激論! 文化祭!
7月11日。あの騒動から約一週間が経過した。なんだか俺はなにもやる気がなかった。ちなみに今は学校。6、7限目を利用してあることを決めていた。それは――
俺らの学校の文化祭『納涼祭』が開かれるのだ。
納涼祭。正式名称は、月夜高校納涼祭。つまり文化祭って扱いでは無いんだけど、まあほとんど文化祭みたいなものだし間違いは無いんだよな。
「よーし! じゃあウチらのクラスの出し物を決めていくぞ!」
そう黒板の前で声をあげたのはこのクラスの学級委員長、佐賀真由美である。長い髪を後ろで結んだ髪型をしている。顔はモテるくらいのものはもっている。聞いた話によると一ヶ月に一回は告白されるとか。
「はい! なにか出し物がある人!」
その声に一人の女子がピンと手をあげる。菱川さんだ。芸能人オタク?といってもいいほど芸能界に詳しくて、とくに男性アイドルのことなら知らないことはないくらいだ。
「はい! じゃあ菱川さん!」
「男性アイドルの写真をクラスに張って、それぞれの展示係がそのアイドルの説明をする。というのはどうかな?」
佐賀さんが険しい顔をした。しかしその後可愛らしい笑顔を見せると――
「却下」
ですよね!
「じゃ、じゃあ、寒斗の葬式! 寒斗の写真を飾ってみんなでお経を唱えるの!」
ごめん。その話しはしないでほしい。俺の心が持たないから……
「却下」
「ええ!?」
「はい! 次!」
佐賀さんは何事もなかったかのように続ける。
「ほい! じゃあ清水くん!」
清水直輝。彼は俺の同中だ。髪は短めで、ときどき何を思ってか頭に水泳キャップを被っている。サッカー部なのに。でも運動はできるし、クラスの中ではトップクラスの足の速さだ。
「スポーツの歴史を調べてそれの展示」
うわっ……。つまらなそう。スポーツに興味がない人は特に。
「なるほど。スポーツの展示ね」
そう言うと佐賀さんは副学級委員長の男の子に書くように指示を出した。
「はい! ほか!」
誰かが手をあげる前に誰かが提案した。
「無難に喫茶店とかにすればいいんじゃないのか?」
その質問に佐賀さんは少し顔をしかめて答えた。
「うちの学校は衛生面とかを考えて、1年生は食品を使用しちゃいけないのよ。そういうのは2年生からなの」
ああ、そういえばそうだったな。まあ噂に聞くと毎年訪れた客は2、3年生のところにいって、1年生にはほとんど来ないらしいしな。まあそれなら楽でいいが。
それに毎年、1年生の出し物は展示が多い。どっちかって言うとみんな遊ぶ方にてを回したいようだ。文化祭は3日間行われる。初日はちょっとしたイベントとクラスの出し物。2日目は希望者によるステージ発表とクラスの出し物。3日目はクラスの出し物と大きなイベント。という風にクラスの出し物だけに手を回していてはいけないという状況だ。
ちなみにこれがあるのが8月の1、2、3日というガッツリ夏休みの間だ。一応進学校だし、あまり授業を潰したくないらしい。
「と、いうわけで何か他に案はない?」
教室内がざわつく。しかし声をあげて何か提案しようとするものはいない。それもそのはず。1年生のうちに様々場所を回っておきたいのに、提案したことがクラスの出し物になったら、その人を中心に動かなければならない。それは困るだろう。
「じゃあお化け屋敷」
誰かが声をあげる。誰が声をあげたかはわからなかった。教室内のざわめきがそれを打ち消したのだ。しかし学級委員長には届いていたようで、お化け屋敷と黒板に白い文字がかかれる。
「はいほか!」
「メイド喫茶」
でたよ。絶対に誰かいうと思ってた。
「だからさっきも行った通り、食べ物類は出せないのよ」
すると一人の男が立ち上がる。名を桐岡大喜。先程メイド喫茶と叫んだ男だ。髪は少し伸びていてボサボサ。昔、坊主にされたことがあってそれ以来髪を必要以上に切ることを嫌がっている。
ちなみに、こいつも同中だ。
「水だけを出すというのはどうでしょうか?」
「水だけ?」
「そう! 訪れた客は水を飲みながらメイドの鑑賞をする! 何て素晴らしい空間なんだ」
天を仰ぐように言う。
「残念だけど、水も使えないわ」
「じゃあ水は抜きで!」
おい。それのどこが喫茶店なんだよ。もうただのメイド観賞会じゃないか。
「メイド観賞会っと」
書くのかよ! しかもメイド観賞会で!
するともう一人男の子が手をあげた。佐賀さんに当てられると立ち上がった。なんだかよく見る顔だった。
当てられて立ち上がる男、平野太陽だ。なんだよ。こいつも何か提案があるのか?
「女子にスクール水着を着せて、観賞会がしたいです!」
うおい! ここでそんな爆弾をぶちこむなよ!
「なるほど、水着観賞会ね」
それも書くのかよ! 女子の不満が高まっているぞ。
その時一人の男が立ち上がった。 そう。清水直輝である!
おお!清水くん! 何かいってやってくれ!
「……じゃない」
え? 何て?
「スクール水着じゃない! ここはビキニを着せるべきだ!」
勝手にやってろ。
もういやだ! 間違いなく僕らの中学校は変人しかいなかったって思われてるよ。
「いや!スク水だ!」
「ビキニの方がいい」
気づくとクラス中でどちらがいいのか議論が始まっていた。
さらにそこに桐岡大喜が提案した、メイド観賞会も加わり、三点で議論が始まった。
クラスの間で様々な主張が飛び交う。どうしてそれがいいのか演説し始めたものもいた。
「おい、あの秘密がばらされたくなかったら、黙ってビキニ派に入れよ」
「おい。このレアカードやるからメイド派に入ってくれ」
「男なら黙ってスク水だろ?」
色々な場所で怪しげな取引も始まり始めた。もう何を信じればいいのか分からない。
「なあ、楓牙、お前は昔からスクール水着だよな」
太陽が話しかける。くそぅ。別にそういうわけでも……いや、まあそうなんだけど。
「ふっ」
太陽が不敵に笑う。そして太陽は教卓の前に立つとみんなの注目を集めた。
「このままではらちが明かない! ここで一発多数決で決めようぜ」
そう言うと残りの二人も立ち上がってそれに賛成した。
そして投票を行い開票作業に移った。開票するのはもちろん佐賀さんだ。
そして結果は――
圧倒的な女子の票によりスポーツの歴史についての展示に決まった。