~まさかの話~
学校についたものの、校門から立ち入り禁止になっており、入ることが出来なかった。
しかも、学校の光景は、僕達の想像を絶するものだった。
周りの緑溢れる自然とは対照的に、鉄骨のむきだしのところあったり、壁が落書きだらけだったりと、僕達が通っていた昔の学校の様子とは比べ物にならないほどの酷さだった。
「これ……。入って大丈夫か?」
さっき僕に変わって霜月をおぶった佐伯は、入る気満々で僕に問いかけてきた。
「バカが。立ち入り禁止と書いてあるだろ」
「まぁまぁ雲居。佐伯も、今日は一旦帰ろう」
雲居の一言で、また喧嘩になったらたまったもんじゃない。僕はその場をなだめた。
「あ、そういえばさ、誰か担任の先生の電話番号知ってる?」
樋川は思い出したように切り出した。
「担任の先生って、林原先生の事でしょ? 懐かしいなぁ……」
古井は微笑みながら呟いた。
林原先生は僕達の担任の先生だった人だ。男の若い先生で、そのころは28歳くらいだったかな……。
とても優しくて面白くて、僕達は皆、林原先生の事が大好きだった。
「林原先生の番号は知らないが……。家なら知ってるぞ?」
「え!? マジかよ!?」
雲居は当たり前の様にいい、佐伯がそれに驚いた。
「なんで雲居が先生の家知ってるのよ」
樋川は、面白くなさそうに雲居に聞いた。
まぁ、樋川がどれだけ調べても分からなかった情報が雲居なら当たり前の様に知っている。
そりゃ、樋川も怒るよな……。
「あぁ……。一度、手伝いに行った事があるんだよ。ま、先生の家はそこの豪邸だけどな」
そして雲居が指差したのは、学校の隣にある大きな豪邸だった。
「マジかよ……」
僕は驚きのあまり、そう呟いた。
「と、とにかく行ってみようよ! 先生にも会いたいし……」
古井は微笑みながら言った。古井は、この中でも一番先生のことが大好きだったからな……。
「じゃ、行って見よっか!」
樋川がそういい、僕達も樋川の後に続いて先生の家へ向かった。
でも、まさかこんな豪邸が先生の家だったとはな……。この豪邸は、この島でも有数の金持ちの家だと言われていた。
そんな家が先生の家だとは驚きだ。
「ここか……」
隣という事もありすぐに着いたが、こんな豪邸のチャイムを押すのには勇気がいる。
雲居も少し戸惑っていた。
「あーもう! いいじゃんか!」
歯がゆくなった佐伯は、雲居を突き飛ばしてチャイムを押した。雲居は「おい!」と怒鳴ったが、そんな声をチャイムの音が掻き消した。
ドアの向こうからは、「はーい! ちょっと待っててくださいねー!」という50代くらいの女の人の声が聞こえた。
しばらくして、重たそうなドアが開いた。
ドアの向こうには、さっきの声の主だろう。50代くらいの女の人と、30代くらいと20代後半くらいのスーツをきた男の人がいた。
「あの……。どちら様ですか?」
「あ、えーっと……。ここって林原先生のお宅ですよね? 僕達、林原先生の教え子です。隣の桜川小学校で教わってたんですけど……」
僕がそういうと、女の人は驚いたような顔で、「どうぞ入って下さい!」と言いながら、僕達をリビングへと案内してくれた。
「私、ここの家政婦をしている加瀬といいます」
「あぁ、私はそこの中央署の刑事の金田といいます」
「あ! 自分は! み、宮下といいます!」
どうやら女の人のほうは家政婦らしい、だが、なぜこんなところに警察が? と疑問に思ったが、先に雲居が質問した。
「あの、なぜ警察の方が」
雲居の質問に、家政婦さんは泣きながら答えたのだった。
「お坊ちゃんが……一週間前に本島で殺されたんですっ……!」
それは、僕の想像を遙に超える言葉だったんだ。