魔族Y。(輸送担当)1 酒。
変な奴隷だった。
主人もいないのに堂々と歩いている。
しかも領主の<御触れ書き>を持っていた。
通行止めってどういうことなんだ? 。
これは兵站基地までの荷物だから領主は関係ないはずだぞ。
<ちょっとたちの悪い病気が流行ってるんです。>
は? 病気? 。
<ご領主さまたちもですが魔獣の森の前に駐屯している兵隊さん達にも
患者が出てしまってしかもどんどん移ってしまって大変なんです。>
症状は高熱と吐き気で一週間から二週間は寝付くという。
<私は最初の方に罹ったのでなんとか仕事ができますがこれ以上広がると
ココの領地だけでは済まないことになってしまいます。>
なので通行止めか・・・。
<一度かかると二度はかからないと治療師の先生が言ってましたので
お知らせの仕事を命じられました。
荷はこちらで兵站基地までお届けします。
なんでしたら受け取りのサインもいたしますが? 。>
オマエほんとに奴隷なのか? 。
山賊とかじゃあないだろうな! 。
<山賊みたいに強く見えたんなら嬉しいですねえ。
ご領主さまの坊ちゃんにイジメられなくて済むかもしれません。>
もしかしてそのおでこの変な模様って・・・
<あー、坊ちゃんの仕業です。
お元気になられたとたんコレですからたまったもんじゃあないですよ。>
変な花模様は領主のガキの仕業らしい・・。
御触れ書きを渡され荷物の配送の責任者に届けるように頼まれた。
<他の方々にもお伝え頂けたらありがたいです。
あ、そうそう。コレをお持ちください。
領主さまに頂いたんですが私飲まないので。>
お! 酒だ。
しかもコレ結構イイ酒だぞ。
<余計なお仕事をお願いして済みません。
奴隷の頼みなんてイヤでしょうがよろしくお願いします。>
どこまでも丁寧なヤツだった。
ちょっと変な感じはしたが・・・
変なはずだ! 。
人の国の勇者の一味が兵站基地を占拠したと聞いたのはそのすぐあとだった。
アイツはその一味か・・・。
兵站基地や主戦場の兵士たちが武装解除されてあの変な花模様を手に付けられて
配送ルートの起点の町にゾロゾロやってきたのだ。
どうやら一時的に通行止めにしておいて基地の占拠のジャマを
させないようにしたらしい。
戦闘には巻き込まれなかったから良かったと思うべきなんだろうか?。
手もなく騙されたわけだがさほど悔しい気がしないのはなぜなんだ? 。
あの酒をもらっちゃったせいだろうか? 。
いや・・・うまかったんだけどな。
まあ、騙されたのはオレたちだけじゃあないから目立たないし
怒られもしなかった。
魔王さまの側近だというヤツが兵士たちに色々聞いてたが
オレ達のところには来なかったし。
なんだか偉そうな士官を連れて王都に帰っていったから
もうお咎めの心配も要らないだろう。
アイツは兵士には見えなかった。
奴隷でアノ役をやらされたんならかえってかわいそうな気もする。
安酒を飲みながら美味かったアノ酒とアイツを思いだしている。
やっぱり詐欺師だよコイツ。
お酒なんかで誤魔化されてちゃあだめですよー。
それにしても勇者くんは兵士にも見えないんだねえ。
だいぶ強くなってるはずなんだけど・・。




