~始まり~
暑い。
学校も終わり、もう夕方だというのに炎天下の中を歩いているようだった。制服は、汗でぐっしょりだ。
どんどん足取りも重くなり、近くのコンビニによる事にした。
「いらっしゃいませ!」
僕がコンビニに入った瞬間、若い店員さんの元気な声が聞こえた。
暑いのにたいしたものだ。
僕は迷わず雑誌や漫画が売っている棚の前に立ち、週刊誌を手に取った
コンビニはクーラーも効いており快適だ。
それに立ち読みも出来る。これほどいい店はないと思う。
僕が週刊誌に没頭している時だった。床に無造作に置いてあった通学鞄の中から着信音が聞こえた。
僕は通学鞄を開け、携帯を手に取った。
周りの人の目を気にしながら、僕は「もしもし」と電話にでた。
『あ、もしもし。私だけど』
同じクラスの樋川 梓だった。
高めのトーンが特徴的で、声を聞けばすぐ分かる。
僕はコンビニを出ながら話し始めた。
「なんだ樋川か……。いきなりなんだよ」
暑さでイライラしているため、僕は少しトーンを下げながら答えた。
『なんだとは何よ! あ、そうそう。なんかね、桜川小学校が来月で取り壊されるらしいのよ』
「え・・・嘘だろ?」
桜川小学校とは、僕の母校だ。樋川も同級生で、とても小さな学校だ。
なんてったって、僕達の学年は、僕と樋川を含めて男女6人しかいなかったからな。
「でも、その学校って開校したの6年前だろ!? そんな早く取り壊されるのか?」
僕が住んでるここは、小さな離れ小島だ。
俺が小学4年のころまでは小学校なんてなく、ここから近い本島の学校まで通っていた。
でも、小学5年になって、その桜川小学校が開校した。
『そうなんだけどね、ほら、私達が卒業した後にもう1つ学校が開校したじゃんね。そしたらそっちの学校の方に子どもが行っちゃって、桜川小学校に子どもが入らなくなったらしいよ。まぁ、あのころより子どもも増えて、もう1つの小学校には百人近くの小学生がいるらしいけど』
樋川も、寂しそうな声で話した。
そりゃそうだろ、たった2年間とはいえ。自分が生活した母校がなくなるんだ。
『それでね、他の4人と先生も誘って取り壊される前に見に行こうと思うだけど……』
「……そうだな、後の4人の連絡先位知ってるし、誘ってみるか」
樋川の思いつきに、僕は乗った。後の4人はこの島にはいないが、確かそれほど遠いところではない。
3日間くらいなら泊まりでこっちに来てもらう事位簡単だ。
『本当!? じゃあ、私先生の番号だけ調べるから、後の4人によろしくね!』
「うん。分かった」
僕は携帯をきって、鞄の中に入れた。
電話しながら歩いてたため、気付いたら家の前だった。
「笠井」と書かれた表札に目をむけ、一応自分の家である事を確かめた。
「ただいま」
一言そう言い、僕は家の中に入っていった。