きで書いたのですが、思いの外止まれなくなり無意味に長くなり…。
ここまで読んで頂きありがとうございましたm(_ _)m
苦情も罵倒も受け付けます。その他の感想、誤字脱字などもありがたく読ませて返信させていただきます。