婚約者。4 お稲荷さん。
あれからバイト君に言われて引っ越した。
彼の荷物と一緒に。
転移ルートになにか事情があるらしくココから彼のところに転移していくのは
色々と危険があるという。
周りへの影響も軽減したい。
色々説明してくれたのだがよく分からなかった。
それでも毎日アパートの前を通らずにはいられなかった。
アパートを眺めて帰る。
それだけだったがある日アパートが無くなっていた。
彼の部屋は一階だったがその部屋だけが四角く残されていた。
なんで? 。
<アナタ、あそこに住んでた娘ね。>
後ろから着物の小粋なお姉さんに声をかけられた。
会ったことは無い人・・・なのにどこか知ってる人な気がした。
<バイト君から伝言頼まれてんのよ。
行ってくるから彼の期限が来ても諦めないようにって。>
ココはお稲荷さんの神社をたてるらしい。
そういえば隅の祠はお稲荷さんだった。
まだそちらは解体されていない。
お掃除を手伝ったことがあったっけ。
ココは元々大きなお屋敷でそちらの屋敷神だったのだと大家さんがいってたが・・
大家さんは息子さんと一緒に住むことになったらしい。
遠方なので売りに出したんだそうだ。
<アレは迂闊にほっとくとまた大きな穴になるかもしれないのよ。
封印してお稲荷さんに預かってもらうことになったの。
まだ、仮封印だけどバイト君が帰ってくればちゃんと封印できるわ。>
お姉さんはどうやらバイト君の関係者のようだ。
やっぱり彼は<バイト君>が通称らしい。
伝言のお礼を言って頭を下げた。
頭を上げたらもういなかった。
神社が完成するまでに帰って来てくれるだろうか。
立ち入りはできないので敷地の外からお稲荷さんに手を合わせた。
伏見稲荷大社の主祭神、
宇迦之御魂神は女神さまです。
どこの関係者かは置いといて、やっぱりきれいなお姉さんに
<お使い>はお願いしたいですよね。




