歌のお花畑
赤ずきんはおばあちゃんへの家に行く道へ戻り、初めはこわごわと、そして暫く時間が経てば普段のようにとことこと歩き始めました。
「大きな大きな道を歩きましょ…♪」
かごの中のワインとパンを見つめ、赤ずきんは早くおばあちゃんに会いたいと微笑みます。
「青い青い………え?」
赤ずきんは驚きます。
自分は今、何を口ずさんでいたのでしょう。この歌はさっき狼が歌った…
「っ…いやぁ!!!」
赤ずきんは怖がるように顔を覆い、その場に膝を付きます。
真っ暗になった赤ずきんの目には、さっきの赤い何かがチラチラと浮かびます。
赤でいっぱいの中身は黒く見えて、ピンクの縄のようなものは地面にそっと置かれ、白い柔らかそうな塊は所々白い硬そうな棒が見えていて…。
「いやだぁ……。おばあちゃん、おばあちゃんっ…!」
赤ずきんは走り出します。
早くおばあちゃんに会いたい。会わないと。会いたい早く、早く会いたい会わないとおばあちゃんにおばあちゃん、早くおばあちゃん会わないとおばあちゃんおばあちゃんおばあちゃんっ…!
息など気にもせずに走っていた赤ずきんは、道の途中で疲れて止まってしまいます。
荒い息を何とか整え、赤ずきんは顔を上げます。
「………あ、れ……?」
目の前に見えるのは、青い色でした。
狼の歌にあった ” 青い青い看板 ” でした。
赤ずきんはまた怖くなります。けれど、狼の歌の通り、甘い花の香りが看板の後ろからします。
そっとワインとパンしかない寂しいかごを見ます。
「…でも、」
怖い。けれどおばあちゃんが喜ぶのなら…
おばあちゃんはお花が大好きです。持っていったらきっともっと喜んでくれるはずです。
「………少し、だけ。ほんの、ちょっとだけ」
赤ずきんは迷いながらも、怖がりながらも、そっと青い看板の後ろの甘い香りを辿ります。
入ってはいけないと書かれている看板を無視して、匂いを頼りに赤ずきんは歩き出しました。
きっと赤ずきんはアホの子なのでしょう。