~憂鬱な朝~
「ほら、お前ら起きろよ」
僕は頭に大きな衝撃を感じ、ベッドから飛び起きた。
眠い目をこすりながら見ると、雲居が今にも怒り出しそうな顔をしながら僕を見下ろしていた。
この状況から察するに、全然起きない僕を雲居が殴ったという事だろう。
昨日はあの後、樋川と霜月が全員分の夕飯を作ってくれ食べた。結局、あの後は皆誰も話さずに布団に入った。
「痛っ……。お前なぁ……」
僕は頭を抱えながら雲居に文句を言った。
「お前が起きないから悪いんだろう。もう7時だぞ。目覚ましはとっくになっている。霜月と樋川は買出しに行ってるぞ」
雲居はバカにしたような表情を浮かべた。
霜月も樋川も雲居も、起きるのが早いな……。
そもそも、こんな早朝にお店なんてやっているのだろうか……。
「いいから、さっさと気がえろ。そしてこいつらをどうにかしてくれ」
雲居はため息をつきながら指を指した。
「マジかよ……」
雲居が指を指した方向を見ると、いびきをかきながらぐっすり熟睡にしている古井と佐伯がいた。
こいつらを起こせって……。無理な話だな。
僕は自分のバッグから着替えを取り出し、急いで着替えた。
「おーい。起きろよー!」
僕は面倒くさそうに古井と佐伯をぺちぺち叩く。結構耳元で喋っているんだが、全く起きる気配がしない。
「もうほっとくか」
それを見かねた雲居は、もう諦めたらしい。
「なぁ、こんな時になんだけどさ、お前ら本島の学校で上手くやってんのかよ」
僕は雲居に問いかけた。先生がこんな時に楽しく話そうなんてひどいことは言わないけれど、せっかく集まったんだから少しは同窓会的な感じに盛り上がりたい。
「あー……。まぁな。適当にって感じだな」
「そりゃ、雲居君は頭いいもん! 僕なんて、全然勉強についていけないよ」
さっきまで寝ていた古井が急に起きて喋りだしたが気にしないで置こう。
「でもお前らはいいじゃん。私立なんて頭がいいやつしかいけないぜ?」
僕は羨ましそうに言った。
「行かなきゃ親が怒るからな」
雲居はボソッとつぶやいた。雲居の家は病院だもんな。御曹司だからこそ大変なこともあるんだろう。
ついでに言うと、古井は叔父がある大企業の社長らしい。霜月は親が弁護士だ。
こんなにぼんぼんの古井と霜月でも、私立の中ではランクが下位らしい。もちろん、雲居は上位だけどな。
「でも、久しぶりだなー。雲居君と僕と沙耶華ちゃんは同じクラスだけどさ、ランクが違うからあんまり話さないしね……。特に沙耶華ちゃんなんて……」
「仕方ないだろう。今の世の中、スクールカーストなんて普通だろう」
古井は悲しそうに呟いた。
「霜月が可哀そうってどういう事だよ」
僕が古井に問いかけると、古井は雲居の方を見て少し考えこんだ。
雲居は古井の方を少し睨んで、二人とも黙りこんだ。
何か、僕は変なことを言ってしまったのだろうか。
「別に、なんでもないよ……」
古井は下を向きながら、僕にそう答えた。
「とにかく、こいつを起こすぞ」
雲居は佐伯の方を向き、ため息をついた。
佐伯の方を見た瞬間、僕らは面白いような、呆れたような、変な感覚に襲われた。ま、絶対こいつは起きないだろうという確信もできた。