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飛びたてる鳥(2)  作者: 瀬戸朝史
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七辻神社シリーズ

探偵の神林に調査を引き続き依頼する事にして儚は中山氏に「他に何か

わかりましたか?」と聞いてみたが中山氏は「わかりません。」と言った。

すると薫が半年もお世話になったのだから松岡と言う人にお礼が言いたい

と言い出した。中山氏は「私から連絡しておきます。そのほうがいいでしょう。」

と言うと「一応これが彼の連絡先です。」と言って名刺を差し出した。

儚は探偵に言われた事を思い出した。薫は行方不明の間、松岡という男と暮らしていて、まるで新婚の様によく手を繫いでいる姿が近所で目撃されていた。

今、いきなり会いに行ったらよくないとの中山氏の判断は正しいと思った。

数日後、中山氏から連絡があって松岡さんと会っても大丈夫との事だったので

儚は薫と一緒に待ち合わせのカフェに行った。

松岡はスラリと背の高い好青年で、身長が155cmしかない薫となんだかお似合いに見えた。松岡は二人を椅子に座らせると、ジッと薫を見ていた。

薫は恥ずかしそうに下を向いていた。

儚はなんだかお見合いみたいだと思った。

「本当の名前は薫さんというのですね。」松岡は少し寂しそうに言った。

薫は「私を何という名前で呼んでいたのですか?」と顔をあげて言った。

「まち子と書かれた紙を握っていたので,まち子と呼んでいました。」

松岡は静に言った。

松岡は二人が暮らし始めた経緯を話し始めた。

ある日松岡のマンションの部屋の前に女性が座り込んでいた。

声をかけるとブルブル震えてまち子と書かれていた紙を見せると倒れてしまった。松岡は白宗会の元信者の心のケアをしていたので、逃げ出してきた信者

かと思い保護する事にした。

「軽率でした。」松岡は頭を下げた。

薫は「保護してくれてありがとうございました。」と言って松岡に微笑んだ。

松岡は少し悲しそうな顔で微笑みを見た。

儚は「白宗会の教祖と顔がソックリというのは気にならなかったのですか?」

と聞いてみた。

松岡は「多少なりとも気にしましたがまさか教祖本人ではないと思ったので。」

と答えた。

儚は薫が松岡を見る眼が気になった。

まるで恋する乙女の様だった。

まさか記憶に無いといっても、松岡に薫がひとめぼれしたとしたら結構ややこしいことになるかもしれない。

ややこしい事は進行し恥ずかしそうに松岡を見る薫と、その薫を優しい眼で見つめる松岡

儚は自分が二人の世界を邪魔している気分になった。

その後二人は楽しそうに会話をしていたが、松岡が予定があるとの事で残念そうに帰っていった。

「薫、まさか松岡さんが好きになったとか言わないよね。」儚が思わず言うと

薫は「松岡さんが好きになったの。」と言って下を向いてしまった。

儚は二人を見守る事しかできなかった。

儚はかつて七辻神社の所有していた土地にマンションが建てられ、そのマンションの中に白宗会の事務所が入居しているのも偶然ではないだろうと思った。

その土地は入り婿であった祖父が勝手に処分し、女性と逃げた。

曰くつきの土地だった。

今は神林の報告を待つことしか出来ない。

その神林のもとへ薫が現れた。

薫は「司や儚が私に言わなかった事が知りたいの。」と言って神林をまっすぐ見た。「薫さんの心を守る為だとしてもかい?」神林がコーヒーをいれながら言った。「大丈夫です。」薫は言い切った。

神林は調査報告書を薫の渡した。

薫はドキドキしながら報告書を読んだ。

「松岡さんと恋人同士のようだったって書いて有るけど本当ですか?」

薫は神林の目を見ながら言った。

「本当です。報告書の通り。」神林は薫にコーヒーをすすめた。

薫はすすめられたコーヒーを飲んだ。

コーヒーは香りが良くマイルドで薫の好みに合った。

「なんで私と松岡さんが恋人同士の様になったか書かれていません。」

薫が報告書を抱えながら言うと、神林は「なにせ男と女の事、そこまでは

わかりませんでした。」と答えた。

神林は「どうですかコーヒーの味は?」と聞いてきた。

薫は「すごく美味しいです。」と答えると、神林は「松岡さんの好きなブレンドですよ。」と言った。神林は何をどこまで知っているのだろうと薫は思った。

失われた松岡との記憶、宗教との関係。いったいこれからどうなるのだろう。

薫は不安を覚えた。

そんな薫に神林は「お二人がよく行っていたカフェがこの近所にありますよ。」と言って地図を書いた紙を出した。

本当に近いので薫は行ってみる事にした。

神林に「ありがとうございました。」言って頭下げて事務所を後にした。

地図を見ながら歩いているとカフェがあった。

可愛らしい店で女の子が好きな白を基調としたインテリアで統一されていた。

メニューにあったオリジナルブレンドのコーヒーを頼むと神林に出されたコーヒーが出たきた。ここに松岡と自分が来ていた。

薫は、店の中をゆっくり眺めた。

松岡は今の自分の事をどう思っているのだろう。

薫は松岡の名刺を見つめた。

どうすればいいのかわからない。

いつものように司や儚にたよるのはなんだか違う気がする。

とりあえずコーヒーを飲もうとカップを手にするとなんと松岡の姿が視界に入った。「薫さんでしたよね。」松岡は遠慮がちに声をかけた。

薫はなんと答えていいかわからなかった。

「ずっとまち子って呼んでいたのでなんだか不思議な気がします。」

松岡は薫の向かい合いの席に座った。

薫は「まち子でもいいです。」と答えてしまった。

松岡は「いや薫さんで、本当の名前は薫さんなのですから。」と言った

薫は「私の事嫌いになりましたか?」と思わず聞いてしまった。

松岡は少し困った顔をしたが「いいえ、びっくりしただけです。」と答えて

薫の手を取り自分の手でそっと包んだ。

気がつくと薫の目から涙が溢れてきた。

なにかが、薫の中ではじけた。

涙は溢れて全てを流す様だった。

松岡がそっとハンカチを差し出した。

薫は涙をハンカチで拭うとすっきりした。

松岡は「僕の気持ちは変わりません。まち子でろうが薫さんだろうがあなたが

好きなんです。」と言ってくれた。その言葉を聞いて薫はほっとした。

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