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大好きなおばあちゃん

 遂に赤ずきんは、おばあちゃんの家に辿り着きました。

 ‎目の前に見えるおばあちゃんの木の家に、赤ずきんは安心したかのようにそっと息を吐き、扉をノックします。


「おばあちゃん、赤ずきんよ。お見舞いに来たの!」

「あぁあぁ、赤ずきん。早くお入り」


 扉を開け、中に入る赤ずきん。

 ‎ベッドには、おばあちゃんが横たわっています。


「具合は大丈夫、おばあちゃん?」

「平気さ平気さ。それよりもっと近くに来ておくれ、しっかりと赤ずきんを見たいんだ」

「おばあちゃん…なんだか声が変よ?」


 病気のせいだよ、と言うおばあちゃんに違和感を覚えながらも、赤ずきんは言われたとおりに近づきます。


「おばあちゃん。何だか耳が変よ?」


 とんがりと尖った耳に、赤ずきんは不思議に思います。


「綺麗な綺麗な赤ずきんの声を聞くためさ」

「おばあちゃん。何だか目が変よ?」


 ぎろりと輝く瞳に、赤ずきんは不思議に思います。


「可愛い可愛い赤ずきんの姿を見るためさ」

「…おばあちゃん。何だか手が赤いわ……?」


 真っ赤な手に、赤ずきんはじとりと汗をかきます。


「美味しい美味しいモノを食べたからさ」

「………お、おばあちゃん。何だか口が、」


 そうして赤ずきんは気付きました。


「小さな小さな赤ずきんを食べるためさ」


 赤いものがところどころついた茶色の狼が、おばあちゃんのふりをしていたことに。

 赤ずきんは訪ねます。


「おばあちゃんは…どこ?」

「あれあれ、変なことを聞くね赤ずきん。もう会ったじゃないか?」


 ニコニコと答える狼に赤ずきんは戸惑います。

 ‎そんなことを言われても、赤ずきんはおばあちゃんになんて会ってません。


「そうかそうか、食べすぎて分からなかったのか。もう会ったよ、初めて私と会った時に赤ずきんは見たはずだよ?」

「…え……?」


 赤ずきんはその場に座り込みます。

 ‎もし狼の言うことが本当ならば、あの時会ったと言うならば…。


「あれが……おばあ、ちゃん……?」

「そうそう、思い出したんだね赤ずきん」

「…返して。おばあちゃんを返してぇ!!!」

「驚いた驚いた。赤ずきんはそんなに大きな声が出せるんだね!」


 嬉しそうに言う狼に、赤ずきんは殺意の篭った瞳で「返して」と叫びます。

 ‎恐怖は絶望で消え、絶望は怒りによって消えました。


「うーんうーん…返すのは少し難しいな…」

「返して!!!」

「……うんうん。赤ずきんが望むのなら頑張るよ」


 そう言い、狼はその赤い手を自分の大きな口に突っ込みます。

 ‎複数回低い音で唸り、狼は口を地面に向け、そして赤ずきんにおばあちゃんを ” 返してあげました ” 。

 ‎ぼたぼたと狼の口から落ちるおばあちゃんに、赤ずきんは目を見開きます。

 ‎白い髪は半分ほど赤く染まっていたけれど、それは確かにおばあちゃんの髪でした。

 ‎細い指はもう赤ずきんの髪を結ってはくれないけれど、確かにそれは赤ずきんの好きなおばあちゃんの指でした。


「ぐぅ……ぇあ、コレ。でか、いっ……」


 大量のネバネバした液体とともに、出てきたのは…


「お、ばぁ……ちゃん」


 所々パーツがない、おばあちゃんの顔でした。


「んん…。これ全部飲んでたから目がなかったのかー…。赤ずきん、おばあちゃんの目は貰っちゃ駄目かい?」


 好物なんだ、と笑う狼を無視して赤ずきんはおばあちゃんを…おばあちゃんだったものを両手に抱き上げます。

 ‎鼻にはつんとした強い変な匂いがするけれど、両手にあるものは全部大好きな大好きなおばあちゃんと思えば、赤ずきんは愛しく思えました。


「…もしもし、赤ずきん?」

「……おばあちゃん、お見舞いに来たのよ。おばあちゃんの好きなワインとパンを持ってきたの。それと途中で綺麗なお花畑を見つけたから花束も持ってきたのよ。」

「赤ずきん赤ずきん。それはもう話さないよ。それより私と話そう赤ずきん?」

「ほらおばあちゃん……パンをどうぞ?」


 そう言って、赤ずきんはパンを千切って両手の中のおばあちゃんに渡します。


「喉が渇いたでしょう、ワインをどうぞ。あ、けれど飲み過ぎは駄目よおばあちゃん?」

「あぁあぁ、赤ずきん。それはワインをもう飲めないよ。ほら、赤ずきんの綺麗な服にワインが染みてるじゃないか」


 ワインの香りをまとった両手のおばあちゃんを赤ずきんは大事そうに抱えます。


「…これはこれは予想外だな。大好きなおばあちゃんを私が殺せば構ってくれると思ったのに」


 どうしようかと唸る狼は、突然ひらめいたかのように微笑みます。


「赤ずきん赤ずきん」

「おばあちゃん、良い香りのお花でしょう?」

「それそれ、また貰うよ?」


 赤ずきんが理解するよりも早く、狼は赤ずきんの両手のものを全て丸呑みにしてしまいました。

 ‎呆然と狼の喉を通るおばあちゃんを見つめる赤ずきん。


「さあさあ、赤ずきん。私がおばあちゃんだよ?」

「…え?」

「ふふ。おばあちゃんと一つになったのだから私がおばあちゃんだ!」

「一つ…」

「そうそう。だから私と一緒に話そう、遊ぼう!」


 赤ずきんは光なき瞳で狼を見、喉を見、お腹を見、そして静かに微笑みました。


「おバァチゃぁん…」

「そうそう。赤ずきんは賢いねぇ。さあ近くに来て大好きなおばあちゃんにハグをしておくれ。」

「おばあちゃんおばあちゃんおばあちゃん…。おばあちゃん、大好キヨ…。」

もっとグロくしたかったけれど技術不足感が否めない

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