~不思議な家政婦~
トイレも済ませ、僕は皆のいるところへ向かう途中だった。その時、扉が2~3cm開いている部屋があった。
少しの覗いてみると、たくさんの本が本棚にあった。そこには、「教員免許を取るために」などという本もあり、きっと先生の部屋だろうと僕は思った。
「なんだこれ……」
本棚の隣に、小さなドアがあるのが見えた。
僕は好奇心からか、部屋に入っていった。そして、そのドアを開けた。
ドアを開けると、そこは思ったほど広い部屋だった。ただ、薄暗く君が悪い部屋だ。そして、周りにある棚に、たくさんのDVDが山積みになっていた。
「DVD……?」
僕がそのDVDの中身を見ようとしたときだった。
「いけません!」
後から女の人の鋭い声が聞こえた。振り向くと、そこには真っ青な顔をした家政婦さんがいた。
「あ、すいません……」
僕は少し驚きながらも、手にしていたDVDを元の場所に置いた。
「あ、こちらこそ大きな声を出してしまって……あ! ご飯の準備が出来ましたので!」
そう家政婦さんは言うと、「さぁさぁ」と僕はこの部屋から出された。
少し疑問に思いながらも、僕は皆のいる場所へ小走りで向かった。その時に、後にいる家政婦さんの顔が少し怖いように見えた。
「昼食までごちそうになってしまって、本当ありがとうございました」
樋川は申し訳無さそうに頭を下げた。
あの後僕達は昼食を食べ、今は玄関で家政婦さんに御礼を言っている。
「じゃ、行こっか」
樋川がそういうと、僕達は樋川の家へ戻り始めた。皆ご機嫌なのか、ワイワイ話しながら歩いている。
僕は、どうしても先生の部屋のDVDが気になってしょうがなかった。
とても優しそうな家政婦さんの顔にも気になってしまう。まぁ、普通に考えれば、いかがわしいようなDVDなんだろうが、それだけであんなにも取り乱すのだろうか……。
僕が考え込んでいると、樋川が話しかけてきた。
「何一人で三毛にしわよせてんのよ」
「べ、別になんだっていいだろ」
僕はそっぽを向き、樋川は「ふ~ん」と呟いた。
その時、樋川が急に立ち止まった。後にいた古井は、ドン! と音をたて、「イタタ……」と呟きながら当たったおデコを押さえていた。
「ごめん。ちょっと先行ってて」
樋川は、動揺した様子を見せながら言った。
「どうかしたのか?」
佐伯が樋川の所を覗き込んだ。樋川は、「ちょっと用事が出来た」と言って、隣の路地裏の方へ走っていってしまった。
「ま、まぁ、行こっか」
古井は頭にハテナマークを浮かべながらそう言い、歩き出した。
その時、後で「ねぇ」と声が聞こえた。あまり聞きなれないような高い声だったので、声の主が霜月だという事はすぐ分かった。
「なんだよ」
僕がそういうと、霜月は下を向いてもじもじしながら答えた。
「え、えっと……心配だから……梓の後、つけてみて……?」
「は?」
霜月の言った事に対し、僕は思わず「は?」と答えてしまった。
「いいから……行って」
霜月はそういうと、僕の背中をドン! と押して皆と一緒に行ってしまった。
一体全体……なんで僕が行かなくちゃ行けないんだよ……そんな事を思いながら、僕は歩き始めた。
仕方なく、樋川の後をついていく事にした。




