王都の街並み
8月5日改稿及び分割を行いました
学校の制服に着替えたアカツキと、アウィンは簡単な朝食を取ると、連れだって寮の外に出た。
そして、そのまま校舎がある場所に足を進める。
現在二人が出たのは、学校に通うため遠方より来た者達の為に用意された寮であり、正式な寮は学校でしらされることになっていた。
荷物などについては後程正式な部屋に運び込まれる手筈となっている。
正式な寮と言うが、現在の寮での組み合わせがそのまま正式な寮にも受け継がれるので、二人が別室になることはない。
「ふぁ~、まだちょっと眠いな……」
「そうか? 俺は別にそうでもないけど?」
眠たそうに欠伸をするアウィンとは対称的に、アカツキはハキハキとしており、足取りも軽やかだった。
二人が歩いているのは、ノーツ王国の公道である。
周りには出店のようなものが並び、まだ朝早くだと言うのに、チラホラと買い物をする人たちが見えた。
この世界には、三つの貨幣が流通している。
それはエリス金貨、エリス銀貨、エリス銅貨の三つ。
上から最も価値が高く、順に落ちていく。
銅貨を一とすると、銀貨は十、金貨は百となる。
一般的な三人家族が慎ましやかに三年暮らすと仮定した場合、金貨三十二枚で生活できる。
なお、商人などの間では大きな金額が動く場合、金貨の十倍の価値がある大金貨、その更に十倍の価値がある白金貨が存在している。
しかしこれはあくまで商人、或いは貴族などの取引に使われる物なので、出回ることは基本的には無い。
無論アウィン達もすこしではあるが蓄えがあり、腰にある袋には銀貨が十枚ほど入っている。
二人が住んでいた場所と違い、活気に溢れており、見たことの無いものが多いため、時々目を奪われながら、門の前に辿り着いた。
『ノーツ王国』の『王都ヒストリア』は広大な土地を持つ巨大な街だ。
戦争時、敵の侵入や防衛のために四階層に分けられている。
一番下から、貧民層、平民街、貴族領、王族領の四階層に分かれており、ヒストリア魔法学校があるのは貴族領である。
一番下の階層貧民層には、奴隷や犯罪者又は国税を払えなかった者たち。
国税とは一年に二回払うものであり、一人につき金貨一枚となっている。
二階層平民街には、最低限、国税を支払える平民たち。
三階層貴族領には、貴族又は比較的裕福な者たち。
といっても、貴族領とは半ば形骸化しており、形式上存在するだけで、殆どの者は学生街と呼んでいる。
最上階層王族領には、王族又はそれに近しい上級貴族が住んでいる。
貴族領にあるブレイブハート魔法学園。
二人はそこに行くための門に向かって、歩いている。
そこでは魔法使いの育成が行われており、皆が目標としているのは、魔法使いの更に上。
あらゆる魔法を使いこなす魔導士、或いは精霊と契約し、武器として使役する精霊魔導士になるためだ。
基本的に殆どの学生は魔導士を目指す。
学生の中でもごく限られた一部のものが、精霊と契約する精霊魔導士となる。
広大な土地が生かされており、学園自体もかなり広い。
闘技場に、訓練所、様々な種類の魔法生物を飼育している。
巨大な学園の敷地という、自分達が行くべき目的地をしっかりと視界に捉えながら、二人は歩き始めた。
平民街から、貴族領に昇るための門は東西南北に四つ存在している。
また、門を潜るには通行証が必要であり、これが無いものは平民街から貴族領へ足を踏み入れてはいけないことになっている。
二人は街並みを眺め、時々会話を挟みながら、門へと向かう。
門に近づくにつれて、人の数が減っていくことにアカツキは疑問を覚え、アウィンは嫌悪感を覚える。
二人が門に近付くと、門番をしている男にキッと睨み付けられる。
「な、何だよ……」
「おい、貴様ら! 門に何の用だ!」
「はぁ。ほら」
威嚇をしてくる門番にアカツキは怯え、アウィンはため息をつきながら、通行証を見せた。
「ああ、学校の生徒でしたか。 これは申し訳ありませんでした。 さあ、どうぞ中へ」
通行証を見せるなり、態度を急変させた門番は、丁寧な動作で、通行証を返す。
突然の変化にアカツキは首を傾げながら受け取り、アウィンは嫌悪感を隠そうともせず、通行証を受け取る。
終止笑顔のままの門番に促されるまま、門を潜る。
アウィンは未来の記憶から、貴族領の一部の人間が平民街の人間を差別的に扱っているのを知っていた。
滅多にいることはないが、貧民層からの侵入者を警戒したとも考えられたが、門番の態度でそれは違うとアウィンは確信できた。
嫌なことを忘れるために頭を振る。
「おい、アウィン! 何してんだよ、早く行こーぜ!」
「ああ、悪い」
アカツキに急かされ、アウィンは無理矢理考えを押し込む。
二人が足を踏み入れた貴族領は、まるで別世界であった。
平民街とは違い、ガラクタの1つもなく、倒壊しかけた建物なども見当たらず、古い建物があったとしても、清潔に保たれ、威厳を感じる佇まいであった。
又先程とは比べ物にならないほど活気に溢れており、様々な声が飛び交っていた。
もっとも特徴的な点は、街にいる者の殆どが学生であることだ。
ここは、学生がギルドというものを立ち上げ、流通、取り締まり、統括の大部分を牛耳っている。
学生同士が集まりギルドを立ち上げ各々の考えで発展させており、加えて貴族領の約三分の二以上が学園の保有地であるのが、ここが学生街と呼ばれている由縁である。
自治権も認められているため、最早学園というなの、一つの国家なのである。
ここには、あらゆる国の法律の適応外であり、独自の取り決めで、運営されているのだ。
街の光景にアカツキは興奮し、アウィンは懐かしい気持ちが溢れ出す。
二人はそんな街並みを通り過ぎながら、学園に向かう。
途中ギルドの勧誘や宣伝などから上手く避けながら。
学園には結界が張られている。
アウィンはそれを元から知っており、アカツキも一目見てそれが分かった。
巨大な校舎には、青々と繁った豊かな緑が見える。
学園の校舎が近くなるにつれて、ギルドが徐々に減っていき、代わりに辺りには二人と同じ様に制服を纏う生徒が徐々に多くなり、学園に着くと、人数が更に増え、比例して密度も高くなる。
アカツキがきょろきょろと周囲を見回すが、アウィンが田舎者に見られるぞと注意すると、顔を赤くしながら俯いた。
その後入学式が行われたが、特別何かがあるわけでもなく、挨拶や職員の話など慣例的な式を終え、二人は外に出た。
騒がしい声が聞こえたため、そちらを向くと、掲示板に人だかりが出来ていた。
「なあ、あの人だかり何だ?」
「あれか? 多分クラスの貼り出しでもしてるんだろ?」
「マジで!? 俺ちょっと見てくるわ!」
そう言うと、アカツキは掲示板に走っていった。
未来を知っているアウィンはどのクラスになるかを知っていたが、口に出すのは野暮だと教えることは無かった。
仮に教えたところで、何故知っているのかと聞かれるだろうが。
この学校は寮生活を送ることになっており、クラスの組と寮の組が連動している。
つまりはA組なら、A寮に、B組なら、B寮に、といった具合である。
因みにアウィンの知識が正しければ二人は、E組となっている。
暫くして、息を切らしたアカツキが戻ってくる。
「やったぜ、アウィン! 俺達二人ともE組だ!」
「そうか、それじゃあこれからも宜しくなアカツキ」
「おう、こっちこそ宜しくな。 じゃあ、教室行くか」
握手をした後、地図も一緒に見たらしいアカツキの背中を追うようにして、校舎に入り、二人は目的の教室に向かった。
今回は一話だけとなってしまい申し訳ありませんでした
それと誠に勝手ながら週一更新に変更することにしました。
何かの折に連続投稿するかもしれませんが、基本は週一でやっていこうと思います
最低でも更新することを守れるのを当面の決まりごとにしたいと思います
勝手すぎて申し訳ありません……