~殺された先生~
「殺された!?」
佐伯は驚き、大きな声で叫んだ。それによって、気を失っていた霜月も目を覚ました。
霜月は頭の上に?マークを浮かべながら佐伯の隣に座った。
「あの、殺されたってどういう事ですか?」
僕はおそるおそる問いかけた。
「いや、まだ捜査に進展がなくよく分からないんだが……。林原さんは、先月から本島へ旅行にいったらしいんだよ……だが、本島に向かって三日たってからだったかな……? そのころから行方が分からなくなっていたんだ。そしたら、一週間前に森の中から死体が見つかってね……」
「金田」とか言う結構年配の刑事さんは、俯きながら答えた。
隣で古井が泣いているのが見えた。その古井を樋川がなだめている。まさか、こんな事になるなんて思っても見なかった。
「じゃあ、犯人はまだ見つかってないんですか?」
雲居は冷静に刑事さんに聞くと、刑事さんは黙ってうなずいた。
「林原さんが向かった本島の住人に聞き込みをしてるんだが、全く進展がなくてね……。本島の「清水旅館」で寝泊りをする予定だったって事は分かってるんだが……」
「え!? 清水旅館ですか!?」
刑事さんの話に驚き、声をあげたのはさっきまで泣いていた古井だった。
「君、その旅館を知ってるのかい?」
「知ってるも何も、僕と雲居君と沙耶華ちゃんの通ってる高校のすぐ近くですよ……! まさか、そんな近くに先生がいたなんて……」
「そうだったのか……」
古井と同じように、雲居や霜月も、刑事さんと古井のやり取りには驚いていた。
「どうしてっ……どうしてお坊ちゃんはあんな無残な殺されかたをされなければならなかったのでしょうかっ……」
急に家政婦さんが泣き崩れ始めた。
「無残な殺され方」このワードに、僕達は気になってきた。
「失礼ですが、どんな殺され方だったんですか……?」
僕がおそるおそる聞くと、若い方の宮下さんという刑事さんが答えた。
「だ、駄目ですよ! これ以上は、守秘義務がありますので!」
宮下さんは腕を組みながらそういばったが、その宮下さんを金田さんはひっぱたいた。
「大口たたくな! まぁ、あんまり詳しい事はいえないが、ナイフで一突きってところだな」
宮下さんは肩をすくめながらブスッとした。
「まぁ、また話を聞きに行く事があると思うが、その時はよろしくな。ほら、もう日も暮れるから早く帰りなさい」
僕達は刑事さんと家政婦さんに見送られながら、林原先生の家を後にした。
樋川の家に戻る間、僕達は一言も話さなかった。あんなに元気で優しくてかっこよくていい人だった先生が、まさか殺されるなんて。
正直僕は、まだ信じられない。
でも、本当の悪夢はこれからだったんだ……。