~警察の疑い~
「で? 何があったんだよ」
僕は樋川にそう問いかけた。
一応樋川は冷静さを取り戻していた。霜月が警察に連れて行かれたと聞いてなんとなく雲居と佐伯も呼び、今は僕達男子軍が樋川を取り囲んで事情を聞いてる状況だ。
「それが……」
樋川は、連れて行かれたときの状況を、俯きながら話し始めた。
「とにかく、笠井達が寝泊りしていた部屋を片付けよっか」
私は沙耶華にそう問いかけた。
「そうだねー、早く片付けちゃおうか」
沙耶華がそういうと、私達は部屋の片付けを始めた。
私達が部屋を片付け始めて10分くらいが経った時だった。
急に玄関のチャイムがなった。
「はーい」と言いながら、私は玄関のドアを開けた。そこにはあの時の刑事さん2人が立っていた。
「あの……どうしたんですか?」
私がそういうと、刑事さんの一人、金田さんが深刻そうな顔つきで話し始めた。
「あの、霜月沙耶華さんはいますかね?」
「え……? あぁ、沙耶華ならいまここに……」
私は沙耶華の方を指差した。
沙耶華は「え? 」という表情をしながら、私と刑事さんのところへやってきた。
「霜月沙耶華さんですね? 」
刑事さんがそう問いかけると、沙耶華は少し怯えたような顔をしながらコクンと頷いた。
「少し話があります。署までご同行願います」
刑事さんの一言に、私は唖然とした。沙耶華もとても驚いているようだ。
「え、ちょっと待ってくださいよ! なんで沙耶華に……」
話がある……つまり、事情聴取という事だ。よく刑事ドラマでみるが、事情聴取をするという事は、沙耶華が疑われていると解釈してもいいくらいだ。
「霜月さんには、林原さんが殺された事件の事で少しお話があるんです」
そう金田さんが言うと、後にいた宮下さんという刑事さんが話し始めた。
「ただ、話を聞きたいだけですから! い、一応任意という形ですが、断るとこちらも怪しいと思わざるを得なくなります!」
その言葉を聞いた沙耶華は、「私行きますから……」と言い、仕度を始めた。
「あの、刑事さん達は、沙耶華を疑ってるんですか!?」
私は少しトーンをさげながら問いかけた。
「……今のところ何もいえません」
そういった刑事さんの顔は、とても曇っていた。
その様子から察するに、警察は沙耶華を疑っていると確信した。
でもなぜだ……。沙耶華が疑われる理由が、私には全く分からなかった。
そんな事を思っている間にも、沙耶華は仕度を終わらせ、刑事さんと一緒に家を出て行ってしまった。
「_______という事なの」
樋川の話しを聞いたが……はっきり言って、疑問しか残らない。
樋川の言うとおり、警察が事情聴取のために署に連れて行くとなると、霜月が疑われているのに間違いはないだろう。
でも、なんで霜月なんだ……。
こんな事を言ったら失礼かもしれないが、この中で一番疑われやすいのはどう考えても冷静沈着な雲居か、感情的になりやすい佐伯だろう。
なのになんで……。
思考をグルグルと回し考えてると、雲居が急に立ち上がった。
「どうしたんだよ」
佐伯が睨みながら問いかけると、雲居は即答した。
「当たり前だろ。帰るんだ」
雲居のその一言に、僕は驚くどころか意味が分からなかった。




