~おじいさんの家~
「ここかー! 周りは山ばっかりだなー! それにしても蝉の鳴き声うるせぇー」
樋川の家について、最初に佐伯が騒ぎ始めた。縁側で僕達が休憩していると、さすが夏。蝉の鳴き声がうるさかった。
まぁ、樋川の声の方がよっぽど煩いけどな。
「ちょっと佐伯! そんなに騒がないでよ!」
「まぁまぁ、梓」
樋川が佐伯に向かって声を荒げると、霜月が宥める。
昔と同じ光景に、僕は安心感をおぼえた。
「えーっと……。僕達はどこの部屋にいけばいいの?」
「あー……。そこの私の部屋は私と沙耶華の部屋だから、私の部屋の隣にある和室なら、あんた達4人で使ってもらって構わないけど……」
古井の質問に、迷いながら樋川が答え、僕達は樋川の指差した部屋へ一斉に振り向いた。
僕達の部屋だという和室は、日本って感じの部屋だった。
「そこなら好きに使ってもらって構わないから」
「そうか。そういえば、お前のおじいさんは何処にいるんだ」
「あー……。今は、お母さんと一緒に本島に行ってるんだー。だから、この家自由に使っていいってことだよ」
樋川が答え、雲居は「あっそ」という無愛想な返事をした。
自分で聞いたくせに、その返事はいらだつが……。まぁ、その無愛想さも昔と変わらず健在らしい。
「もう、分かったら早く部屋に荷物置いてきてね! 荷物だけ置いて、必要な物持ったらすぐ学校行くからね!」
樋川はそう言い、霜月と一緒に部屋へ入っていった。
僕達も、和室に入ることにした。
「本当、昔と変わらないよねー男子達も」
私はそういい、荷物を部屋に置いた。
沙耶華も「だよねー」と言いながら、鞄の中をあさっていた。
「でも、やっぱり久しぶりに皆に会えて嬉しいなぁー。だって、今の高校つまんないんだもん……」
沙耶華は寂しそうに答えた。
「沙耶華はいいじゃん! 私立だよ私立。私達みたいなバカは公立の高校だもん。そう考えたらさ、沙耶華は幸せそうだけどなー」
私は羨ましそうに呟いた。私だって、私立の高校に行きたかった。でも、私は沙耶華と違って頭が悪い。
行きたくても行けなかったんだ。
「でもさ、梓は笠井君と一緒じゃん。今でも仲良しなんでしょ? 私なんて、同じクラスでも住む世界が違うみたいで……」
「え? どういう事?」
「スクールカーストって知ってるでしょ? なんか、私の高校そういうのがあってさー。私は暗いからさ……3軍なの。古井君は仲良しの子が結構な金持ちでさー、だから2軍。雲居君は女子からすっごいモテルし、家も結構な金持ちでしょ? だから1軍なの」
沙耶華の言ってるスクールカーストは知っている。
でも、なんかドラマの世界みたいで、いまいちピンとこない。学校で、しかもクラスの中で1軍だの2軍だのって分かれてるなんて、私には意味が分からなかった。
「ま、気にしないでよ。そんな重大なことでもないしさ、同じ軍の中で仲良くしてれば全然問題ないしね」
沙耶華はそう言いながら、ニコッと笑った。
でも沙耶華の笑顔は、とても不自然に思えたんだ。