~隠し通すためには~
「あの……これって、梓の事ですよね?」
私はとまどいながら聞いた。
梓と一緒に警察に連れて行かれた私は、梓の事について聞きたいと言われていたのだが、どうも全く別の事を聞いてるように思う。梓の事についてのはずなのに、私の事ばかり質問してくる。
一体、この金田さんという刑事さんは何を考えているのだろうか。
「あぁ! そうだよ? 樋川さんの事で来てもらっている。ただ、その事件とは関係ないんだが……ちょっと林原さんが殺害された事件のことで、ちょっと気になることがあってね……」
私はドクン! と心臓が跳ね上がったのを感じた。
だが、すぐに冷静さを取り戻し、私からも刑事さんに質問をしてみる事にした。
「え、えっと……なんで私に……?」
あぁ。しっかりいえただろうか。
私は昔からどうも人と話すのが苦手で梓くらいとしかまともに話せない。ましてや、こんな怖そうな刑事さんと普通に話すなんて、私にとってはすごく難関だ。
「えっとね……君さ、林原さんとは本当に生徒と先生の関係かな?」
「……え?」
思いがけない刑事さんの発言に、思わず変な声を出してしまった。
生徒と先生の関係のほかに、どんな関係があるのだ。そもそも、林原先生は小学生の時の担任だ。さすがに当時小学生の私が林原先生に恋愛感情を持つなんて事あるわけないだろう。それに、それ以外の関係なんて全くない。
「あの……刑事さんは私を疑っているんですか?」
私は刑事さんに問いかけた。
「あぁ! いや! そんな事はないんだよ? ただ少しだけ気になった事があただけだからね……いやーすまないね。樋川さんはもう終わったらしいから、もう帰っていいよ」
そう刑事さんは言うと、ドアを開けてくれた。
私はペコッと頭をさげると、取調室を出た。部屋を出ると、ドアの近くにあるイスに梓が座って待っていた。
「あ! 沙耶華!」
「梓! 大丈夫?」
私を見ると、梓はサッと立ち上がった。
「うん。大丈夫。もう行こっか!」
「そうだねー」
梓はそういうと、帰る仕度を始めた。私も、自分の荷物を確認し、梓と一緒に警察署を出た。
「何か言われたの?」
「え、ううん! 大丈夫」
梓の問いかけにそう答えると、私は歩き出した。
_________さぁ、ここからどうやって隠し通そうか。




