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今みている夢はデスゲームですか!?  作者: サブローム狼
第1章 迷い込んだ世界はデスゲームですか!?
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特殊能力

目の前には真っ赤な水溜まりができた。木下さんはそれからはピクリとも動かなくなってしまった。


「木下さん!」


山本さんが叫ぶ。しかしその言葉を打ち消すかのように笑い声が聞こえた。


「ふはっ!はーはっはっはっ! まさかこうも簡単に作戦が上手くいくとはな!」


木下さんを殺したその女はひとしきり笑うと、こちらを見つめてきた。冷ややかな視線を感じた。


「なぜだ。なぜ木下さんを殺した」


俺は言葉を選ぶかのように慎重に聞いた。その答えは意外なものだった。


「なぜ? そんなもの一番最初に私に近づいたからに決まっているじゃない。どうせ全員殺すもの。誰から殺ったって同じよ」


そう言うとウワーヌは山本さんを解放した。そして剣をこちらに向けると、


「さあ。かかってきなさい。もっとも君たちが勝てる可能性はゼロに等しいけどね」


そう言うとウワーヌは剣を振り上げ、岡さんに襲いかかった。 岡さんはギリギリのところでかわすと、目潰しのポーションを相手に投げつけた。

ウワーヌの目に当たると、彼女は苦しみ始めた。


「よし! 今のうちに逃げるぞ!」


「そうは……させない」


ウワーヌは高速で走り、逃げ道の天井に剣で素早く切り込みをいれた。そのとたん、天井は崩れ逃げ道を塞いでしまった。


「速い!」


あまりにも速すぎて人間ではないかと思ってしまうほどだった。すると隣でダリーが言う。


「多分……、彼女も『能力』を手にいれている。『能力』って言うのは……こちらの世界で1人に1つ与えられた特別なもの。現実ではあり得ないようなことができる。……どうやったらできるようになるのかはわからないけど……」


なるほど。そんなものが……。どうやったら手に入れられるのかしっかり考えとかなければいけないな。そう考えようとしたとき、忘れていた1人の女性が声をあげた。


「ふふ。楽に死にたければおとなしくすることね。一瞬で決めてあげるわ」


ウワーヌはそう言うと前髪を払いのけた。そしてどっしりと構えた。


「誰が降伏するって……? 僕は……しないね」


そういってダリーはレイピアを構えた。どこから見ても隙がないようにみえた。


「なるほどね。確かにこれは手強そうだわ。でもね……」


ウワーヌは高速でダリーに近づくとレイピアを下から弾き飛ばした。ダリーも何とかレイピアを離さずにはすんだが、体勢が崩れた。


「無理矢理相手の体勢を崩してしまえばいいのよ」


ウワーヌはその重そうな剣の先をダリーに突き刺そうとした。しかし間一髪、ダリーはその刃をレイピアの柄の部分で防いだ。

金属と金属の当たる音がする。その音に目と耳を塞ぐ。目を開けると、そこにはそのまま剣を構えているウワーヌと、吹き飛ばされたダリーがいた。ダリーのレイピアはボロボロに壊れており、どれだけの威力が乗っていたかがうかがえる。

ダリー自体も、洞窟の壁に打ち付けられていて意識が朦朧としている。


「な、圧倒的すぎる……。あの5位のダリーがあんなに押されるなんて」


藤田さんの言葉に俺も思った。どうしてあそこまで強いのか、五人の中にいる殺し屋があいつだって言うのか? そうだとしてもあのスピードと威力、人間業じゃない。


「不思議そうな顔をしているわね。なんで私がダリーを圧倒できるかって? ふふふ。ねえ、知ってる? その順位が更新されるのは毎月1日だと言うことを。つまり一ヶ月に一回しか更新がないのよ。それにその順位は対モンスターの順位であって、対人では無いのよ。 あんまり当てにしないことね」


そう言うとウワーヌは剣を構えてダリーの元に近づいた。ダリーは近くにある石をウワーヌに投げつけた。


「全く。そんな無駄な抵抗はやめてよね。素直に死んでちょうだい」


ダリーは石を投げるのを止めると口を開いた。それも聞き取れるか聞き取れないかの小さな声で。


「こんなんじゃ足りないんだ……。絶対に……。こんなところで……負けるわけにはいかないんだ!」


そう言うとダリーは1つ大きな咆哮をした。洞窟内が共鳴して、音が何重にも重なった。


「なによ。武器も持ってない癖に。一体どうするって言うのよ」


ダリーはその言葉を無視するとこちらの方を向いてきた。それに気づいた藤田さんはダリーに向かって自分の持っていた剣を投げつけた。空中で何回転かして、ダリーの手元へ向かっていった。


「これを使いなよ! 君の持っていたレイピアよりも弱いかもしれないけど、無いよりは増しだろ?」


藤田さんの言葉にダリーは軽く会釈した。そして立ち上がると、藤田さんからかりた剣を構えた。


次の瞬間二人の剣と剣がぶつかり合う。快い音をたて、守るのと攻めるのを行っている。


「凄い! これなら倒せてしまうんじゃない?」


岡さんが叫ぶ。しかし端から見ていた藤田さんは厳しい顔をしている。


「ダリーは――」


藤田さんがその声を出そうとしたとき、再びダリーの剣が弾かれた。今度は剣は天井に刺さってしまい、なかなかとれない。


「さてと、そろそろとどめをささせてもらおうかな」


そう言うとウワーヌはこちらに背を向け、ダリーの方を向いて剣を振り上げた。どうにかできないのか……。

そうだ!あの方法なら上手くいけばあるいは……。

俺はあることを思いつき、岡さんに頼んだ。


「睡眠のポーションを貸してくれないか? 早く!」


「え? う、うん。いいけど」


そういって差し出した睡眠のポーションを俺は引ったくると、矢の先に付けてそれをウワーヌに向けて放った。


一直線にウワーヌに向かって飛んで行く。しかしウワーヌは間一髪のところで避けてしまった。その避けた矢はダリーに刺さってしまった。


「あら? 惜しかったわね。でも残念。私を狙うどころか仲間に当たっているじゃない。殺されるところを素直に見ておくことね」


そういってウワーヌは剣を降り下ろした。降り下ろされた剣はダリーの頭の上数センチのところで快い音をたて、弾き返された。俺は心のなかでガッツポーズをした。


「な? え?」


ウワーヌが不思議そうな顔をして、何度もダリーに攻撃をする。しかしその攻撃が当たることはない。


「初めの説明で『寝ているときに殺されることはない』って教えられなかったのか? そう言うことだ」


「そ、そんな……。だけどあんたたちを倒すのくらい問題ないわよ。 素直に殺されなさ……い?」


ウワーヌが辺りを見渡すと、みんな倒れていた。睡眠のポーションを楓牙以外飲んでいたのだった。


「そ、それならばあんたを殺して起きるまで待っていれば!」


その時、ウワーヌが封じ込めていた逃げ道が開けた。そしてそこには一人の泥だらけの少女が立っていた。


「流石にそうはさせないかな」


柊は鎌を構えると、ウワーヌめがけて走り出した。ウワーヌが大剣を振りかざす。二つの刃が重なりあう。


「くそ……。実力は互角ね」


「互角? 何を言っているのかな? ダリーを倒したからっていい気になってるかもしれないけど、この5本指に入る人たち、通称5強をちょっと誤解してないかな?」


「誤解?」


「何だか並べて呼ばれてるけどね……。上位3人は他とは比べ元にならないくらい差があることは知ってほしかったなー。まあいいけど」


そう言うと柊は高速で鎌を振った。ウワーヌの大剣はその瞬間真っ二つに折れてしまった。


「そ、そんなバカな……」


「その能力、一時的にどこかを強化できるみたいだね。でもど一部分しかできないから使い勝手は悪いのかもね」


そして柊はポケットから麻痺のポーションをとりだすと、うなだれているウワーヌの口の中に流し込んだ。


「さあ、他の人を起こして、この人を警察に連れていこう」


しばらくして全員を起こし、そしてウワーヌを担いで洞窟の外に出た。


しかし清々しい天気だなー……?

見ると外で敵から守ってくれていた4人が倒れていた。


……なんだ? これは一体。


そしてその真ん中に誰か一人の男性が立っていた。



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