魔族V。(兵站基地の兵士)1 穴の底。
いつもと同じ朝・・のはずだった。
今日は門番の当番なので門をあけたのだが門の外の草原が無くなっていた。
壁? 。
一瞬、なんなの分からず触ってみたが土の壁だった。
思わず周りを見回すがいつもと変わらない基地の風景。
空もちゃんと青い。
よくみると壁が上へと少しづつずれている。
いや、こちらが下がっているのか? 。
<おはようございまーす。>
どこからか間の抜けた感じの声がする。
門の上に二人の人間が立っていた。
<お手数ですが責任者の方を呼んでいただけますか? 。>
壁は動き続けている。
パニックを起こしかけたが敵襲にしては二人だけだと思い誰何してみる。
<あ、名乗りませんでしたね。
人の国の勇者です。責任者の方をお願いします。>
壁は動き続けている。
あわてて上司を起こしに行く。
起きないので叫んでたたき起こした。
<ココも戦場だ>といつも言うくせにネボスケで困る。
外を覗いて動き続ける壁を確認してどうやら目は覚めたようだ。
基地長もやっぱり寝ていたが<勇者>と聞いて飛び起きた。
ハリボテ砦のことは皆が知っている。
もとからハリボテなのでどうせ持たないことは分かっていたがあれほど
あっけないとは誰も思っていなかった。
勇者は主戦場の正面に現れるだろうと思ってたがなんだってこんな
後方の基地に来たんだろう。
どこから来たのかも不思議だ。
魔獣の森は砦を造ったあのルート以外は危なすぎてとても通れたものではないと
聞いている。
砦の連中がまだ道の出口で防衛線を張ってたはずだ。
基地全体が土の中へと沈み込んでいるのが分かる。
土魔法らしいがこんな穴の底だなんて・・。
これだけの魔法だと一人じゃあないのか? 。
それとも魔石を山ほど使ったのか? 。
逃げ出すには飛竜でもないかぎり無理だろう。
伝令に出ちゃってるからダメだな。
人数分なんて無いし、だいたい乗れるヤツも限られてる。
10メーテほど沈んで止まった。
基地長は勇者に怒鳴っていたが上空に浮かんだ巨大すぎる水球を見て観念した。
落ちてきたら穴の底から水の底に住所変更される。
武装解除・食料をバッグ一杯・解放するが主戦場には行かないこと・
そしてなぜか手の甲にスタンプ。
間抜け面な方のおでこについてる変な花模様だ。
雷の魔法だと言うのを実演してみせた。
スタンプを押された獣が丸コゲを通り越して消し炭になってしまった。
大柄な騎士が怒鳴りつけた。
<アホウ! 昼飯を台無しにすんじゃねえ! 。>
平謝りしてる花模様を見てアッチが上司だと思った。
強そうだし・・魔法はともかくアレが<勇者>だよな? 。
スタンプがあるとあの雷の魔法は命中率が上がるらしい。
消し炭・・・(汗。)
こっそり擦ってみたが落ちないどころか滲みもしない。
<擦ると余計に落ちませんよ。じきに消えますから安心してください。>
じきってどれくらいなんだ? と思ったが聞けなかった。
消えた時はホッとしたがまた出てこないかとついつい確認している自分に気づく。
兵站ルートの起点の町まで移動した。
基地長は責任を取らされるのが怖かったのか転移魔法陣でさっさと脱走してしまった。
なんのための責任者なんだよ! 。
もっともヤツだけでなくみんな戦意を無くしている。
主戦場に行けば消し炭だと分かってるとなぁ。
<勇者と戦うとコワレてしまう。>とハリボテ砦の砦長は言ったそうだが
オレたちは戦ってすらいない。
砦の連中より下かもしれないと思うと余計に落ち込んでしまった。
はなまるスタンプ押しまくってますねえ。
インクが足りるといいんだけど。
後方基地だってことでのんびり気分だったかもしれませんね。
魔族の将軍さんが来た時に無かったのは地面の下だった、と言うオチです。
木の葉を隠すなら森の中>と言いますが
真っ平らな場所では隠しようがありません。
空の上か地面の下ですね。
それにしても土魔法・・なんだか実用感が半端ない気がしてきました。
べつに落とし穴で遊びたいんじゃあないですけどね。




