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今みている夢はデスゲームですか!?  作者: サブローム狼
第1章 迷い込んだ世界はデスゲームですか!?
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夢の世界

荘周の話で胡蝶の夢というものがある。そこでは、荘周が、夢の中で蝶になるのだ。しかし突然目が覚めると、自分は荘周だったことを気づく。いったいどちらが夢で、どちらが現実なのだろうか? 荘周はどちらでもよいと言っている。その場で肯定的に生きていけば良いのだと。


3年前、科学者である大崎満があることを発表した。それは現実と夢のことであった。今までは夢とは人間の脳が作り出した映像であり、幻想であるとされてきた。しかし、その科学者曰く、どちらの世界も現実であると言われたのだ。世界の科学者や、一般人、俺もそれを聞いてその時はとても馬鹿馬鹿しく思っていたのだ。あのときまでは。


俺は水谷楓牙。現在、どこかわからない広場にいる。周りを見渡した限り1000人くらいは居そうだった。俺は風呂に入って寝たところまでは記憶にある。しかしなぜこんなところにいるのかわからなかった。夢でもみているのかと思った。『夢』? そうか夢ならば納得がいく突然こんなところに行くなんてあり得ないからな。


しかし、周りをみるとパニックに陥っている人も何人かいる。全くなんだってんだ。夢なのに。ああ、そうかあれも俺が想像して作り出してるから、ああやって、自分を落ち着かせているんだな。夢だから。


しかしすぐにこれがただの夢でないことに気づいた。どこからともなく音がしたのだ。


「皆さん。ようこそ」


突然広場の真ん中にある噴水の前に置いてあったスピーカーが音を出した。


辺りは静まりかえった。それだけスピーカーの音が皆の耳に届いたと言うことだ。そして、スピーカーは続けた。


「私は大崎満。君たちをこの世界に招待したものだ」


ざわめきはじめる。突然わけのわからないことを言い出したのだ。あたりまえだ。


「招待したって……。おい! いったいどういうことだよ!」


「元のところに戻して!」


スピーカーの音をかき消すかのように様々なところで声が聞こえる。これではスピーカーの音が聞き取れない。その時、スピーカーからとてつもないハウリングが聞こえた。皆は耳を塞ぎ静かになった。


そして、スピーカーからはさっきの男が話し始めた。


「まあ、確かに招待したという表現は間違ってるな。正確にはあちらの世界の記憶をこちらの世界と共有した。と言ったら正しいのだろうな」


「どう言うことだ」


一人の男がスピーカーに向かって尋ねる。


「この世界は紛れもなく夢の世界だ。しかし現実の世界と夢の世界での記憶は共有されていない」


「そんなことは無いだろう! 俺らだってみた夢くらい覚えていることはある!」


さっきの男が叫んだ。


「それは脳によって記憶が改竄されているのだ。この世界を、そして自分を守るために」


そうスピーカーは静かに話すと、今度は真剣な声で話しかけてきた。


「さて、なぜ私が君たちを招待したのかいってやろう。まず、第一に君たちにはこの世界でも生きてもらう。なに、現実の世界とほとんど変わらん。しかしそれでは面白くないだろう。ある条件を満たすとこの世界から解放してやろう。」


「条件?」


「条件を話す前にこの世界のことを説明しておこう。まずここは夢の世界であり、これからは君たちが寝るごとに訪れることになる。まあつまり寝ていないときは現実の世界で生活できると言うことだな。そしてこの世界には夢魔、まあ便宜上そう呼んでいるだけだからモンスターとでも呼べばいい。そいつがかなりの数うろついている。中には恐ろしいのもいるため気を付けろ」


夢魔?モンスター?こいつは何をいっているんだ。夢なんだから気を付けるもなにも、好きに生きればいいんじゃないのか?


そう思ったとき、その考えを否定するかのようにスピーカーは音を出した。


「そして夢の世界で死ぬことは現実の世界でも死ぬこととなる」


な!? 馬鹿な…。そんなことが有るわけがない。そんなことをしたら大騒ぎになってしまうだろう。警察が黙ってないぞ


「そんなことをしたら警察が黙ってないだろう!」


禿げたおっさんが叫ぶ。いかにもアホそうな面をしている。こんなやつと同じ考えを持っているのか。


「ふふふ。警察がどう動くかは、みてのお楽しみです」


「見てのお楽しみだと? どう言うことだ」


口々に人が叫ぶ。


「まあまあ。取り合えず誰かこの広場から出てくれませんか?」


そう言うとしばらくの間スピーカーはしゃべらなくなった。


その間、広場はざわざわしている。そりゃそうだ。こんなわけのわからない世界で無駄に動くことなんて出来ないんだからな。


その時だった。ひとつの声が聞こえてきたのは。


「俺がいこう」


そう言ったのはあの禿げたおっさんだった。あいつ意外に度胸があるんだな。


禿げたおっさんが外に出ると人が立っていた。するとスピーカーからまた声が聞こえた。


「そこにある木の棒で殴ってみてください」


「は?いいのか?」


「ええ」


「よし。それじゃあ」


そういって降り下ろした木の棒はその人の手前で弾き返された。木と地面がぶつかる乾いた音がした。


「このように、この世界の人々を我々が傷つけることは特別なことがない限りできません。しかしこの人たちはゲームなんかで言うNPCとは違います。この人も現実の世界の人です。というより、夢と言うものは皆がみるもの。この世界の住人と現実の世界の住人は繋がっているのです。ただし、君たちのように記憶は共有されていませんがね」


なるほど現実の世界の人々には全く影響が及ばないと言うことか。


ここで俺はふと、どうやってこいつは俺たちの記憶を保ったままこちらの世界に連れていたのだろうと思った。俺は普通に寝ただけだった。


そしてもうひとつ気になったことがある。それはこの世界での俺の記憶だ。二つが共有されたと言ってもこちらの世界の情報は頭に入っていない。


「もしかして俺たちは二人分の……」


俺がそう呟くと、スピーカーからは、にちゃっと嫌な音がした。軽く笑ったのだろう。


「ええ。君たちはこちらの君たちとあちらの君たちの二つの命を背負っていることになります」


重い。確かに全く知らない人だし、夢の世界の人が死んだら僕たちも死ぬという理不尽な状況だ。しかしそれは向こうだって同じ。現に今こんな事件に知らずもがな巻き込まれているのだから。


「さて、ここでこの世界から抜け出す条件を説明します。今から言う4つの条件を1つでも達成したらその人は解放され、夢の世界ではあのような一般人となるのです」


そうして彼は条件を話し始めた。その条件は俺たちを驚かせるものだった。ほとんどの人が諦め、泣いている人もいた。達成が可能そうな条件が1つしかなかったからである。


条件①

他の記憶共有者を5人殺害する


条件②

記憶共有者を殺した者を殺害する


条件③

月に1度あるイベントで条件を満たす


条件④

この世界の意味を知る


と、こうなっている。まず①は論外だ。こんなものをやるやつが居るとは思えない。次に②。これも現実的でない。①を行う者がいない以上②はどうしても達成できない。④に至っては意味がわからない。よって③が唯一のクリア可能な条件だ。


「さて、ここでまだ皆さんに伝えなければならないことがあります。①か②によって脱出または死亡した人数分、毎月1日に補給します」


つまり殺し合いでの脱出は根本的な解決ではないと言うことか。これならいっそうこの方法で脱出する人は少ないだろう。


「さて、君たちに剣と盾を配ります。それを使って生き延び、無事、この世界の呪いから脱出してください。RPGみたいですが、この世界はほぼ現実と変わらないのでレベルもステ振りもありません。ただし、ここはいわゆる夢の世界ですから、もしかしたら現実ではあり得ないこともできるかもしれませんね」


こいつ狂ってやがる。結局何が目的か分からなかったし、どうすればいいのか分からなかった。


「ああ、そうそう。いい忘れましたけど、こちらの世界で寝ているつまりあちらの世界で活動をしている間は殺すことはできませんので悪しからず」


そんなこと誰がするかっつーの。そう思ったときだった。後ろから叫び声が聞こえた。振り返るとそこには血を流して倒れている男と、血のついた剣を振り回す男が立っていた。


「あはっ。アハハハハハ!!!」


その男は狂ったように次々と人を剣で切り裂いていく。


「おい! やめろ」


一人のガタイのいい大柄の若者が出てきた。髪の毛は金髪でピアスをつけている。人は見かけによらないとはこういうのを言うのだろう。


「だまれぇぇぇ!」


しかしその狂った男はそんな声などなかったかのように、その若者を切り、4人目とした。


そして五人目を切ったその時だった。彼の体が光に包まれたかと思うと、小さな光の粒となって、突然空へと消えたのだ。


「な、なんだいったい」


禿げたおっさんが言う。俺は何が起きているのかすぐには理解できず、しばらくの間意識はここになかった。気づいたときにはもう周りはところどころで剣と剣が交わっていた。


様々なところからの叫び声が耳を引き裂いていく。


「ひぃぃ! 助けてくれ! そうだ! 俺は俳優だ。俳優の南寒斗だ! サインでも何でもやる。オークションに出せば高く売れるはずだ! だから――」


彼を狙っていた男は全くなにも考えていないかのように、彼を切り裂いた。


こ、この世界は狂ってる。人々も、大崎も! いったいなんなんだよ。なんの目的があるんだよ。


そのとき横に何か固いものが地面に打ち付けられる音がした。ふと振り向くとそこには頭から地を流して倒れている人が白目を向いていた。


「うわぁぁぁぁ!」


俺は怖くなってその広場から逃げ出した。ここにいては危険だ。絶対に逃げなければ。空は暗く、厚い雲に覆われていっているようだったが、それに気づくことはなかった。そうして俺は一キロ離れたところの木の影で震えて、気づくと寝てしまっていた。







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