~2人の喧嘩~
「おい! それ俺の荷物だぞ!」
僕達4人は、和室で荷物をまとめていた
ま、結局佐伯と雲居で喧嘩を始めたが。
「邪魔だ。どかせ」
「いいだろ! 何処においたって!」
「ちょっと2人とも……」
雲居の冷静な態度に腹を立てた佐伯はムキになって顔をしかめている。それを止めようと、古井は必死に声をあげているが……。
正直古井の声なんて、佐伯達には届いていない。
「古井、ほっとけよ。昔もあんな感じだったしさ」
「でも……」
僕がそう言うと、古井は肩をすくめた。
「でも、本当久しぶりだよなー」
僕が懐かしそうに古井に話しかけると、古井は「そうだねー」と笑顔で返してきた。
まぁ、この喧嘩は懐かしいというより迷惑だけどな……。
「おい! お前さっきから何なんだよ! ちょっと頭いいからって調子乗るなよ!」
「お前みたいなバカには言われたくないな」
「あーもう喧嘩すんなって。迷惑なんだよ」
僕は2人の喧嘩を止めながら、ため息をついた。昔から佐伯も雲居も喧嘩ばっかで、最終的に巻き込まれた古井が泣く。
そんなことになったら大変だ。その前に止めないとな。
その時、勢い良く和室のふすまが開いた。そこには樋川と霜月が睨みながらこっちを見ていた。
「喧嘩ばっかしてないで早くしてよ! どんだけ時間かかったら気が済むのよ!」
「…………早くしてよ」
樋川と霜月は結構怒ってるようだ。
こいつらを怒らせてはまずいという事は、僕達男子軍にとっては暗黙の了解だ。佐伯も雲居も、喧嘩をやめて黙りこんだ。
「ほら! 早くしなよ!」
結局、樋川の言われるがまま僕達は樋川の家を出た。
ここから学校までは歩いて1時間。もし僕の家から行ったとすれば3時間以上かかる。
1時間も歩くのか……と気が重くなるが、全然近いほうなのだ。
「ま、まだぁ……? ハァ……ハァ……」
「おい古井。しっかりしろよ」
古井が疲れ果てているらしい。まだ、出発したばかりなのにな。そんな古井に声をかけたのは雲居だ。
その時、後からバタッと大きな音がした。
全員が驚き、一斉に振り向くと、後からノタノタと歩いていた霜月が倒れていた。
「え!? ちょっ……! 沙耶華!?」
樋川が霜月の所へ駆けつけ、体を起こしていた。
「大丈夫!? 沙耶華ちゃん!」
「おいおい大丈夫かよ!?」
古井や佐伯も驚きながら駆け寄り、僕も霜月の所へ駆けつけた。
「あー……。こりゃ貧血だな」
雲居は霜月の所へ駆け寄り、冷静にそういった。雲居の父親は本島の大きな病院の理事長だ。だから、一応医療の事については詳しい。
「あーじゃあ、僕おぶってくよ」
僕は体力と運動神経だけは自信がある。霜月を背負い、そのまま学校へ向かった。
案外軽いな……。
「そういえば、沙耶華って昔から病弱だったよねー古井と似てさ」
「ちょ! 僕関係ないじゃんー! まぁ……、沙耶華ちゃんはしょっちゅう学校休んでるもんねー」
樋川と古井が霜月の話題で話していた。
「でもお前もすごいよなー! こんな暑い中でよく人背負っていけるよなー」
図体でかいくせに、面倒なことは嫌いな佐伯は、まるで他人事のように話した。少しイラつくのは僕だけだろうか……。
そんなこんなで、小学校についた。