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ある夏の出来事

作者: Erin

この物語は実際に私が経験した話です。

窓から鳥の声が聞こえる。


ついでに、お母さんの怒った声も聞こえる。


『エミリー、いつまで寝てんのよ!』


「ん~」


ベッドから重い体を起こす。

 今日は、パスポートの期限が切れたので再手続をするため、京橋にあるビルに行くことになっている。

旧パスポートは小学生のころの私が写っていて、髪もおかっぱで幼い。今の私の髪は腰まであり、顔も大人っぽくはなっていると思っている。まだ中学三年生だけど。


ささっと涼しい服に着替え、リビングに向かった。

リビングにはまだ小学二年生で小生意気な弟と、家族の中で一番の権力者、お母さんがいた。お父さんは仕事で家にいない。健全なおっちゃんのくせにどうせ今は仕事場で有名な選手たちと会っているのだろう。


朝ごはんにバナナとヨーグルトを食べ、駅に向かった。



あまり行かない大阪は、三宮よりも人が多く、私にとってまるで別世界に迷い込んだようだった。

中には大きなリュックを背負った金髪の外国人たちもいて、とても国際的な感じがした。


JR大阪駅を降りた私、お母さん、弟は京橋までの道順を確かめるためいろんな看板を読んでいった。

日本語の下に英語も書かれていたから、私がお母さんに通訳せずに済んだ。


『環状線は……』


『環状線って何?』


このセリフは弟が言ったかと思うが、実は私が質問している。小学生の頃もパスポートの手続きのためにお父さん行ったことがあるはずだが、正直覚えていない。環状線という言葉も、テレビでしか聞いたことがないし……。


『終点駅がない路線や。やから、どっち方面でも行先には降りられるけど、その行先によって遠回りになんねん』


『じゃあ京橋はどっち経由の電車に乗ればいいん?』


『この、外回りって書いてるやつやな』


その時ちょうど、外回りのオレンジ色の電車が来た。いつもと違う発車メロディーを聞きながら電車に乗った。


およそ五分で京橋駅に到着。駅からはもう、目的地のビルが見えていた。



時間は12時。


日本人より程遠く鈍いフィリピン人は、お昼の時間は事務所を閉めている。シフト制というものがあるのに、ほんと自由すぎ。


ビルにはいろんなレストランがあり、お客さんのほとんどはスーツを着たこのビルの会社員ばかり。

仲良く集団でレストランに入るその人たちは楽しそうで、青春しているようにも思えた。ただ、今は夏休みなのに仕事があるなんて、大人は大変やなぁ〜。


私たち三人は、カレー屋さんに足を運び、1時間くらい居座った。


時間は13時。


事務所の場所は29階。

私たちがいる場所は2階。エレベーターを探すのを約10分かけ、ついにエレベーターを見つけたかと思いきや人が多すぎて入れない。

やっと中が空いて29階についてかかった時間は約10分。


エレベーターを出ると、廊下にホームレスのようにザーッと地べたに座るフィリピン人がいた。男は影が薄く、女はギャルのようなチャラい茶髪が数人。つーか全員見た目がほとんど変わらない。

今流行のスタイルなのかな?


事務所スペースは学校の教室より少し小さめだった。売る覚えだけど、会議室のようにもっと広いと思っていたのに。そんな小さなスペースで椅子がずらりと並べられていて、さらに椅子も満員。

だから廊下にホームレスのような人たちがいたのね。


窓口の前に立つと、向こう側からやる気のなさそうな声が来る。

『パスポートの再手続ですか?』

その女性は日本人のように笑顔でふるまってくれるわけではなく、無表情であまり礼儀がよくなかった。日本のサービスは世界一というが、まさにこれを見れば納得いく。

『はい』

『じゃあ――』


数時間後、ついに写真を撮る順番が近づいてきた。私の番号は46番。今44番の少しぽっちゃりした男の子が写真を撮っている。

一つの長机があり、その上にパソコンやカメラなどが置かれている。それを操作しているのは20代、30代の女性二人。左側にいる女性は茶髪に染めた髪をお団子にしていて、右側の女性は茶髪に染めた髪を下している。そして共通に口紅が赤い。やっぱり茶髪はフィリピンで流行っているのかな?


この時代、技術も発展し、契約時のサインも紙ではなくタブレットやペンタブ(ペンタブレット)でするようになった。

男の子は右側の女性の前で写真を撮り終わると、ペンタブでサインをし始めた。


でも、おかしい。


サインは数分もかからないはずなのに、なぜかそれに時間をかけている。右側の女性も顔が怒っている。いや元から顔が険しかったけどね。


男の子は不機嫌なまま席を外した。

『あの子、サインが画面に映らなかったみたいで、あの女に書き方練習して出直してこいって言われたそうよ』

『うわー、お気の毒に……』

そんな話声が聞こえてきた。あの男の子、機械音痴なのかな? 書き方の問題じゃない気がするんだけど……。そう思いながら、次は45番の女子高生が写真を撮る番になった。


その間、私は左側の席で待機していた。隣から女子高生と右側の女性の話し声が聞こえてくる。

女性は女子高生に『さっきの男の子みたいにならないようにね。一発で書くのよ』

とフィリピン人独特の発音で言い、サインするためのペンとそのペンタブを出した。


女子高生はスラッと書くと、『OK』と言われ席を立ち退室した。


次は私の番。女性は笑っていない。せめて営業スマイルで出迎えてほしいんですけど。

私はいつも部活でパソコンやペンタブを使っているから機械音痴ではないと思っている。

『疲れたしおなかすいたしもーいやだー!』

私の写真を撮る準備をしている間、女性二人は仕事に関する愚痴を言い合っていた。

一時間くらい事務所閉めたくせに昼食食べてないのかよ。少しイラッとしてしまうが、パスポートの写真が怒っている表情は嫌なので無理やり笑顔を作る。


『じゃあ、ここにサインしてね。さっきの男の子みたいにならないようにね』

女子高生にも言っていたセリフを、また私に言ってきた。

私があの男の子みたいになるわけがないじゃん。

余裕をもってペンタブにサインをした。


『……画面に映ってないわ。もう一度書いて』

は!?

もう一度サインを書いた。


『まだ映らないわ。もうちょっと軽く書いて!』

その前に画面があんたのほう向いてるからどうなってるかわからないんだけど、こっちに画面見せろや。

あと軽く書いたら逆にうつらへんわボケ!!


自分の頭が熱くなるのを感じながらもう一度サインを書く。

やっぱり映らない。


『ったく、なんなのよあんた』

女性はそう言ってペンタブでためし書きした。女性が戸惑ってる。たぶん映らなかったのだろう。

なのに……

『ほ、ほら、私のは映ったわよ。書きなさい』

と言いながらも画面を見せてくれない。


あーもう、うざい。


私はもう一度書いた。何度も書いた。そのたびに女性は私のせいという。

いや、どう考えてもペンタブが古いせいでしょうが。

その証拠にペンタブには字の跡がたくさんある。


結果、エミリーのMが抜け、エリーになってしまった。

『これでよろしいですか?』

女性が私にではなく、お母さんに確認をした。

『いいですよ』

お母さんはにこっと笑って言ったが、口調が少しだけ怒り気味だった。


新しいパスポートが届くのは二週間後……


時間は16時


用も済んだので席を立ち、お母さんとお手洗いに行った。


お母さんが化粧直しをしている間、私の頬には涙が伝っていた。

『どうしたん?』

お母さんに話しかけられた瞬間、頬を伝う涙が急激に増えた。

『あの女うざすぎる! あいつらのペンタブがおかしいのに、なんで私のせいになんねん!』

悔しい気持ちと怒りが同時にこみあげてきて、子供の様に私は泣いてしまった。

『ママも思うで、あの女はめんどくさい奴やって。でもね……』

お母さんは化粧用具を鞄に直し、私に向き直る。

『世の中にはあの女よりひどいやつが何万人とおんねんで。やから、このくらいのことで泣くな』

『……うん』

お母さんの言い方は説得力があって、私の怒りも少しずつ収まっていった。

『たぶんあの女は、ひどい人生を歩んだから性格が悪うなったんやと思うで』

お母さんのくせ、他人の人生を推測する。まあその内容が面白いけど。

『彼氏に10股されたとか?』

『それはさすがにないやろ!』


お手洗いを出る頃には、私は笑顔だった。










あなたもあの女がウザいと思いましたか?


私の文章力じゃあまり伝わらないかもしれないですけど、本当にうざかったです。怒りすぎて悔しすぎて気持ちが爆発して訴えようかと思ったくらいでした(笑)


どうやら私は怒ったら泣くタイプのようです(笑)


あなたもこんな経験、ありましたか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずの腹黒さ! さすが怖いですねー [気になる点] 文体が若干子供っぽい…… [一言] 女の人がウザイ。でもこんな体験をしてみたい!
2015/12/17 13:43 退会済み
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