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食べたい程可愛い

 昔々、とある森に一匹の狼が住んでいました。彼は同じ森に住む赤ずきんが大好きでした。

 ‎大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで仕方がなくて、赤ずきんが欲しくなりました。

 ‎欲しくなったので、赤ずきんがこの世界で一番大好きだというおばあちゃんを食べました。

 ‎一番大事なものを食べた自分なら、赤ずきんはきっとかまってくれると思ったのです。

 ‎かわいそうな狼は、そうと信じて疑いませんでした。

 ‎だって、誰も教えてはくれなかったのですから。

 ‎好きなのなら優しくするべきだと、欲しいのなら振り向いてもらう努力をするべきなのだと。

 ‎愛を伝えるべきなのだったのだと。

 ‎けれどもう全ては遅いのです。

 ‎狼はおばあちゃんを食べ、赤ずきんはおばあちゃんを食べた狼をおばあちゃんとすることで心が壊れるのを止めました。

 ‎そして狼は、赤ずきんを連れ遠い遠い深い深い別の森に行きました。

 ‎二人で幸せに暮らすためです。

 ‎けれど、狼は物足りません。自分でいい出したと言え、赤ずきんは自分をおばあちゃんとしてしか接してくれないのです。


「…赤ずきん赤ずきん」

「なぁに、おばあちゃん?」

「………私は、誰だ」


 寂しそうな、思い詰めたような声で狼は赤ずきんに問います。


「変なことを聞くのね。おばあちゃんは赤ずきんの大好きなおばあちゃんでしょ?」


 コロコロと鈴のように笑う赤ずきんに狼は心臓が掴まれる感覚がします。

 ‎それは嬉しいのか、それとも辛いのか、悲しいのか。狼にはわかりません。


「…そうだ、そうだ。こうすれば良かったんだ」


 狼は微笑み、赤ずきんを抱きしめます。赤ずきんも狼を…おばあちゃんを抱きしめ返します。


「あのねあのね赤ずきん。私はおばあちゃんじゃない。おばあちゃんはあの日、君の目の前で狼の私が食べたんだ。」

「おばあちゃん、何を言って…」

「もうもう苦しいんだ。赤ずきん、君が好きだ。君が好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで仕方がなくて、もう訳が分からないんだよ。助けて、赤ずきん…助けて、」

「……おばあ、」

「違う」


 おばあちゃんと呼ぼうとする赤ずきんの口を、狼はその鋭い爪で優しく塞ぎます。けれどその瞳は、怖い怖い狼の眼です。


「…呼んで呼んで。私を狼と呼んで…怖がってもいいから思い出して、もうおばあちゃんごっこは飽きたよ。満たされないんだ、身体が満たされない。」


 赤ずきんは瞳に光を戻し、そして久しぶりに狼を瞳に映しました。

 ‎その瞳に、怒りと絶望と恐怖が映るのを見て狼は満足そうに微笑みます。


「ほらほら、呼んで。狼って呼んで?」

「………狼、さん」


 何ででしょうか、赤ずきんは狼はもうおばあちゃんではないと分かっているのにぎゅっと狼を抱きしめました。

 ‎狼はそのことに驚き、息を呑みました。


「……不思議。もう狼さんが怖くないの、怒ってもないの。不思議、不思議ね?」

「ぁ……オカシイなオカシイな。赤ずきんは、だって……おかしい、」

「狼さんは、私が好きなのね?」


 そう微笑む赤ずきんに、狼は戸惑いながらも「そうだよ」とうなずきます。


「私のお願い聞いてくれる?」

「…出来ること、なら」


 逃してやることは出来ません、だって狼は赤ずきんが好きなのですから。

 ‎おばあちゃんを返すことも出来ません、だって何も狼の中に戻っていないのですから。

 ‎殺されてしまうことも出来ません、自分が死んで赤ずきんが誰かのものになるのが怖いのです。


「私を……タベテ?」

赤ずきんの感情表現が少なすぎですね。

もっと壊れた赤ずきんを書けばよかったなぁ…。

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