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今みている夢はデスゲームですか!?  作者: サブローム狼
第1章 迷い込んだ世界はデスゲームですか!?
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大きな過ち

外に出ると日は既に山の下に沈んでいた。ほんのりと明るいがこれも直ぐに黒くなり夜を迎えるだろう。


「おい。ここに何かあるぞ」


三森さんが声をあげる。見ると一枚のかみきれが石で押さえられて置いていた。


地面に直接おいてあったのでついていた土を木下さんが振り払うと息を整え、読んだ。


『お前らのパーティの女は預かった。返してほしければ3000万ツェンを持って始まりの街から東に行った先にある、大杉の根洞窟に持ってこい。現実時間で今日の18時までだ』


木下さんはその紙をポケットに詰めると、チームの皆を集めた。


「と言うことでウワーヌ達を拐った敵は金が目的らしい。だが俺たちにそんなにも有るわけがない」


「じゃあ力ずくで取り返しにいく?」


「いや、相手は殺し屋だろう。何をしてくるかわからん。素直に金を渡した方がいい」


「どうやって!?」


滝さんはその木下さんの言葉を受けて反射的に聞いた。


「こんな短期間に3000万円集めるにはひとつしか方法がないだろう」


俺にはその方法が直ぐにわかった。しかし気づいてはいけなかったのかもしれない。それは絶対にやってはいけない禁断の技だ。


「誰かを……。殺すしか」


チームメンバーを見ると半分は落ち着いて、半分はざわついていると言ったところか。大体は予想できていたのだろう。パニックまでいく人は居なかった。


「お前何をいっているんだ」


金髪の青年、三森さんはおもむろに立ち上がると木下さんの首元を掴んだ。木下さんは抵抗をするわけではなく、そのまま三森さんを見つめていた。


「もちろんこんなことが許されるとは思っていないさ。だから俺は力ずくで取り返しにいく。人を殺して取り返すことなんか、あいつらだって望んでないはずだ」


そういって木下さんは三森さんの腕を払い除けると、しゃがみこんで何かぶつぶつと呟き始めた。


俺たちは何をするわけでもなく、じっとそれを見つめていた。ここではむやみに動くのではなく、木下さんの指示を仰いだ方がいいと思ったからだ。


すると木下さんがおもむろに立ち上がった。


「よし。作戦を伝える」


その言葉に仲間のみんなは息を飲んだ。


「作戦といっても突入するメンバー決めだ。あの洞窟で一番恐ろしいのは背後から狙われることだ。 だから洞窟の前で何人か見張ってもらわないといけない」


確かにあの大杉の根洞窟は基本的に一本道だ。そしてこっそりと外のモンスターに背後から襲われるという事件も起きている。


「突入するメンバーは、俺、岡、藤田、ダリー、そして水谷だ。残りは洞窟の前で待機しておいてくれ。いざというときには駆けつけられるように準備しといてくれ」


ふむ。防衛に3人、突入に5人か、悪くはないな。


「ただ、モンスターが大量に外から現れたとき上手く対処できないかもしれん。他にいい人がいれば助かるんだが……」


雑魚モンスターの討伐か。それならば適役がいるだろう。バッドアップル戦でも、寄ってくる雑魚モンスターを退けたあいつが。


とりあえず俺たちは一旦始まりの街に戻ることにした。もう既に日はどっぷりと暮れていて、歩いているひともまばらだった。


ふと見ると見慣れた人達が立っていた。檜原さんと、柊だ。


「ちょっと! どこ行ってたのよ。何か連絡を入れといてよ。……まあ、無事に帰ってきたのならそれでいいんだけど」


無事だと? 山本さんが居ないのに気づけないのか?


「あれ? 山本さんがいないね。どうしたの?」


柊。こいつはいつもなあなあで生きているように見えるが、こういう気配りはできるんだな。


「山本さんは誰かに誘拐された。今から助けに向かう。着いてこい」


そういって俺は二人の腕を引っ張ると木下さんの所に向かった。




「と、いうわけで、この檜原さんに雑魚敵の討伐を、そして柊は突入メンバーの一人にしてやってくれ」


それを聞いた木下さんは快く返事をしてくれた。仲間たちはみんな、この2人を歓迎しているようだ。ただ1人を除いて。


「なんだよ……。このクソガキを連れていくのか……」


ダリーはそう言うと柊に近づいた。


「あれ? 誰かと思えば万年5位のダリーさんじゃないか。 僕に歯が立たない癖に何をいっているのかな?」


「はん! モンスター討伐数は大体同じくらいだろうが」


「でも直接対決で一回でも僕に勝ったことがあるのかな?」


こ、こいつら……。まあ確かにどっちもこの世界の5人だ。お互い意識するのも無理はないだろう。っていうかダリーってこんなに喋るんだな。


「だか、僕だって暗闇対決なら勝てるからな!」


「あー。はいはい。この世界で手に入れた能力でしょ。通称『暗視』。でも残念だなー。そんな能力じゃモンスター討伐に役に立たないでしょ」


……能力? いったいなんのことだ?


「はいはい。とりあえずこの争いは置いといて早く、ウワーヌと山本を取り返しにいくぞ」


木下さんはそう言うと2人を引き離した。お互い睨み合っていたが、2人ともそっぽを向いてしまった。


そして俺たちは大杉の根洞窟へ向かった。俺たちのパーティと木下さんのパーティのみんなの力を合わせて取り返しに行くぞ! ……あれ? 誰か忘れているような……。


道中はだだっ広い草原で敵が来ても直ぐに対処できる。しかしもう少し進むと森の中に入り、敵に囲まれても気づきにくいのだ。風が吹いて草原の草が揺れている。そこを進んで行く俺たち10人。幸いモンスターに襲われることなく、大杉の根洞窟に着くことができた。


「よし。作戦通り行くぞ。さっきいったメンバー+柊でこの洞窟に突入する。くれぐれも喧嘩はしないでくれよ」


そういって洞窟に入ろうとした時、藤田さんは足元に落ちているポシェットを見つけた。


「これは……。山本さんのだね」


山本さんの持っているものには重いものがいくらか入っている。持ち運びに不便だからここで捨てて行ったのだろうか。


しかしここに来るまでに色々考えていたのだがおかしな点が2つ、そして今もう1つを見つけた。


まず1つ目。山本さんと大剣をもったウワーヌさん。この2人を運ぶのはまず一人では無理だ。敵は複数犯の可能性が大きい。しかし、ファングファイターのいた洞窟の外は少し狭く、何人も通ったような跡はなかった。


2つ目。山本さんとウワーヌさんを殺して売れば4000万ツェン手にはいる。しかし相手が要求してきたのは3000万ツェンだ。これはおかしい。何か別の目的があるのか?


そして3つ目。ここで山本さんのポシェットを捨てたのはいいが、なぜウワーヌさんの大剣は捨てなかったのか。明らかにあちらの方が重く、運ぶのには不便だと思うのだが。


「おい。水谷。なに考えてるんだ。早くはいるぞ」


木下さんの呼ぶ声に考えるのをやめて後についていった。


「おかしい」


木下さんが言う。確かにこの不自然な感じは俺も気づいていた。ここは人工の洞窟ではなく、自然にできた洞窟だ。しかし、見ると周りに松明がたてられている。どこに進めばいいか教えてくれているみたいだ。


しばらく進むと、幅が1人分しかなかった洞窟が急に開けた。しかしこれはもちろん罠だった。


そこらじゅうから土のモンスターが浮き出てきた。

マッドフロッグ。攻撃力はほとんどないが、身体中に張り付いて窒息死させるモンスターだ。


「みんな! 迎え撃つぞ!」


「待って! ここは僕に任せてみんなは先に行って」


柊が叫んだ。確かに柊ならこんなやつらにやられることはないだろう。


「あとで必ず追い付く! だから早く」


「ああ、わかった」


柊という絶対的な強さを誇る者。こいつならここを任せても問題ない。そう思い、残りのみんなは先に進んだ。


洞窟の最深部らしき所に出た。ここもやはりある程度広く戦うために無理矢理作られた穴のようだった。


見ると奥の方にウワーヌさんと山本さんが立っている。


「おーい! みんな!」


木下さんが2人のもとに駆け寄る。しかし山本さんは何かを叫んでいる。口の動きを見ると……


来てはダメです


その時もう一度2人を見た。山本さんはなにも持っていない。しかしウワーヌさんはどうだ。なぜかまだ大剣を携えている。


一体なぜ。そう思った次の瞬間。ウワーヌたちに近づいていた木下さんの胴体が二つに割けた。木下さんの上半身は地面に落ちると動かなくなった。


見るとウワーヌさんが持っていた大剣からは血が下に滴り落ちていた。








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