~心を閉ざしてる少女~
「はぁ……あいつら起きたかな」
私は呆れたように呟いた。
今は沙耶華と一緒に買出しにスーパーに行った帰りだ。正直、荷物持ちとして男子達を連れて行きたかったが……。
全く起きないので放って置くことにした。
「でも、起こしてこなくてよかったかな?」
「別に大丈夫でしょ。雲居に言って置いたしね。どうせ今頃雲居が怒ってるんだろーなー」
心配そうな沙耶華に、私は笑いながら答えた。沙耶華みたいに、私は優しい性格じゃないしね。だからもてないんだろうなー。
少し落ち込む。
「今日、先生の家にお花でもお供えにいこっか」
私は下を向いて微笑みながら問いかけた。
「え……!? あ……そうだね!」
沙耶華は肩をビクッとさせ、ハッとした様子で答えた。
「どうしたの? 別に、嫌ならいいけど……」
「え!? 何言ってるの梓! 全然嫌じゃないって! そうだ、お菓子でも作っていこっか」
沙耶華はニコッっと効果音がつきそうな表情で微笑んだ。
もし私が男だったら、一発で惚れてしまいそうな表情に、少し私は戸惑ってしまった。
「それもそうだけどさ……梓、笠井君の事好きなの?」
「……はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
沙耶華の唐突すぎる質問に、私は思わず立ち止まり、大きな叫び声をあげてしまった。
「っなわけないでしょ!?」
顔がタコみたに真っ赤になってしまった私に、沙耶華は「ふーん」とニヤニヤしながら歩き出した。
「そ、そういう沙耶華には好きな人とかいないの……?」
私は話題を変えようと、沙耶華に問いかけた。
「私かー……私は体も弱いし、それに親が弁護士だから、私も弁護士にならなくちゃいけない。そのために勉強に必死なんだ……! だから、今は恋とか考えてないな……」
沙耶華は寂しそうな笑顔を浮かべ俯いた。
「そっか、大変なんだね……でもさ! ほら、青春なんて今だけだよ! 楽しくいかなきゃ!」
俯いてる沙耶華を、私は必死に励まそうとした。私の一言に、沙耶華は「そうだね」と微笑んで、また恋バナが始まった。
きっと分からないよ……。
梓も、笠井君達も、私の事は絶対分からない。
いや、知られてはならないんだ。
絶対に、秘密にしなければならないんだ。どんなに辛くても、どんなに悲しくても、絶対に…・・・。
こんな事が知られたら、皆に迷惑がかかる。だから……。
隠し通すんだ……真実を……。




