兵士L。2 出発前。
イジメです。
完璧なイジメです。
ええ!可愛がってもらってます。
嬉しそうに見えるのは絶対気のせいじゃあありません。
レベルが上がって強くなった気でいましたがとんでもない間違いだと
気づかされました。
アルフォンスさんがバケモノだってことも・・
通りがった勇者さまが回復魔法をかけてくれましたがこれ幸いと
稽古が追加されました。
砦の攻略に使った投石器を主戦場で使ってもらうことになったとかで
使用説明やら途中の警護やらで10名ほどと魔術師さんたちが行くことになりました。
誰でも良かったらしく希望者からの抽選でしたがなぜか当たっちゃいました。
ちょっと(?)後悔中です。
特訓してくれるなんて聞いてませんでしたよ、アルフォンスさん。
確かに魔獣相手と人相手では全然違うことは
体で理解できました。
夜、兵舎の風呂に入ってたら同僚が
<お前、背中をどうしたんだ! 。>と聞いてきました。
背中にあるのは子供のころの火傷のあとです。
かなり大きめです。
祭りのかがり火を酔っ払いが倒してしまったんです。
医者も治療師もいたのですが泥酔状態で助手のお弟子さんたちが
処置してくれたので助かりましたが跡が残ってしまったのです。
そう言いましたが
<跡があるのは知ってたがそれが無くなってるんだ。>
と言われました。
触るとツルツルです。
思い当たるのは勇者さんの回復魔法です。
いっしょにかけてもらった連中にも、実は・・・と言うヤツがいました。
薬指の爪から先が無かったのが・・ある・・と。
ともかく勇者さまにお礼を言いましたがかえって謝られました。
まだ回復魔法のコントロールがイマイチで効きすぎたんだそうです。
<男の傷は勲章で君の歴史だと思うよ。勝手に消しちゃったなんてすまなかったね。>
実のところそんなふうに思ったことはありませんでした。
気持ち悪いと言われたこともあったので。
そういわれて初めてあっても良かったかなあ、と思えました。
薬指の彼は力がうまく入る気がする、気を使って手袋で隠さなくてもよくなった、と
喜んでます。
でもみんなで黙ってることにしました。
勇者さまはなにやらアルフォンスさんと別の計画をされてるようです。
邪魔は排除しておくのが一番でしょう。
お布施は高くなりますが神殿の神官さんたちにお願いするという道もあるのですから。
もうじき出発の日です。
アルフォンスさんの特訓もあと少しです。
少しです・・・少しです・・・少しです・・・
親戚のオジさんには火傷のあとがあります。
目立たない場所ですが・・。
田舎の古い彼の家にはその頃まだ囲炉裏があって
そこに赤ちゃんのオジさんは落ちたそうです。
本人は<野口英世になりそこなった。>と冗談かましてます。
形成外科的な処置も今なら普通でしょうが昔の、しかも山奥の農家となると
簡単にはいかなかったようです。
なにかあったらコレがオレの目印だからと言われました。
でも・・・
火傷の跡がそれこそ跡形もなくなる回復魔法・・・
欲しいですね。
ゴラァ! 酔っぱらってちっちゃいガキどもに
ソレを見せびらかすのは止めろ! ジジイ! 。




